星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(61) 12.3~12.11
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトしたパラスポーツ・ピックアップ・シリーズ。今号では、上肢や下肢の切断障害者を対象にしたアンプティ・サッカーのワールド杯の続報や、いよいよシーズンが始まったクロスカントリースキーのワールド杯初戦の様子などをリポート。また、国際パラリンピック委員会発表の「2014最高の瞬間トップ50」は28位から21位までを掲載しています。
■アンプティ・サッカー
・4日: メキシコで開催中の、上肢、または下肢に切断障害のある選手を対象にしたアンプティ・サッカーの「ワールドカップ2014メキシコ大会」は決勝トーナメントに入り、アンゴラと対戦した日本は0-1で惜しくも敗れたものの、3度目のワールドカップをベスト8という史上最高成績で終えた。
・6日: ワールドカップ準決勝は、前回(2012年)銀メダルのロシアがトルコを、アンゴラがポーランドを、それぞれ1-0で破り、決勝に進出。
・7日: ワールドカップ決勝戦は世界ランク2位のロシアがランク外から勝ち上がったアンゴラを3-1で下して優勝。3位決定戦はトルコがポーランドを1-0で下し、銅メダルを獲得した。
■クロスカントリースキー
・10日: ワールドカップ2014-15シーズン第1戦がフィンランド・ヴォッカティで開幕した。日本からは5選手が参加している。大会は17日まで行われる。
初日はバイアスロン・ショートが行われ、女子6km(2kmx3周回)立位でソチ冬季パラリンピック代表の阿部友里香(大東文化大学・日立ソリューションズJSC)が21分24秒2(ペナルティー・P=2)で7位に入った。阿部は「今シーズン初めてのバイアスロンは呼吸調整をしっかりと行い、射撃することを意識してレースに臨んだ。満射を狙っていたのでペナ2だったのは残念だったが、昨シーズンよりは成長していることを実感できたレースだった」とコメント。優勝はアレクサンドラ・コノノワ(ウクライナ)で18分04秒7(P=4)だった。
・11日: ワールドカップ2日目はバイアスロン・ロングが行われ、女子12.5キロ(2.5kmx5周回)立位でソチ代表の出来島桃子(新発田市役所)が50分17秒4(P=4)で8位に入った。出来島は「昨日と今日のバイアスロンのレースの結果、今後、スキーと射撃の練習で改善していかなければならない点を確認できた。今シーズンから、射撃の時に右手を固定する位置を変えたが、1月の世界選手権までに調整の効果がより出るように、限られた期間の中でしっかり練習していきたい」とコメントした。優勝はマイア・ヤルヴェラ(フィンランド)で42分34秒7(P=0)だった。
なお、クロスカントリースキーのワールドカップは来年2月、北海道旭川市での開催が決まっている。日本で同ワールドカップが行われるのは史上初めて。
■陸上競技
・5日: 車いすマラソン大会、「日産カップ追浜チャンピオンシップ2014」が神奈川県横須賀市で開幕した。この大会は障がい者スポーツの普及と地域活性を目的に、日産自動車(株)と地域住民らとの協働運営により2000年にから始められ、今年で15回目になる。現在は競技会と体験会を組み合わせた3日間シリーズの大会として定着し、参加選手も200名を超えるまでなっている。競技会には障がいのない人も車いすでレースに参加できる。
初日のこの日は、競技会参加選手を講師に、地元の小中学生を対象にした「車いす体験交流会」が開かれ、障がい者に関する座学から車いすの実車体験などが行なわれた。
・6日: 大会2日目は、日産自動車追浜工場内のテストコースを利用しての、タイムトライアル(2.5km、5km、10km)が行われた。各部の男女別総合優勝者は以下の通り。
<10km>
男子: 樋口 政幸(一般) 20分38秒
女子: 安川祐里香(一般) 28分34秒
<5km>
男子: 小島 将平(一般) 11分52秒
女子: 喜納 翼(一般) 15分24秒
<2.5km>
男子: 斉藤 薫(ユース)12分41秒
女子: 八木 優奈(ユース)16分13秒
・7日: 大会最終日には、追浜駅前を発着とするコースでハーフマラソン(21.0975km)とチャレンジレース(7.0325km)のロードレースが行われた。各部の男女別優勝者は以下の通り。
<ハーフマラソン>
男子: 樋口政幸(T53/54/34クラス) 45分45秒
女子: 中山和美( 同 ) 53分58秒
<チャレンジレース>
男子: 該当者なし
女子: 棚田優子( 同 ) 27分10秒
なお、全レース結果は、大会公式サイトで公開されている。
■アラブ首長国連邦(UAE)発
・3日: アジアパラリンピック委員会(APC)は、アラブ首長国連邦のアブダビで開催された総会で役員選挙が行われ、日本パラリンピック委員会(JPS)の水野正幸副委員長がAPC副会長に初選出された。会長には、MAJED RASHED氏(UAE)が初選出された。
また、日本障がい者スポーツ協会の陶山哲夫医学委員長がAPC医事科学委員長に再任された。
■ドイツ発
<2014年度のパラスポーツ最高の瞬間トップ50>
国際パラリンピック委員会(IPC)がセレクトする「2014年度のパラスポーツ最高の瞬間トップ50」。11月12日に第50位が発表され、12月31日までの毎日、IPC公式サイトの特別ページで順次公開されている。このコーナーではその要約を翻訳して掲載中。
今回は12月4日から12月11日までに発表分の28位から21位まで。
28位: ボッチャのL.Y.ウィング選手(香港)が世界選手権(9月/北京)とアジアパラ競技大会(10月/韓国)でそれぞれ個人とペアで優勝し、4つのタイトルに輝いた。2004年のアテネ・パラリンピックで金メダルに輝いて以来、プレッシャーからスランプに陥っていたが、10年ぶりの復活の勝利だった。
27位: ゴールボール世界選手権(7月/フィンランド)でブラジルチームが、地元フィンランドチームを9-1で破り、チーム史上初の世界タイトルを手にした。この試合で6点を挙げ勝利に貢献したL.シルバ選手は全51得点で大会得点王に輝いた。両チームはロンドン・パラリンピックの決勝戦で対戦しており、そのときはフィンランドチームが金メダルに輝いていた。
26位: パワーリフティング世界選手権(4月/ドバイ)の54kg級で、S.オスマン選手(エジプト)が自己のもつ世界記録180.0kgを更新する205.0kgをクリアして優勝した。同選手は来年、階級をひとつ挙げる予定だという。
25位: 女子車いすバスケットボール世界選手権(6月/カナダ)で、2012年ロンドン・パラリンピックで6位に沈んだカナダチームが母国の地で王座に返り咲いた。
24位: コモンウェルスゲームズ(7月/スコットランド)で、陸上競技の女子100mT11/12クラス(視覚障害)でリビー.クレッグとガイドのミカイル・ハギンズ(スコットランド)が優勝した。同国選手が陸上のトラック種目で金メダルと獲得するのは20年ぶりだった。「ミカエルは本当にすばらしい。彼がいなかったら、金メダルは獲れなかった。彼がいなければ、私は私のやるべきことはできないし、彼も私がいなければ、彼のやるべきことはできない。私たちは間違いなく互いに頼りあっているのです」
23位: 視覚障害者柔道世界選手権(9月/アメリカ)で、ロンドン・パラリンピック金メダリストのY.ヤンピン(中国)が優勝した。「私に必要だったことのすべては、プレッシャーや周囲の期待をネガティブなこととして練習や試合に影響させるのでなく、それらをモチベーションに変えることでした」
22位: 国際パラリンピック委員会(IPC)はファンと選手の距離を近づけたり、スポンサーに価値を届けるためにソーシャル・メディアにアクセスしやすくしたりといった目的のために、2014年度も引き続き、デジタル・メディアの活用をさらに充実させた。実際、IPCがもつ9つのフェイスブックとツィッターへのアクセス数は平均で75パーセント増え、なかには1000パーセント以上増えたアカウントもある。「我々のデジタル・メディア戦略の中心にあるのは常に選手だ。彼らがパラリンピック・ムーブメントを促進させ、パラリンピックの価値を伝えることができる存在だと、我々は認識している」
21位: 世界乗馬選手権(8月/フランス)で、パラリンピック金メダリストのS.クリスチャン選手(イギリス)優勝という大方の予想を覆し、イタリアのS.モーガンティ選手が金メダルを獲得した。モーガンティ選手は直前のヨーロッパ選手権では銅メダルだった。「私はとてもリラックスしていたし、試合が大好きです。私の馬も試合が好きだし、リラックスが大事だとよく知っています。そして、すべてがうまくいったのです!」
(星野恭子)