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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(416) 東京パラリンピック1周年イベント、有観客で開催。「1年越しに見たかった光景」

昨夏に行われた東京パラリンピック開会式からちょうど1年となった8月24日、大会会場のひとつでもあった有明アリーナ(東京都江東区)で、「東京2020パラリンピック1周年記念イベント」が二部制で開催されました。東京2020大会はコロナ禍のため、原則無観客で開かれましたが、同イベントは有観客で行われ、計9,200人の観客が車いすバスケットボールのエキシビションマッチやゲストのパフォーマンスなどを楽しみました。今号は、同イベントの様子を写真とともに振り返ります。

8月24日に行われた東京2020パラリンピック1周年記念イベント。男子車いすバスケットボール日本代表によるエキシビションマッチなどで観客を魅了 (©東京都)

第1部のメインイベントでは東京パラで6位に入賞した車いすバスケットボール女子日本代表がスペイン代表とエキシビションマッチで対戦しました。無観客だった1年前と異なり、この日は約4,200人が訪れ、手拍子やハリセンで選手のプレーを後押ししました。

女子日本代表とスペイン代表が激突。スペイン選手は、「東京に戻ってこられて嬉しい。今日は観客の拍手も聞こえて、特別な気持ちになった」 (©東京都)

試合は高さのあるスペインが徐々に引き離し、最後は日本が47-60で敗れましたが、日本の北田千尋キャプテンは、「コロナのリスクのなか、来場いただきありがとうございます。今日は1年越しに見たかった光景の中でプレーできました」と観客に感謝しました。

スペイン選手のディフェンスをかいくぐり、ボールを運ぶ、日本の北田千尋キャプテン。「11月の世界選手権に向けて、チームを高めていきます」(©東京都)

メインイベントの前にはエキシビションマッチをより楽しめるように、車いすバスケのルール解説やゲストによるデモンストレーションなども行われました。

ルール解説は車いすバスケ元日本代表の根木慎二さんが行い、デモンストレーションには人気YoutuberのFischer's(フィッシャーズ)が参加 (©東京都)

第1部のハーフタイムとエンディングにはパラ応援大使を務めるLittle Glee Monsterが出演し、『ECHO(エコー』などを熱唱し、盛り上げました。

ハーフタイムショーに登場し、迫力ある歌声を披露したLittle Glee Monsterの3人。「私たちは音楽でパラスポーツを盛り上げていけたら」 (©東京都) 

第1部終了後には小学生を対象に、車いすバスケットボールの体験会も開かれました。試合を終えたばかりの日本やスペインの女子選手も参加して、小学生にアドバイス。江口侑里選手は、「今日が代表デビュー戦で、初めて海外チームとの試合に挑戦できました。皆さんもいろいろなことにチャレンジしてください」

車いすバスケ体験会では、ミニゲームも。過去に体験経験者も多く、皆、楽しそうにプレー (©東京都) 

第2部はオープニングパフォーマンスからスタート。昨夏の東京パラ開会式で『片翼の小さな飛行機』のパフォーマンスで主役を演じた和合由依さんが再び、ダンサーらと華やかなパフォーマンスを披露しました。

和合由依さん(中央右)が再び、熱演。共演のダンサーのなかには車いすユーザーや白杖をもった視覚障害ダンサーも (©東京都) 

つづくセレモニーには主催した東京都の小池百合子知事や国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ会長らが登壇し、昨夏の東京パラ開催について謝意を述べました。

小池都知事は「今日を契機に、パラスポーツムーブメントを一層、発展させていきましょう」と呼びかけ、パーソンズIPC会長は「東京パラは歴史的で英雄的な偉業であり、誇りに思うべき大会」と称賛 (©東京都)

第2部のメインイベントは、東京パラで史上初の銀メダルを獲得した車いすバスケ男子日本代表によるドリームマッチが行われました。もとはオーストラリア代表戦予定でしたが、同チームが出場辞退したため、日本代表チームがTEAM BLACKとTEAM WHITEに分かれ、対戦しました。実力拮抗で接戦となりましたが、第4クオーターで逆転したBLACKが62-56で勝利しました。

日本代表キャプテンも務める川原凛選手(中央奥)は「東京パラを終え、すごく注目してもらったと感じるので、今日は(チームメンバーに)『感謝の思いでプレーしよう』と話しました」 (©東京都) 

互いに手の内をよく知る相手との試合にWHITEの川原凛キャプテンは、「やりづらい部分もあったが、楽しかった」と話し、TEAM BLACKの鳥海連志キャプテンは、「(無観客だった)東京パラでかなわなかったが、今日はプレイヤーだけでなく、スタッフや運営、ファンの方を含め、皆でこの試合を作り上げることができて、うれしい」と充実感をにじませました。

鳥海連志選手(中央奥)は、「観客の皆さんに見てもらう中でプレーできて嬉しかった。この日のために頑張ってきたんだと思いました」 (©東京都) 

第2部には、東京パラの水泳で金メダルを含むメダル5個を獲得した鈴木孝幸選手と、バドミントンでダブルス金、シングルス銅を獲得した山崎悠麻選手もゲストとして来場し、ともに車いすバスケを初観戦。

車いすバスケを初観戦したパラ水泳の鈴木孝幸選手(左)は「ブレーキ音や車いす同士の衝突音など、すごい迫力」。パラバドミントンの山崎悠麻選手は「ベンチの選手も声をかけたり、団体競技ならでは。かっこいい。楽しんでます」 (©東京都)

イベントには、IPC特別親善大使も務める、稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんも来場。東京パラでは聖火リレーの最終ランナーや表彰式のメダルプレゼンターなども務めました。稲垣さんは、「水泳男子100m平泳ぎの山口尚秀選手に金メダルをかけたことが一生の思い出」と振り返り、草彅さんは、「パラアスリートが自分と向き合い、全力を尽くす姿に勇気や向上心をひしひしと感じ、刺激を受けています」とコメント。

草彅剛さん(左)、稲垣吾郎さん(中)、香取慎吾さんは2018年からIPC特別親善大使を務める。稲垣さんは、「2年後には2024パリ大会も控えています。スペシャルサポーターとして全力で盛り上げたい」と力強く宣言 (©東京都)

エンディングでは3人で、パラスポーツ応援チャリティソング『雨上がりのステップ』も披露し、盛り上げました。2018年には同曲の売上金全額(約2300万円)をパラスポーツ支援のために寄付するなど、パラスポーツを継続して応援しています。香取さんは、「これからも、いろいろなことからパラスポーツを知ってもらえる活動をしていきたいです」と明言。観客にもパラスポーツに興味をもち、楽しんでほしいと呼びかけていました。

(文:星野恭子)