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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(449) ブラインドサッカーを応援しよう! 日本代表戦や国内トップリーグなど注目大会が目白押し!

今年は来夏に迫ったパリパラリンピック出場権争いが本格化しますが、ブラインドサッカー男子日本代表も開催国枠で初出場した東京パラリンピックに続き、自力でのパリパラリンピック出場を目指し、今年8月、パリへの出場権がかかる大一番、「IBSAブラインドサッカー男子世界選手権2023」(8月12日〜25日/イギリス)を控えています。現在はチーム強化の真っ最中で、5月、6月には大きな国際大会に出場し、世界の強豪たちと力試しに臨む予定です。

なお、パリ大会出場枠は8つで、すでに開催国のフランス、ヨーロッパ選手権2022準優勝のトルコ(フランス優勝により繰り上げ)、アフリカ選手権2022優勝のモロッコ、アジア・オセアニア選手権2022優勝の中国の4か国が出場権を獲得しています。残る4枠から日本が出場権を獲得するには8月の世界選手権において、大陸別予選でまだ出場権未獲得チームのうち上位3か国に入らなければなりません。(ただし、パラパンアメリカン競技大会2023が今年11月開催のため、8月の世界選手権終了時点ではパリ大会出場国が決定しない可能性もあり)

連休中の5月5日、同代表の強化合宿がメディアに公開されたので、取材に行ってきました。チームはとくに5月23日から27日(現地時間)にブラジル・サンパウロで開かれる国際公式戦、「IBSAブラインドサッカーワールドグランプリ2023」(WGP)に向けて、フィジカル面の強化とともに対戦国を想定した攻守の戦術チェックなどを熱心に行っていました。

強化合宿で、戦術練習に励むブラインドサッカー男子日本代表(撮影:星野恭子) 

WGPは2018年に新設された国際公式戦で、2020年大会の中止をはさみ、今年は5大会目になります。日本やブラジルなど8チームが出場し、予選はグループA、Bに分かれて総当たり戦を行い、トップ4が決勝トーナメントに進み、頂点を争います。

世界ランキング4位の日本は予選グループBで、ブラジル(同2位)、イングランド(同12位)、チリ(同22位)と同組となり、日本の初戦は5月23日(火)11時(日本時間同日23時)キックオフの試合で、パラリンピック5連覇中の王者、ブラジルと対戦します。また、グループAはアルゼンチン(世界ランキング1位)、タイ(同5位)、フランス(同8位)、イタリア(同16位)です。

なお、同大会に出場する日本代表メンバーは次の10選手。フィールドプレーヤー(FP)の川村怜主将(パペレシアル品川)、佐々木ロベルト泉選手(同)、田中章仁選手(たまハッサーズ)、丹羽海斗選手(free bird mejirodai)、鳥居健人選手(同)、平林太一選手(松本山雅B.F.C.)、後藤将起選手(A-pfeile広島BFC)、永盛楓人選手(free bird mejirodai)の8人に、ゴールキーパー(GK)は佐藤大介選手(たまハッサーズ)と泉健也選手(free bird mejirodai)の2人の計10名で、FPの後藤選手と永盛選手は代表初選出です。

中川英治監督は、「今合宿は長期(9日間で8日練習)で、フィジカル的にもかなり負荷をかけてやっているし、暑いなかなので選手にはきついと思うが、いい仕上がり」と手応えを語りました。

WGPでのポイントはやはり初戦のブラジルで、合宿では仮想ブラジルのコーチ陣を相手に対策を練ったそうです。「ブラジルは地元大会なのでフルメンバーで来ると思う。そのブラジルに全力であたって、勝ち負けよりは(世界選手権に向けて)最後の課題を洗い出したい。また、WGPでは最大5連戦になるので、まずはグループリーグをどう突破するか、指導陣も選手もマネージメントが重要」と大会の位置づけも話しました。

2選手が初起用という新チームについては、「ポジションの特性や年齢的なバランス、ケガなどの不測の事態も考え、将来も見据えた起用」とし、「いい意味でチーム内に競争も生まれている。選手それぞれ強みや個性があるので楽しみ」と期待を寄せました。

その初代表の2選手にも話を聞きました。まず、38歳の後藤選手は、「率直に嬉しい。昨年6月、日本代表を目指して広島に家族を残して一人で上京して1年。やってきた成果がようやく出てきたんだなと思うし、大会でもやってきたことをしっかり出したい」。

強化合宿中、紅白戦でシュートを放つ後藤将起選手(左から2人目) (撮影:星野恭子) 

後藤選手が視力を失ったのは約7年前の31歳の時で、2年後にブラインドサッカーを始めましたが、小学校から高校までサッカー経験があります。目標は、「試合を決める選手になること」といい、「体力だけは誰にも負けないので、とにかく走ってボールを奪い、カウンターで得点というのが理想のプレー。WGPではチャンスは限られていると思うが、初代表初得点を狙いたい」と闘志を燃やしています。

一方、永盛選手はチーム唯一の左利きでもあり、守備での活躍が期待されています。初選出には、「ここからがスタートライン」と話し、「強みは守備面で2つ。相手に当たって触ったら離さないし、離しても相手をいい体勢にしないこと。もう一つはゴール前で、ノーファウルでシュートブロックできること。ブラジルにはゴール前で待つストロングな選手がいるのでしっかりシュートブロックし失点を防ぎたい」と意気込んでいました。

川村主将は、「新しいメンバーは育成年代から上がってきて勢いがあるし、いいムードを作ってくれている。特徴を生かせるようにフォローアップしていきたい」とし、「ブラジルのホームでフルメンバーと戦えるのは楽しみだし、自分たちの現在地を知る機会になる。これまでブラジルには開始10分以内で失点することが多かったので、無失点の時間をできるだけ長く、そしてチャンスを生かせるように、チームとしても個人としてもチャレンジして、いい結果を皆さんに届けたい」と力強くコメントしました。

なお、まだ確定ではありませんが、WGPがライブ配信される可能性もあります。開幕直前になりましたら、日本ブラインドサッカー協会のHP(https://www.b-soccer.jp/)をご確認の上、ぜひ応援ください。

<*5月16日追記>
WGPの全試合のライブ配信が決定しました。英語実況とポルトガル実況の2チャンネルが用意されています。試合スケジュールを確認のうえ、日本代表をはじめ、世界のハイレベルなパフォーマンスをぜひご覧ください!

▼YouTubeライブ配信アカウント
・IBSA(英語実況):https://www.youtube.com/@internationalblindsportsfe7490
・CBDV TV(ポルトガル語実況):https://www.youtube.com/@tvcbdv

▼試合スケジュール
https://www.b-soccer.jp/news/21516-20230421

なお、日本代表は6月にも、23日から7月2日にフランスで行われる「ブラインドサッカーグランプリ in フランス2023」に参加予定です。公式戦ではありませんが、ヨーロッパのチームを中心に強豪が集まる大会で、初年度だった昨年大会で日本は準優勝しています。今年もすでに出場8か国が決まり、組み合わせ抽選も終わっています。日本は予選グループAで、世界ランク1位のアルゼンチン、イングランド(同12位)、ドイツ(同17位)と同組となり、日本の初戦は、6月25日(日)18時半(日本時間6月26日(月)1時半)キックオフの、アルゼンチン戦に決定しています。グループBはブラジル(同2位)、フランス(同8位)、イタリア(同16位)、ルーマニア(同19位)です。日本代表メンバーは後日発表予定です。

WGP、フランスでのグランプリともに、8月の世界選手権へのよい弾みとなる戦いに期待しましょう。

■代表選手たちがしのぎを削り合う、国内大会にも注目!

日本代表選手をはじめ、ブラインドサッカーを間近に見られる国内リーグもスタートします。お近くでの開催の際はぜひ応援ください。 

<ブラインドサッカーロービジョンフットボール地域リーグ2023>

全国を4ブロック(北日本、東日本、中日本、西日本)に分けて開催される地域リーグ戦で、ブラインドサッカー26チーム、ロービジョンフットサル2チームが出場予定です。今年は5月から来年3月にかけて全国各地で開催予定で、全会場・全試合を無料で観戦できます。

5月14日に周防大島町陸上競技場(山口県大島郡)で行われる中日本リーグからスタートします。なお、山口県で日本ブラインドサッカー協会主催の公式戦が開催されるのは初めてとなります。

「ブラインドサッカー・ロービジョンフットサル地域リーグ2023」は5月14日、山口会場からスタート! (提供:日本ブラインドサッカー協会)

●地域リーグ詳細
https://www.b-soccer.jp/nationalgame/blindsoccerleague

●日程/会場
北日本リーグ
・2023年9月17日(日)/仙台白百合学園(宮城県仙台市)

東日本リーグ
・2023年5月21日(日)/しながわ中央公園(東京都品川区)
・2023年9月10日(日)/本庄市若泉運動公園多目的グラウンド(埼玉県本庄市)
・2024年3月24日(日)/重兵衛スポーツフィールド中台(中台運動公園)(千葉県成田市)

中日本リーグ
・2023年6月11日(日)/押原公園(山梨県中巨摩郡)
・2023年10月1日(日)/新潟聖籠スポーツセンター(新潟県北蒲原郡)

西日本リーグ
・2023年5月14日(日)/周防大島町陸上競技場(山口県大島郡)
・2023年7月2日(日)/広島県立総合体育館(広島グリーンアリーナ)(広島県広島市)

<LIGA.i ブラインドサッカートップリーグ 2023>

競技性やエンターテイメント性などを高めた国内トップリーグで、7 月から 12 月にかけて全 3 節で実施されます。初年度の昨年と同じ4チーム(埼玉T.Wings/free bird mejirodai/パペレシアル品川/buen cambio yokohama)の参戦が発表されています。

なお、第 1 節と第 3 節は会場で観戦可能で、チケット販売開始は6 月上旬頃の予定です。

ブラインドサッカートップリーグ「LIGA.i」。今年は7月22日に開幕 (提供:日本ブラインドサッカー協会)

●LIGA.i 詳細
https://liga-i.b-soccer.jp/liga-i

●日程/会場
・第1節:7月22日(土)/品川区立総合体育館(東京都品川区)
・第2節:9月24日(日)/会場未定 ※現地観戦なし/オンライン配信のみ
・第3節:12月17日(日)/フクシ・エンタープライズ墨田フィールド(東京都墨田区)

(文:星野恭子)