ノーボーダー・スポーツ/記事サムネイル

「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(436) パラスポーツを楽しもう! 主な大会・イベント結果~1月開催分

2023年もパラアスリートが躍動し、熱戦の連続でスタートしました。1月に国内外で開催された主な大会の主な結果をピックアップして、開催日順にお届けします! 
==========
■9日
【水泳】 
全国から選手330名(知的障害303名、身体障害21名、聴覚障害6名)が参加して、第6回日本知的障害者選手権新春水泳競技大会」が千葉県国際総合水泳場(千葉県習志野市)で行われ、男女別、種目別にタイムレース決勝で順位を競った。

好記録も複数誕生。木下あいらが女子400m個人メドレー(5分14秒36)で、斎藤正樹が男子200m背泳ぎ(2分15秒90)で、ともに知的障害クラスのアジア新記録を樹立したほか、日本新2、大会新10、大会タイ1が記録された。

「400m個人メドレーは(試合で)初めて泳いだが、世界新まであと1秒くらいで悔しい」と感想を話した木下は、2021年の選手発掘事業J-Starプロジェクトで見いだされた、オールマイティの逸材だ。2022年から本格的にパラ水泳のレースに出場し始めると、さまざまな種目で記録をどんどん塗りかえている。昨年11月の自身初の国際大会「Virtusオセアニア・アジアゲームズ・ブリスベン2022」でも200m自由形(2分11秒16)、200m個人メドレー(2分26秒86)のアジア新、女子4x50mメドレーリレーではアンカーを務め、世界新(2分11秒06)樹立に貢献した。初めての国際大会にも、「普段と違う環境で楽しかったので、また参加したい。(パリパラリンピックに向けても)がんばりたい」と話す注目の選手だ。

なお、大会の昼休憩時には、2022年11月にオーストラリアで開催された知的障害スポーツの祭典、「Virtusオセアニア・アジアゲームズ・ブリスベン2022」の報告会も行われた。日本代表選手11名(男7、女4)が参加し、メダル27個(金12、銀5、銅10)の獲得とともに、世界新6、アジア新9、日本新1の好記録を樹立する活躍を見せた。
Virtusオセアニア・アジアゲームズ・ブリスベン2022」の日本代表選手たち。前列左から、井上舞美、木下あいら、芹澤美希香、福井香澄、後列左から、上村温、齋藤正樹、津川拓也、松田天空、宮崎哲、山口尚秀 (撮影:星野恭子)

■13日~14日
【スノーボード】
FISパラスノーボードワールドカップ・ピュハ大会のスノーボードクロス種目2試合が行われ、日本代表5人全員が表彰台に乗る、過去最高のリザルトを残した。

まず、13日の初戦ではLL1(大腿障害)クラスの小須田潤太が初優勝、UL(上腕障害)の大岩根正隆が初の準優勝、LL2(下腿障害)の市川貴仁が3位に入った。

さらに14日の第2戦ではLL1で小栗大地が優勝、小須田潤太が準優勝、LL2の岡本圭司が準優勝、ULは大岩根正隆が3位となった。

5人は昨年の北京パラリンピック代表6人のうちの5人で、「チーム」として互いに切磋琢磨し、アドバイスしあい、進化している。

■19日~29日
【アルペンスキー】
2023パラアルペンスキー世界選手権が19日から29日までスペインのエスポットスキー場で開かれ、23日に行われた男女のスーパーGで、男子座位の森井大輝が金メダルを獲得。森井は25日のダウンヒルでも銀、29日のスラロームでも銅メダルを獲得した。

■20日~21日
【車いすバスケットボール】 
コロナ禍の影響を受け、約3 年8カ月ぶりに、車いすバスケットボールのクラブチーム日本一決定戦、「天皇杯 第48 回日本車いすバスケットボール選手権大会」が開催された。予選大会で上位に入ったチームなど全国から8チームが出場し、パラ神奈川スポーツクラブが、NOEXCUSE(東京)を、51-44で下し、22大会ぶり4回目の優勝を飾った。

大会は有観客で開催され、初日は渋谷区の小・中学9校から約1000名が来場するなど多くのファンが温かい拍手で選手を応援。大会最終日の21 日は有料で開催され、アリーナ席、車いす席(アリーナ、スタンドとも)はチケットが完売するなど約3,000人が熱戦を見守った。
 「天皇杯 第48 回日本車いすバスケットボール選手権大会」で、22大会ぶり4回目の優勝を果たしたパラ神奈川スポーツクラブの選手・スタッフ (撮影: 星野恭子)

■20日~22日
【車いすラグビー】 
クラブチーム日本一を決める国内最高峰の大会「第24回車いすラグビー日本選手権大会」が千葉ポートアリーナ(千葉市)で行われ、予選大会(昨年8月~10月)を勝ち抜いた8チームが頂点を目指して熱戦を展開した。

4チームずつ2プールに分かれ、総当たり戦による予選ラウンドの結果、各プールの上位2チームが準決勝を戦い、それぞれの勝者、決勝は日本代表でも活躍する池透暢率いる、Freedom(高知)が TOHOKU STORMERS(東北)を51-45で下し、初優勝に輝いた。

同選手権はコロナ禍の影響により2大会が中止され、今年は2019年以来、3大会ぶりの開催だった。

■21日~22日
【ボッチャ】 
日本最高峰の戦い、「第24回日本ボッチャ選手権大会」がスカイホール豊田(愛知県豊田市)で開催され、予選リーグ戦から決勝まで全114試合が行われた。これまで4つの障害クラス別に男女混合で競われたが、国際ルールの変更により今大会から初めて男女に分かれ、障害クラス別にそれぞれの日本一選手が決定した。

男子では国際大会で実績のある選手が力を示した。BC1は東京パラリンピック団体銅メダルの中村拓海が優勝、BC2はエース、廣瀬隆喜が東京パラ個人金の杉村英孝を破り、3連覇を達成。BC3は東京パラ団体銀の高橋和樹が優勝、BC4は昨年12月の世界選手権(リオデジャネイロ)で個人金の内田俊介が2連覇を果たした。

内田は世界選手権金メダリストとして臨んだ大会での勝利について、「プレッシャーがある中での自分自身への挑戦と思って臨んだが、こういった結果を出せたのは嬉しい」と振り返った。

初めて実施された女子の部はBC1を遠藤裕美が、BC2を伊藤彩水が、BC3は一戸彩音が、BC4を岩井まゆみが制し、それぞれが「初代王者」となった。

日本代表の井上伸監督は、「順当なところもあり、若い選手が活躍したクラスもある。国内の競争力が高まってきたところはあるかと思う」と総括した。

■21日~29日
【クロスカントリースキー】
パラノルディックスキー世界選手権2023がスウェーデン・エステルスンドで開かれ、22日に行われたクロスカントリー18㎞クラシカルの男子立位で、川除大輝が銀メダルを獲得した。

昨年3月の北京パラリンピックでは20㎞クラシカルで金メダルを獲得した川除は、日本障がい者スキー連盟を通して、「去年の課題だった後半の失速を意識し、理想の滑りができた」と振り返り、「(金メダルには届かずに)悔しい反面、メダルを獲得できたのでチームに貢献できて嬉しい」とコメントした。
世界選手権2日目、クロスカントリー18㎞クラシカル男子立位で川除大輝(左)が準優勝。中央は優勝したポーランドのW・スクピエン(ポーランド)、右は3位のウクライナ、G・ボブチンスキー (提供:日本障がい者スキー連盟)

川除は男子スプリント・フリー(24日)で4位、同10㎞フリー(28日)で6位に入り、同オープンリレー(29日)でも日本チームの第2走者として出走し、6位入賞に貢献した。(1走:新田佳浩、3走:森宏明、4走:佐藤圭一)

■22日
【ブラインドサッカー】
クラブチーム日本一を決する大会、「第20回アクサブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権」の準決勝ラウンドがサーラグリーンフィールド(静岡県浜松市)で開催された。

22チームが参加した予選グリープリーグ(昨年12月/2会場4日間)を経て上位8チームが出場し、グループA、Bに分かれてのトーナメント戦の結果、パペレシアル品川とたまハッサーズが決勝戦進出を決めた。また、3位決定戦はfree bird mejirodaiとコルジャ仙台ブラインドサッカークラブのカードとなった。

パペレシアル品川は準決勝でfree bird mejirodaiと対戦。前半11分に品川の川村怜が、後半7分にmejirodaiの園部優月が得点し、1-1の同点で試合は終了。規定によりPK戦の末、品川が勝利した。

たまハッサーズは準決勝でコルジャ仙台ブラインドサッカークラブを2-0で破った。たまは前半13分に黒田智成が、後半9分に田中章仁がゴールを決めた。
「第20回アクサブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権」の決勝戦への進出を決めた、たまハッサーズのエース、黒田智成(左) (撮影: 星野恭子)

なお、決勝戦と3位決定戦は、2月11日(土・祝)に町田市立総合体育館(東京都町田市)でのFINALラウンドで行われる(観戦チケット販売中)。

会場: 町田市立総合体育館 (東京都町田市) *有料開催
詳細: http://axa-bravecup.b-soccer.jp/
チケット販売: http://axa-bravecup.b-soccer.jp/guide/

■28日
【車いすテニス】 
全豪オープンは車いすの部のシングルス決勝が行われ、男子は第3シードの16歳、小田凱人(ときと)が第1シードのアルフィー・ヒューエット(英国)に3-6、1-6で敗れた。

小田は目指していた自身初のグランドスラム優勝はならなかったが、1月22日に現役引退を表明した国枝慎吾さんの後継者として期待される逸材。サウスポーから繰り出される力強いバックハンドやサービスで随所に好プレーを見せた。

サッカー少年だった9歳の時に骨肉腫を発症し、左脚の股関節や大腿骨の一部を切除するなどで車いす生活になったが、国枝さんが2012年ロンドンパラリンピックで金メダルを獲得した試合の動画に感動し、車いすテニス挑戦を決意。2022年4月には15歳11カ月でプロ転向を宣言。同5月には全仏オープンでグランドスラムデビューを果たし、同11月には年間成績上位8選手だけが出場できる「NEC車いすシングルスマスターズ」(オランダ)決勝では、この日敗れたヒューエットをストレートで破り、大会史上最年少となる16歳5ヵ月で同大会を制していた。

女子の部の決勝は、第2シードの上地結衣が第1シードのディーデ・デフロート(オランダ)と対戦。第1セットは6-0と圧倒したが、第2、第3セットをともに2-6で失って敗れ、自身3年ぶりの優勝を逃した。

■29日
【パラ・パワーリフティング】
男女別・体重階級別に日本一を争う、「第23回全日本パラ・パワーリフティング国際招待選手権大会」が東京・中央区の築地本願寺で開催された。同寺でスポーツの公式大会が開かれるのは初めて。海外招待選手4人を含む35選手が参加した。

日本選手にとってはパリパラリンピック出場にもつながる重要な大会「2023年世界選手権(8月/UAE・ドバイ)の代表専攻会の一つでもあり、日本新記録9つ誕生した。

パラ・パワーリフティングの国内大会としては初の有料開催だったが、立ち見も含め、約200人が熱戦を見守った。
  東京・中央区の築地本願寺を舞台に開催された「第23回全日本パラ・パワーリフティング国際招待選手権大会」。阿弥陀如来像の右横にベンチ台が設置される、エポックメーキングな大会となった (撮影: 星野恭子)

(文:星野恭子)