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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(453) パリ・パラ出場権のかかる国際大会を前に、車いすラグビー日本代表が会見。池主将「チームは最高レベルに到達!」

6月29日に東京体育館(東京・渋谷区)で開幕する「三井不動産 2023ワールド車いすラグビー アジア・オセアニア チャンピオンシップ(以下、AOC)」に出場する日本代表が6月14日、オンラインで記者会見を行いました。AOCは来年のパリ・パラリンピックの予選も兼ねており、大一番に向け、ケビン・オアーヘッドコーチ(HC)や池透暢主将らがパリ・パラ出場権獲得への意気込みなどを語りました。

オンライン会見で力強く優勝への意気込みを語る、車いすラグビー日本代表、池透暢主将

大会には世界ランキング3位(*1)の日本をはじめ、同2位で、2022年世界選手権覇者のオーストラリア、同8位のニュージーランド、同15 位の韓国が出場します。4チームによる総当たり戦2回の1次リーグを行い、上位2カ国が7月2日の決勝戦に進み、優勝国がパリ大会の出場権を手にします。

(*1: 2023年05月26日時点)

実績などからみて、優勝争いの軸は日本とオーストラリアだと予想されます。日本代表12名は銅メダルを獲得した東京パラや昨年の世界選手権と同じメンバーで臨みます。毎月のように強化合宿を実施し、攻守にわたって戦術やラインナップ(*2)の確認などを行ったり、専門家による心理サポートも取り入れてメンタル面を強化するなど、チーム力の底上げを図ってきたと言います。

(*2: コート上の4選手の組み合わせのこと。車いすラグビーでは障害の程度によって選手は1.0~3.5点まで0.5点刻みで「持ち点」が与えられ、コート上の4選手の合計点を8.0点以内に構成するというルールがある。ただし、女子選手は1名につき持ち点から0.5点がマイナスされるため、例えば女子1名が入る場合は、8.5点までで編成できる)

オアーHCは「AOCはパリ・パラの出場権獲得が一番の目標」と意気込み、池主将は、「チームは最高のレベルに到達」と自信を見せています。

なお、大会は有観客で行われ、観戦は無料です(一部、優先入場席あり)。全試合、Youtubeによるライブ配信も行われます。パリ大会に向けた日本代表の挑戦を、ぜひ応援ください!

<会見コメント>

▼ケビン・オアーHC

大会ではパリ・パラリンピックの出場権を取ることが一番の目標であり、選手選考もその目標達成のために、それぞれ力をつけ、高いクオリティを見せてくれた選手を選びました。4月、5月の強化合宿は私が指揮を執ってから(約6年間で)最高の内容で、選手層の厚さを実感したし、攻撃や守備の効率性、キーオフェンスなどAOCで勝つためにいい準備ができました。

強化合宿では課題であるインバウンド(コート外から、味方選手にパスをすること)について、多様な選手で試し成功率をみて強化を進めるなど、全体的にいい練習ができました。スポーツ心理のスタッフも採用し、緊張する場面でもいいパフォーマンスができるようにメンタル面の強化にも取り組んできました。

一次ラウンドでは何がうまくいき、何がうまくいかないかを見極めたいです。(最大のライバル)オーストラリア戦では予想外のプレーや(3名いる)女子選手の動きや起用法などを確認し、決勝で勝つ準備をしたいと思っています。

2017年から日本代表の指揮を執る、アメリカ人のケビン・オアーHC

▼池透暢主将 (クラス3.0)

日本とオーストラリアの決勝戦になるのは間違いないでしょう。東京(パラ)大会でも(2022)世界選手権でも悔しい思いをしてきて、今は(チームは)最高のレベルに到達していると思います。たくさんの観客の前でパリ切符を取るところを見ていただき、ファンを増やしたいです。

今回のメンバーは経験のあるメンバーが選ばれています。「ここは絶対に落とせない」というケビン(HC)の意識の表れだと思います。私はチームキャプテンでもあり、リーダーシップは当然として、強さとスキのない選手として自分をコントロールし、力を最大限に発揮して(勝利に)貢献したいです。

予選のオーストラリア戦2試合はオーストラリアの穴を見つけに行かないといけない。あとは新しい戦術があるか、匂いを感じたい。それが決勝に向けて大事だと思います。私たちには準決勝の壁があります。今回は決勝に行くつもりですが、決勝の壁も同じだととらえています。そこに関しては心理サポートも入っているので、これまでの経験を生かして壁を越えていきたいです。

▼羽賀理之選手(2.0) 

確実にパリの出場権をとりたいです。私はリオ・パラや2018年の世界選手権など主要大会のメンバーであり、大事なところでの安定したプレーや、苦しい場面で流れを変えることが期待されていると思っています。

今回のメンバーは東京パラと変わりませんが、自分としては競争もありました。(2月の)ジャパンパラ大会では外されたので、自分に足りないことがあるのかと思い、悔しさをバネに鍛えてきました。切磋琢磨することがチーム力の強化につながっていると思います。

今回はホームなので、知り合いも見に来てくれるし、声援が力になり、アドバンテージになると思います。力にして、がんばります。

攻守にわたって幅広いプレーが期待される副キャプテン、羽賀理之選手

▼今井友明選手(1.0)

必ず優勝して、パリ・パラリンピックに弾みをつけたいです。3-3-1-1(*3)という日本のなかでは強いラインアップを任されているのでプレー面での期待と、ベテランとして若手とのつなぎ役というチーム内のコミュニケーション役も求められていると思っています。

(*3: クラス3.0の2選手と同1.0の2選手で編成されたラインアップ)

東京パラや世界選手権と同じメンバーですが、その時点から力は伸びていて、成熟度も増しています。自分自身も「まだこんなに伸びしろがあったのか」と感じています。世界で戦えるメンバーが揃っていると思います。国内の紅白戦でもハードな試合になるので、強度の高い練習ができています。

車いすラグビーは激しいタックルが見どころですが、コート全体を観て、ボールを持っていない選手の動きにも注目してください。私は相手のプレーを先読みすることが得意なので、先回りするプレーも観てほしいです。

相手エースの攻撃の芽をいち早く摘み取る守備に期待がかかる、今井友明選手


<三井不動産 2023 ワールド車いすラグビー アジア・オセアニア チャンピオンシップ>

日程: 2023年6月29日(木)~7月2日(日)

会場: 東京体育館(東京都渋谷区)  *観戦無料

大会サイト: https://www.2023wwr-aoc.tokyo/

 ▼「会場を真っ赤に染めよう!」キャンペーン

https://jwrf.jp/news/20230508aoctshirt

▼全試合Youtubeライブ配信

・国内向けライブ配信(日本車いすラグビー連盟公式YouTubeチャンネル)

https://www.youtube.com/@JWRF

・国際向けライブ配信(ワールドウィルチェアラグビー公式YouTubeチャンネル)

https://www.youtube.com/@worldwheelchairrugby6250

(文:星野恭子/写真:6月14日の記者会見のスクリーンショット)