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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(418) ブラインドサッカー国際大会、日本はブラジルにPK戦で敗れ、準優勝

8月28日からフランスで行われていたブラインドサッカーの国際大会「ワールドグランプリinフランス」は9月3日、決勝戦が行われ、日本代表が0-0からのPK戦の末、ブラジル代表に惜しくも敗れ準優勝となりました。

ブラインドサッカーの国際大会「ワールドグランプリinフランス」で決勝戦に臨む日本代表(右)とブラジル代表 (提供:日本ブラインドサッカー協会)

また、個人賞として川村怜キャプテンが大会最優秀選手(MVP)に、神山昌士選手がベストゴールキーパーに選出されました。

この大会は国際ブラインドスポーツ連盟(IBSA)の公認ではないものの、2024年にパリでパラリンピックを開催するフランスが運営テストや代表チームの強化などを目的に主催した国際大会で、日本(世界ランク4位)をはじめ、ブラジル(同3位)、フランス(同8位)、ルーマニア(同19位)、ドイツ(同30位)の5カ国が出場していました。

日本は総当たりで行われた予選ラウンドを通算2勝2分けの首位で決勝に進出。予選2位のブラジルと対戦した決勝では、川村キャプテンをはじめ、黒田智成選手や鳥居健人選手がゴールを狙いましたが、ブラジルの堅い守備に阻まれました。一方、守備では佐々木ロベルト泉選手を中心にブラジルの猛攻をしのぎ、試合は0-0で終了。

勝敗を決めるPK戦(3人制)では、日本は神山GKが好セーブを連発するも得点できず、逆にブラジル3人目の選手がゴール右隅に鋭いシュートを決めたブラジルが優勝を果たしました。

ブラインドサッカーの国際大会「ワールドグランプリinフランス」でブラジルと対戦中の日本代表 (提供:日本ブラインドサッカー協会)

惜しくも準優勝に終わった日本ですが、体格差のある海外チームに対し全5試合を通して大きな手ごたえがあったと思います。予選は初戦のドイツ戦はスコアレスドローでしたが、2戦目のルーマニアに川村選手が2点、黒田選手が1点を挙げ、3-0で勝利します。

3戦目のブラジルは今大会では若手主体のチームだったとはいえ、パラリンピック5連覇の強豪チーム。それでも日本はよく戦い、前半7分、15年ぶりに代表復帰した鳥居健人選手が左サイドからカットインし、右脚を振り抜いたシュートは相手守備陣の間を抜き、ゴール左隅に突き刺さります。これが決勝点となり、日本は1-0で勝利します。これはチーム史上、ブラジル戦13試合目にして初の白星となりました。

この試合のあと、中川英治監督は日本ブラインドサッカー協会を通じ、「日本はブラジルにまだ勝利したことがなかったので、新しい歴史の1ページをこのチームで作ろうという話をして、ピッチに選手を送り込んだ。選手も自信を持って、今までの取り組みを理解して確信と自信を持ってこのピッチに立てたので、良い結果が出たのではないかと思う」と初勝利を振り返っています。

4戦目はホームチームでもあり、2022年欧州選手権を制覇しているフランスで、ここまでの勝ち点の結果、勝者が決勝進出となる大一番でした。地元フランスファンの大声援のなか、日本も攻守にわたって健闘し、0-0のスコアレスドローで決勝進出を決めました。

全5試合で無失点も評価ポイントでしょう。選手交代をしながらもコート上の4選手が声を掛け合い、互いの距離を確認しながら、コンパクトな守備で耐え抜きました。GKは神山選手と泉健也選手が代わる代わる務め、フィールドプレーヤーへの声による指示と好セーブでゴールを守り切りました。

ブラインドサッカーの国際大会「ワールドグランプリinフランス」で大会最優秀選手賞を受賞した川村怜キャプテン (提供:日本ブラインドサッカー協会)

ブラインドサッカーの国際大会「ワールドグランプリinフランス」でベストゴールキーパー賞を受賞した神山昌士GK (提供:日本ブラインドサッカー協会)

シュートの決定力やPK戦で勝ち切れなかった点など課題ももちろんあったと思いますが、今年から初代表の平林太一選手も攻守で光るプレーを見せるなど貴重な経験となったはずです。

川村キャプテンは大会後、協会を通じて、「毎試合相手の特徴を理解して、自分たちの戦い方ができたこと、また取り組んできたことを発揮して柔軟に対応できたことが、結果に繋がったと思う。今年11月に開催されるアジア選手権に向けて、まだまだ課題はあるので、残り2ヶ月でしっかり克服し、チーム内で競争しながらも一致団結して、優勝目指して挑んでいきたい」とフランスでの大会を総括しました。

ブラサカ日本代表の次の大きな目標は11月にインドで行われるアジア選手権で優勝し、2024年パリパラリンピックの出場権を自力で勝ち取ること。今大会で得た自信と課題を糧に、さらなる進化に期待したいと思います。

<日本代表>
川村怜、佐々木ロベルト泉、黒田智成、田中章仁、日向賢、園部優月、鳥居健人、平林太一、泉(GK)健也、神山昌士(GK)

<決勝戦アーカイブ映像>
https://www.youtube.com/watch?v=ZhSXB51kfpw

(文:星野恭子)