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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(62) 12.13~12.17

 国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトしたパラスポーツ・ピックアップ・シリーズ。今号は2020年東京パラリンピック開催に向けた準備状況の話題から、伝統のホノルルマラソンでの副島正純選手と土田和歌子選手の連覇達成やクロスカントリースキー・ワールドカップの続報などをリポート。また、国際パラリンピック委員会発表の「2014最高の瞬間トップ50」は20位から15位までを掲載しています。

 

■東京発

・15日~16日: 国際パラリンピック委員会(IPC)のハビエル・ゴンザレス最高執行責任者(CEO)ら3人が来日し、2020年東京パラリンピックに向けた準備の進捗状況などを確認する事務折衝に臨み、東京大会組織委員会のメンバーと意見交換した。

 

 昨年9月の開催決定後、初めての事務折衝を終えたハビエル・ゴンザレス最高執行責任者(CEO)は、2度目のパラリンピックを行う史上初の都市となる東京に対し、「これまでの準備の進行状況を見て、大きな自信を与えられた」と評価した。さらに「開催決定以降、東京はとても速いペースで準備を進めている。だが、オリンピック・パラリンピックの準備は短距離走でなく、マラソンだ。東京が、その熱意や献身、行動力を開幕まで6年間、ずっと継続してくれることを希望する。そうすれば、東京大会は特別な大会になる潜在力があると思う」と続けた。

 

 一方、大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は「IPCとの2日間の事務折衝で、大会開催に関する幅広いテーマについてとても生産的な議論ができた。価値のある助言や指導を受けたので、今後に生かしていきたい。2020年東京パラリンピックを圧倒的な成功へと導くために、オール・ジャパン体制で力を合わせ最大限の努力をするつもりだ」と応じた。

 

■陸上競技

・14日: ハワイのオアフ島で、第42回目となるホノルルマラソンが行われ、車いすの部男子は副島正純(ソシオSOEJIMA)が1時間41分49秒で、女子は土田和歌子(八千代工業)が1時間57分35秒で、それぞれ総合優勝を果たした。

 

 大会公式サイトによれば、2連覇達成の副島は、「雨の影響はそうでもなかったが、途中から風が強く、昨年よりきつかった。年齢を重ねて、体力的にはこれから上向くことはないかもしれないが、効率的にトレーニングできるようになってきたので、自分も“レジェンド”と呼ばれるように頑張りたい」と話し、3連覇の土田は「今日はスタートからの雨で、コンディションが厳しいレースでした。でも沿道の応援が力になり、3連覇できました。ホノルルはハードなコースですが、走りがいのあるレース。いつかコースレコードを狙いたい」とレース後にコメントしている。

 

 また同じ日、沖縄・那覇市では、第26回ぎのわん車いすマラソン大会が行われ、ハーフマラソン男子の部で、西田宗城が46分15秒で優勝。2位に渡辺勝、3位には廣道純がつづいた。

■クロスカントリースキー

・13日: フィンランド・ヴォッカティで10日に開幕したワールドカップ2014-15シーズン第1戦。日本の5選手を含む、12カ国から100名以上の選手が参加している。3日目は男女クロスカントリースキー・ミドルが行われ、日本からは3選手が出場。男子10キロ(2.5キロx4周回)立位では新田佳浩(日立ソリューションズ)が28分15秒3で4位に入った。新田は、「毎年、レース初戦は海外選手の仕上がり、そして自分自身がしっかり戦うことができるのか推し量る重要な意味がある。大会前にケガなどで思うように調整できないなか、しっかり滑ることができた。ただ、上位の選手に最終ラップで離されたことは今後の課題だ。ソチ(冬季パラリンピック)から次に向けて、また新たなチャレンジをしていきたい」とコメントした。イホール・レプティウク(ウクライナ)が27分04秒9で優勝、岩本啓吾(東京美装興業)は19位だった。

 

 女子5キロ(2.5キロx2)立位では阿部友里香(日立ソリューションズJSC)が17分46秒2で4位に入った。優勝はアレクサンドラ・コノノワ(ウクライナ)で16分06秒2だった。

 

・14日: 大会4日目は男女クロスカントリースキー・スプリント・フリー(1.3キロ)が行われ、日本からは3選手が出場。男子立位の佐藤圭一(エイベックス・グループ・ホールディングス)が10位、岩本啓吾(東京美装興業)が25位、女子立位の出来島桃子(新発田市役所)は10位だった。

 

・17日: 大会最終日は男女バイアスロン・スプリントが行われ、日本からは2選手が出場。女子6キロ(2キロx3周回)立位で阿部友里香(日立ソリューションズJSC)が23分26秒2(ペナルティ=1)で6位に入った。優勝はアレクサンドラ・コノノバ(ウクライナ)でタイムは19分38秒7(P=0)だった。

 

 阿部は「初めてエレクトロニック銃(⇒註)を使用したレースだった。やはり普段のバイアスロンのレースとは違うので心配もあったが、バイアスロンコーチのおかげもあり、落ち着いてレースに臨むことができた。走りのほうでは最後まで諦めず走ることができたが、まだまだ他国との差は大きいので、つぎの大会までに改善するようにしたい」とコメントした。

 

 男子7.5キロ(2.5キロx3)立位では、佐藤圭一(エイベックス・グループ・ホールディングス)が24分秒12秒2(P=2)で12位。ウクライナのイホール・レプティウクが20分26秒3(P=0)で優勝した。

 

 今大会はこの日で閉幕。3月のソチ冬季パラリンピックから好調さを維持しているロシア勢が18個の金メダルを含む44個のメダルを獲得して他を圧倒した。クロスカントリースキー競技はこの後、2年に一度開催の世界選手権が1月23日から米国ケーブルで、ワールドカップ次戦が2月14日から北海道旭川市で開催される予定になっている。日本ではさらに、全日本障害者クロスカントリースキー大会が1月11日から北海道旭川市で開催される。

 

⇒エレクトロニック銃(電子銃): バイアスロンではこれまでエアーライフル(空気銃)が使用されてきたが、国際パラリンピック委員会(IPC)は現在、作業部会を立ち上げ、エレクトロニック銃への変更の検討している。変更の理由にはエアライフルは構造上、寒さや雪、雨の影響で競技中にトラブルが発生しやすいこと、国によっては厳しい銃規制の対象となること、会場設営や空港での税関検査などに労力が必要なことなどが挙げられている。一方で、風や太陽光など気象条件の影響を受けにくいエレクトロニック銃では射撃でのミスが減り、選手間の差がつきにくくなることも考えられる。すると、クロスカントリースキーの走力差がそのまま順位に反映されやすくなり、バイアスロン競技としての面白さが薄れてしまうという意見もあり、今後の動向が注目されている。

 

■シッティング・バレーボール

・13日~14日: 「第18回日本シッティング・バレーボール選手権大会」が東京・中央区立総合スポーツセンターで開催された。シッティング・バレーボールは床に座ったままで行うバレーボールで、跳び上がったり立ち上がったりすると反則になる。同大会は障がい者と健常者の混合チームでも参加できる全国大会で、男子は16チームが参加し、千葉パイレーツが優勝。大会MVPには同チームの山本新選手が選ばれた。女子は8チームが参加し、中国から来日した上海女子坐式排球團が世界最高レベルのプレーで予選リーグ、決勝と日本のチームを圧倒する強さを見せ、優勝を飾った。MVPには同チームの許捷選手が選ばれた。

 

■ブラインドサッカー

・14日:「ブラインドサッカー関東リーグ第7節」が東京・福生市営福生野球場で行われた。第1試合は乃木坂ナイツがbuen cambio yokohamaに4-1で、第2試合は昨年覇者のAvanzareつくばが埼玉T.Wingsに2-0で勝利した。

 

 この結果、Avanzareが全5試合を終え、勝ち点9の首位に立ったが、あと1試合を残しているたまハッサーズ(勝ち点8)と乃木坂ナイツ(勝ち点7)にもリーグ優勝の可能性がある。優勝は来年1月24日に予定されている最終節(会場未定)の乃木坂ナイツ-たまハッサーズ戦の結果で決まる。

■ドイツ発

<2014年度のパラスポーツ最高の瞬間トップ50>

 国際パラリンピック委員会(IPC)がセレクトする「2014年度のパラスポーツ最高の瞬間トップ50」。11月12日に第50位が発表され、12月31日までの毎日、IPC公式サイトの特別ページで順次公開されている。このコーナーではその要約を翻訳して掲載中。今回は12月4日から12月11日までに発表分の20位から15位まで。

 

20位: ソチ冬季パラリンピックのアルペンスキー競技で、ドイツのA.シャフェルフーバー選手が座位5種目を全制覇した。同競技では女子選手の全種目制覇は前回2010年バンクーバー大会でのL.ウルシュテンクロフト選手(カナダ)につづき、史上二人目。シャフェルフーバー選手は5種目制覇して、「1つの金メダルを獲るにもすべてが100パーセントでなければなりません。天気、体調、スキーの調整や滑り、気持ちの充実、そしてもちろん、幸運と」とコメントした。

 

19位: 53カ国から265選手が参加した2014年IPC射撃世界選手権(7月/ドイツ)は参加国数、選手数とも史上最大規模で行われた。

 

18位: ソチ冬季パラリンピック(3月/ロシア)で、アルペン競技の1種目としてパラ・スノーボードがパラリンピック・デビューを果たした。同大会ではスノーボードクロス男女立位の部が行われ、初代チャンピオンには男子が、E.ストロング(アメリカ)、女子はB.メンテル-スピー(ドイツ)がそれぞれ輝いた。

 

17位: IPCが統括する競技(⇒註)は今年、大きく発展を遂げた。さまざまな競技で多くの大会が開催され、新たなスポンサー契約も多数成立し、メディアによる報道も増えた。例えば、陸上競技では2013年に始まったグランプリシリーズが4大陸で9大会に増え、パワーリフティングの世界選手権(4月/UAE)は60カ国から360名以上の選手が参加して史上最大規模で開催された。また、射撃競技では公式の計測と結果システムのプロバイダーとしてスイスのSUIS社と2016年までの契約の合意に達し、アイススレッジ・ホッケーなど冬季競技もソチ冬季パラリンピック(3月/ロシア)での成功をはじめ、新たな国際大会の創設など数々の発展をみた。

 

⇒IPC統括競技: 国際競技団体と連携するだけでなく、IPC自体で直接統括、運営している競技が9つある。陸上競技、パワーリフティング、射撃、水泳、車いすダンス競技、アルペンスキー、クロスカントリースキー、バイアスロン、アイススレッジ・ホッケー。

 

16位: 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催が、2013年に決定されたのを受け、大会組織委員会は強い熱意をもって迅速なスピードで準備を進めている。今年1月に東京で開催されたIPCによるオリエンテーション・セミナーで、日本パラリンピック委員会の鳥原光憲会長は、「大会への準備を通じて、我々は日本国内でのパラリンピックについての認識をさらに高めること、そして、強い意思、インスピレーション、勇気、平等性というパラリンピックの4つの価値を広め、強固にする場として2020年大会が役立てるよう最大限の努力を払いたい」と話した。

 

 また、10月には1964年東京大会の50周年を記念して、IPCと組織委員会は64年大会の記念本やビデオなどを発行した。64年大会は21カ国から375選手が参加し、9競技で144個のメダルを競った。2020年大会では170カ国から約4300選手の参加が見込まれており、来年1月には実施競技(最大で23競技予定)が決まることになっている。

 

・15位: クロアチアのS.パオヴィッチ選手は生命の危機に瀕した交通事故からの復活を果たし、2014パラ卓球世界選手権(9月/北京)で優勝した。同選手は以前、世界ランキング50位以内に入る卓球選手で、クロアチア代表として2008年北京オリンピックにも出場したが、翌09年に交通事故で頸部脊髄損傷という重傷を負い、下半身に麻痺などの機能障害が残った。13年にパラ卓球に転向して競技に復帰するとすぐに頭角を現し、ヨーロッパ選手権で優勝するなど4つのタイトルを獲得した。「競技復帰へのモチベーションはただ卓球が好きだったし、スポーツが好きだったから。私の成功を大勢の人が支えてくれました。でも、いちばん大切だったのは私自身が自分を信じること、そして決して諦めない気持ちでした」

 

(星野恭子)