オールジャパンでスポーツ行政改革を!(玉木 正之)
2020年東京五輪招致活動は、無事順調に進んだようだ。
「プレイヤーズ・ファースト」で現役選手やメダリストを前面に並べ、首相が歌い、都知事が車椅子の世界王者とテニスを行い、皇太子殿下が接見し、高円宮妃殿下が晩餐会に出席……というアピールは、国際オリンピック委員会(IOC)の評価委員へのアピールとともに、国内の「スポーツ熱」を喚起する意味でも、きわめて有効だったに違いない。
前回2016年の五輪招致(リオデジャネイロに敗れる)のときは、前都知事が1時間近くも環境問題について演説し、IOCの評価委員から「我々は国連ではない」との批判の声も聞かれたが、今回は、そのような“暴走”もなく、基本的に悪くないスタートを切れたことだけは評価できると思う。
今回の「オール・ジャパンのアピール」(猪瀬都知事)が、イスタンブールやマドリッドの五輪招致活動を上回り、9月7日のIOC総会での東京の勝利につながるかどうか……はわからないが、この盛りあがった「スポーツ熱」を、このまま放っておくことはない。
スポーツ基本法にも書かれているスポーツ庁の新設は、東京五輪招致が決まれば実行されるとも聞くが、それは順序が逆。
今こそスポーツ庁の設置に動き出し、スポーツは文科省、障害者スポーツは厚労省と分かれたスポーツ行政を一本化するべきだろう。
文科省管轄の体育という学校教育も、スポーツ庁の管轄による課外スポーツ教育とし、そのようなドラスティックな改革によって、スポーツ界の体罰の全面否定、全面禁止を実現。そうして新しいスポーツ教育の実践を、今こそ開始するべきだろう。
また、プロ・社会人・大学・高校・少年野球……と、数多くの組織に分かれた日本の野球界もスポーツ庁のもとに一元化。日本の伝統スポーツである大相撲も、アマチュア相撲とともにスポーツ庁の指導下に入れる。
国土交通省の「箱物行政」で造られることの多い競技場や体育館も、スポーツ庁の計画のもとに建設や修理を見直す。
そのような新しいスポーツ行政に、今取り組めば、予算の節約とともに、東京五輪招致にもプラスになるはずだ。
(毎日新聞3/9『時評点描』+Camerata di Tamakiナンヤラカンヤラ+NLオリジナル)
写真提供:フォート・キシモト