星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(74)2015.3.11~3.18
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今号はシーズン終盤を迎えたノルディックスキーやパラトライアスロンの大会結果のほか、来月に迫った2つの世界選手権に派遣される日本代表の発表などについてリポートしています。
■ノルディックスキー
・17日: IPC(国際パラリンピック委員会)ノルディックスキー・ワールドカップ(W杯)最終戦がノルウェーのスルナダルで開幕した。12カ国から約80選手がエントリーしている。大会は22日までクロスカントリースキーとバイアスロンで各3種目ずつ行われ、今大会終了後のポイント合計により、今季(2014-15年)のクロスカントリースキーとバイアスロンの年間王者が決定する。
初日は男女クロスカントリー・ロング・フリーが行われ、日本からは4選手が出場し、女子立位(15キロ)の出来島桃子(新発田市役所)が48分02秒1で5位に入った。優勝は、ウクライナのA.コノノワで、42分18秒9だった。
▼コメント
・出来島桃子選手
今までの大会と比べると、体は動いていたと思った。ただ、他の選手と比べると、スキーを進ませることができていなかった。もっとスキーを滑らすことができるように練習していきたい。また、ブラインド(視覚障害クラス)の選手を追い越すときに、相手のポールと接触して転倒した。今後はそのようなことのないように気をつけたい。
・長濱一年クロスカントリーコーチ
前日の天気予報と異なり予報よりはるかに気温が上昇して雪解けが進み、暑さの中でのタフなレースとなった中、出来島選手はシーズンに悔いの残らないレースをすることを心がけスタートを切るも、W杯総合をかけて戦っている世界トップランキングの強豪選手のハイスピードについて行くことが出来ず、苦戦する展開となった。終始遅れを取り戻せないまま5位でレースを終えることになったが、気持ちを切り替え、明日からのレースにリベンジをかけ意気込みも更に強まっている。
・18日: W杯2日目は男女バイアスロン・ショートが行われ、女子立位(6キロ)で阿部友里香(日立ソリョーションズJSC)が4位に入った。阿部は1回目の射撃(5発)では満射だったが、2回目に2発のミスがあり、タイムは18分32秒6(ペナルティ=2)だった。優勝はウクライナのA.コノノワで、16分15秒3(P=1)だった。
バイアスロンは、クロスカントリースキーと射撃を組み合わせた競技で、射撃でミスした場合にはペナルティが課される。ショートとミドルでは1周80mのエキストラループをミスの数だけ周回しなければならず、ロングでは1発につき1分が実走タイムに加算される。
▼コメント
・阿部友里香選手
今日のレースはスキーと射撃を別のものだと思ってレースに挑んだ。滑りの方では板も滑っており、最初から積極的に前だけを見て攻めることができたのはよかった。ただ、その分、呼吸調整が上手くいかず呼吸が苦しい中での射撃になってしまい、1回目は満射だったものの、2回目の射撃では2発外してしまった。1発外した時にすぐに切り替えが出来なかったのが残念だった。次のレースでは落ち着いてレースに臨みたい。
・大和田いつかバイアスロンコーチ
いろいろな条件が重なり、通常より心拍が高い中での射撃となったことで照準が定まらなかったという点は、今後の大きな課題となってくると思う。また、レースということで気負い、緊張や不安により、いつもやっていることが同じように出来なかった点は非常に悔まれる。目標は満射だが、とにかく普段やっていることをレースでも同じようにやることが今の課題だ。
(情報提供:日本障害者クロスカントリー協会)
■パラトライアスロン
・13日: 「世界トライアスロンシリーズ・パラトライアスロン」のサンシャイン・コースト大会がオーストラリア・クィーンズランドで開催された。レースはスイム750m、バイク20km、ラン5kmのスプリントディスタンスで行われ、日本選手では男子PT4(立位)の佐藤圭一(エイベックス)が1時間8分48秒で同クラス4位(12人中)が最高だった。
「世界トライアスロンシリーズ」は年に世界各地で10大会ほどが開かれ、最終戦が毎年8月から9月に行われる。日本でも「世界トライアスロンシリーズ横浜大会」として2009年から毎年5月に横浜市山下公園周辺の特設コースで開催されており、パラトライアスロンの部も2011年に新設された。
パラトライアスロンは来年のリオデジャネイロ大会からパラリンピックの正式種目となるため、今年の大会は海外から多くの強豪選手の参加が見込まれている。そのため今大会は初めて、5月16日にパラエリートの部(強化指定選手レベル)、17日にパラエイジの部(一般)の2部制での開催が予定されている。
■陸上競技
・18日: 日本盲人マラソン協会は、4月26日にロンドン・マラソンで併催される、「2015IPCマラソン世界選手権」に派遣する男子4名、女子4名の代表選手を発表した。2012年ロンドン・パラリンピック代表の岡村正広や、2014年IPCマラソン・ワールドカップ銀メダリストの道下美里らが選ばれた。今回は全員がT12クラス(弱視)だが、視覚障害の程度により、単独で走る選手とガイドランナー(伴走者)とともに走る選手がいる。全代表とガイドランナーの一覧は以下の通り。
今年は10月にカタール・ドーハでIPC陸上競技世界選手権が開催される予定だが、IPCは昨年、マラソン種目については3クラス(視覚障害/切断など/車いす)ともロンドン・マラソンで実施することを発表していた。気象条件やレース環境などを考慮した措置だという。
昨年のロンドン・マラソンでは、IPCマラソン・ワールドカップが併催された。日本からは女子の部にT12クラス3名、T11クラス(全盲)1名の計4名が派遣され、道下が銀、西島美保子が銅メダルを獲得している。
<男子>
岡村正広/堀越信司/熊谷豊/羽立祐人(ガイド:大槻学、石橋恭)
<女子>
道下美里(同:樋口敬洋、堀内規生)/西島美保子(同:溝渕学)/藤井由美子(同:橋本寛明)/安部直美(同:成田フサイ、松原衣里)
■アイススレッジホッケー
・11日: 日本アイススレッジホッケー協会は、4月26日に米国ニューヨーク州バッファローで開幕する「2015IPCアイススレッジ世界選手権Aプール」に派遣する日本代表選手を発表した。ヘッドコーチは中北浩仁氏。大会は5月2日まで行われる。
日本は2010年バンクーバー冬季パラリンピックでチーム史上初の銀メダルを獲得したものの、14年ソチ大会は出場を逃した。今大会は18年ピョンチャン大会に向け、新たな体制で臨む重要な一歩となる。
<出場日本代表選手>
・ゴールキーパー:
福島忍(長野サンダーバーズ)/永瀬充(北海道ベアーズ)/望月和哉(長野サンダーバーズ)
・ディフェンス:
堀江航(長野サンダーバーズ)/須藤悟(北海道ベアーズ、キャプテン)/三澤英司(北海道ベアーズ、オルタネイトキャプテン)
・フォワード:
吉川守(長野サンダーバーズ)/柴大明(東京アイスバーンズ)/中村稔幸(長野サンダーバーズ)/円尾智彦(長野サンダーバーズ)/石井英明(東京アイスバーンズ)/廣瀬進(北海道ベアーズ)/塩谷吉寛(長野サンダーバーズ)/高橋和廣(東京アイスバーンズ)/児玉直(東京アイスバーンズ)/熊谷昌治(長野サンダーバーズ)
■東京発
・18日: JX日鉱日石エネルギーが、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会と東京2020スポンサーシップ・プログラムのパートナー契約を締結した。今後6年にわたって、「東京2020ゴールドパートナー」として、石油製品やガス、電力の供給などで大会を支援する。同社は、1964年東京オリンピックでも、聖火台用のガスや灯油を提供した実績がある。
同大会組織委員会の森喜朗会長は契約締結を喜ぶとともに、同社が取り組む水素エネルギーの供給を通じた新たなエネルギー社会の創造の実現にも期待を示した。
(星野恭子)