アギーレ解任!~後任には是非とも若い監督を!
1992年に日本代表初のプロ監督としてハンス・オフト(オランダ)が就任して以来、契約期間の途中でその任から去ったのは2人にすぎなかった。
1997年の加茂周監督はワールドカップのアジア最終予選期間中の「更迭」だった。そしてそのちょうど10年後の2007年秋には、イビチャ・オシム監督が脳梗塞で倒れて仕事を続けることができなくなった。
そしてきょう2015年2月3日、節分の日に、日本サッカー協会(JFA)はハビエル・アギーレ監督との契約解除を発表した。
「アギーレ監督の手腕は高く評価している。そして彼が八百長に関与したということでこの結論に至ったわけではない。ただ、日本代表にとって最大のミッションである2018年ワールドカップ出場に向けてことし6月にはその予選がスタートするという状況で、告発が受理され、召喚され、起訴される可能性も考えられ、日本代表チームの強化に影響が出る可能性があり、そのリスクを排除するために今回の結論に達した」
法務委員会長の三好豊弁護士を伴って記者会見に臨んだ大仁邦彌会長は、そう説明した。
私は「告発受理でも契約解除は無理」と考えてきた。できるとしたら「起訴」、すなわち正式に裁判が始まることになったときだろうと思っていた。JFAも同じ考えだったようだが、おそらくアギーレ監督側の弁護士と交渉を続け、告発受理の段階での契約解除の条件で合意に至ったということだろう。
「守秘義務がある」と、大仁会長はその条件を明かさなかったが、そのあたりに今回の契約解除の重要なポイントがあるように感じる。起訴の段階に至ればJFA側から一方的に契約を解除することができるが、この段階でアギーレ監督が契約解除を受け入れればアギーレ監督(とその3人のコーチ)に納得いく金銭的保証がなされるということだったのでではないだろうか。
いずれにしろ今後の課題は後任監督の選任だ。「技術委員会が選び、理事会が決める」と大仁会長は説明したが、その技術員会の霜田正浩強化担当委員長はアギーレ監督の選任に当たったひとり。当時の技術委員長(強化担当)だった原博実専務理事とともに、今回の「契約解除事件」の責任を取らなければならない立場にある。その処分が明らかにならない時点では交渉も進められないのではないかと心配だ。
2018年のFIFAワールドカップ・ロシア大会を目指すアジア予選は2段階に分かれ、ことし6月から来年3月にかけて1次予選、そして来年6月から2017年夏にかけてが最終予選となる。1次予選に出場するのは40チームで8組に分かれるので、オーストラリア、韓国、UAE、イラク、イランといった強豪と同じ組になる可能性はない。「簡単な試合」とは言えないが、誰が監督を務めようと、取り組み方さえ間違えなければまず最終予選進出は確実だろう。
だから選任をあせる必要はないと私は思っている。3月にはチュニジア(27日、大分)、ウズベキスタン(31日、東京)との親善試合があり、それに間に合えばいいが、急ぐ必要はない。
ではどんな監督がふさわしいのか。
「日本人監督を」という声も高いが、それは「外国人監督を」というのと同じように意味がない。現在の日本代表を率いて2018年ワールドカップの出場権を獲得し、ワールドカップで上位進出を目指すことのできる監督という基準だけで選ぶべきであり、国籍にこだわるのはばかげている。
しかし日本のサッカーをある程度知り、日本のサッカーというものをリスペクトし、その地位を高めようとしてくれる人でなければ困る。日本人選手が世界を相手に戦うには何が必要かを理解し、その戦いに合わせてチームを導くことができる人だ。
ひとつだけ個人的な希望を言えば、できるだけ若い監督にしてほしいという点だ。
もしアギーレ監督との契約解除が昨年12月の時点であれば、アルベルト・ザッケローニ前監督に頼むのがいいのではないかと、私は考えていた。アジアカップ限定という条件でだ。選手登録が済んだこの時点で、ザッケローニ前監督以上にその選手たちを最も良く理解している人はいなかったからだ。
しかし「これから3年」という戦いを考えれば、若く、チームとともに成長していくような監督がほしい。若い人には当然実績はない。だからこそ、日本代表を率いて世界に戦いを挑もうという気概があふれているに違いない。
現在の日本代表は非常に良い選手をそろえ、高いレベルのプレーができる。しかしアジアカップで日本代表が敗退した後の準決勝と決勝戦を見ながら、日本代表には、何かが欠けていたように感じた。
それは、燃えるような野心、勝ちたいという気持ちだ。ザッケローニ前監督は非常に良いチームをつくった。だが最後の勝負の場に立ったとき、日本代表からは燃えるような野心が感じられなかった。
「自信が足りなかった。それは経験によるものだ」とザッケローニ前監督はワールドカップを振り返って語ったが、経験の面では他のアジア諸国など圧倒していたはずのアジアカップでも、同じだった。
「閉塞感」にも似たこの状況を打破するには、若々しいスピリットでワールドカップを迎えられるチームをつくらなければならない。そのためには若い監督がほしいと思うのだ。
(大住良之)
PHOTO by Елена Рыбакова [CC BY-SA 3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0), CC BY-SA 3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0), GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html) or CC BY-SA 3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons
※Correction:タイトルを変更しました。