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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(446) 香取慎吾さん寄付の1,500万円が、パラアスリートのインターンシップ・プログラムの原資に!

国際パラリンピック委員会(IPC)は4月11日、アーティストの香取慎吾さんが昨夏、日本財団パラスポーツサポートセンター(パラサポ)を通じて寄付した1,500万円(約10万ユーロ)を活用して、IPC初のパラアスリート・インターンシップ・プログラムを創設することを公式サイトで発表しました。

発表によれば、同プログラムはパラアスリートが競技者から職業人へとキャリアを移行する際の支援を目的に、ビジネスセンスや知識などを身につける場としてIPCでの有償インターンシップの機会を提供するもので、2023年後半からのスタートを目指して準備が進められています。

香取さんはパラサポのスペシャルサポーターで、東京2020パラリンピックに向けてはIPCの特別親善大使も務めるなどパラスポーツの熱心なサポーターの一人です。東京大会閉幕後に、「東京大会の盛り上がりを一過性にしたくない」との思いからチャリティ企画、「香取慎吾NFTアートチャリティプロジェクト」(*1)を立ち上げ、集まった寄付金3,900万円全額をパラサポに贈呈。パラサポは3,900万円のうち1,500万円をIPCに寄付していました。

なお、残りの2,400万円は事前に申請のあった国内の夏季・冬季パラリンピック競技団体(24団体)に寄贈され、競技普及や強化のための事業に活用されています。

(*1: チャリティ企画として実施したプロジェクトで、香取さんが2015 年のパラサポ開設に寄せてオフィスエントランスに「i enjoy !」をテーマに描いた壁画を、“NFT<Non Fungible Token>アート”として、1 点 3,900 円・限定 1 万点の寄付の参加者を募集したところ、わずか1日で完売した)

東京パラリンピックから1 年後の 2022 年 8 月 23 日、「香取慎吾NFTアートチャリティプロジェクト」寄付贈呈式が都内で開催された。香取慎吾さんを中央に、左から櫻井誠一日本パラ水泳連盟参与、冬季大会メダリストで夏冬パラリンピアンの太田渉子選手、東京 パラリンピックのバドミントン二冠の里見紗李奈選手、一人おいて、アンドリュー・パーソンズ IPC 会長、マイク・ピーターズ同 CEO、パラサポの山脇康会長 (提供:日本財団パラスポーツサポートセンター)

IPCによる発表記事内で香取さんは、「東京2020の盛り上がりは一過性のもので終わらせてはなりません。私はパラスポーツコミュニティに具体的な形で感謝の気持ちを表したいですし、この寄付金が競技場内外でアスリートをサポートできればと思っています。IPCのパラアスリート・インターンシップ・プログラムの創設を支援できることをうれしく思います」とコメントしています。

また、IPCのマイク・ピーターズCEOは、「IPCはこのような素晴らしい寄付をしてくださった香取さんに大変感謝しています。彼がパラスポーツへの支援について語るとき、心からの思いであることは明白です。IPCはアスリートが明日のリーダとなるための支援に取り組んでおり、香取さんの寄付のおかげで、IPCはアスリートが重要な経験を積み、プロフェッショナルなスキルを身につけることを支援することができます」と香取さんへの感謝を述べています。

アスリートのセカンドキャリアは近年、課題の一つとして関心が高まっていて、パラスポーツ界でも同様です。引退後に指導者やメディア関連、あるいは所属企業に残って社業を続けたり、競技団体で普及や強化活動に従事したりなど、セカンドキャリアを築いているアスリートもいますが、まだ選択肢は限られ、実績も一握り。支援に乗り出す競技団体も増えつつありますが、整備体制はまだ不十分な状況です。実際、世界を目指せるポテンシャルがあるのに、現在の生活や引退後を考えるとアスリート生活に踏み出せないという人も少なからずいます。

このIPCの新インターンシップ・プログラムの詳細はまだ発表されていませんが、引退後のひとつの選択肢として可能性を感じさせるプロジェクトではないでしょうか。ここから、さらに見えてくるヒントもあるでしょう。今後の進展に注目したいと思います。

(文:星野恭子)