「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(404) “チーム・ジャパン”が海外大会で躍動!大会初制覇など好結果、続々!
東京パラリンピックから半年以上が経ち、さまざまな競技の日本代表チームにも新たな選手が加わるなど、新体制となって2024年パリパラリンピックに向けた強化が進められています。コロナ禍はまだ完全には収束していないものの、徐々にパラスポーツの大会も開催されるようになってきました。そして、海外から日本代表活躍のニュースも続々と届いています。今号では、5月前半に届いた“チーム戦”の大会結果からピックアップして、新着順にご紹介します。
■ブラインドサッカー男子「中川ジャパン」、ドイツでの4カ国対抗戦で優勝!
4カ国が参加して、5月13日から14日の2日間にわたり、ドイツ・ベルリンで開催された「Blindenfreunde Cup」で、日本代表が優勝しました。イタリア、ドイツ、ポーランドと総当たり戦を行い、2勝1分けでドイツと並びましたが、得失点差で+14の日本が+9のドイツを上回り、優勝が決まりました。
ドイツ・ベルリンで行われた「Blindenfreunde Cup」で優勝し喜ぶ、ブラインドサッカー日本代表選手たち (提供:日本ブラインドサッカー協会)
今季から東京パラでガイドを務めた中川英治氏が監督に就任し、強化指定選手も一部、入れ替わっています。今大会は新体制では初となる海外チームとの実戦機会となりましたが、優勝という幸先のよいスタートとなりました。
初戦のイタリア戦を3-1で勝利後、つづくドイツ戦は1-1で引き分け、最終ポーランド戦で12-0と大勝。磨いてきた攻撃力の成果を発揮しました。
日本ブラインドサッカー協会の発表によれば、中川監督は大会を振り返り、「事前に分析をスタッフの総力で行うことができたので、相手のプレーモデルに合わせた戦い方が3試合通じてできた」とし、「今回初めて監督という立場で試合に臨んだが、優秀なスタッフたちに囲まれ、選手もスタッフも相互に支え合うことが出来た点がとても良かった」と新体制への手ごたえを語りました。
引き分けとなったドイツ戦には「悔しさが残る」としたものの、PKで先制点を献上後、流れの中で川村怜主将のシュートで追いついたことや、中川ジャパンの目標として、「日本のブラインドサッカーの歴史を更新すること」を掲げており、これまで6得点だった1試合での最多得点記録を今回のポーランド戦で「12得点」にまで更新できたことを評価し、「新しいチームになり、攻撃と守備で取り組んできたことの成果は十分に発揮できた。取り組んできたことの中で、まだ発揮できていない部分もあったので、そこは次の大会で課題の洗い出しを行いたい」と前向きにコメントしました。
東京パラでもチームを率いた川村主将は、「新体制で挑んだ遠征だったので、勝利というかたちで結果を出せたことを非常に嬉しく感じている。3試合通して、メンバーを交代しながら戦術を実行できたこと、選手それぞれの特徴を活かしながら戦えたことは収穫になった」とコメント。海外チームとの対戦は東京パラ以来、また海外遠征は約3年ぶりでしたが、「世界基準をチームとして経験できたことは非常に大きな収穫だったが、体格の大きい相手や手足の長い相手に対して苦戦した部分もあった。もっと早いタイミングで適応して対応できる力を身につけていきたい」と課題も口にしました。個人としては、3試合でチーム最多の8得点をあげ、「毎試合得点が取れて優勝に貢献できたことは満足している。東京パラを経験して自信がつき、相手の動きを冷静に認知しながら余裕を持ってプレーできたことが得点につながった」と自身の進化も確認できたようです。
体格の大きなドイツ選手と対峙する川村怜主将(左) (提供:日本ブラインドサッカー協会)
また、初戦のイタリア戦で中川ジャパンの記念すべき初得点を決めたのは、東京パラ代表の園部優月選手で、日本代表として自身初のゴールでもありました。園部選手は、「代表戦で初めてスタメンに選ばれ、とても緊張し、前半はバタついてしまうことが多かった。一度交代を挟んだあとから気持ちを整理して臨むことができたので、初得点の時も落ち着いて狙ったところにシュートを打つことができた。今回の試合を通じて、自身の課題も見つかった。普段から一つ一つのプレーを大切に、相手を見ながらプレーできるよう、これからも練習に励んでいく」とさらなる成長を誓いました。
自身の代表初ゴールが今大会でのチーム初得点となった園部優月選手 (提供:日本ブラインドサッカー協会)
【中川ジャパン・ドイツ遠征メンバー】 (カッコ内は今大会中の得点数)
FP:川村怜(8)、佐々木ロベルト泉、田中章仁(1)、日向賢(2)、佐々木康裕、園部優月(4)、丹羽海斗、鳥居健人(1)
GK:佐藤大介、泉健也
■オリオンジャパン女子、「レディース・インターカップ」で初優勝!
ゴールボール女子の対抗戦、「Malmö Lady Intercup 2022」が5月6日から8日にかけてスウェーデン・マルメで開催され、10カ国による熱戦の末、オリオンジャパン(ゴールボール日本代表)が初優勝を果たしました。
5カ国ずつに分かれた予選リーグをBプール2位で終えた日本は、準決勝で世界ランキング1位のアメリカを2-0で、決勝では同7位で東京パラでも対戦したイスラエルを6-3で下しました。
なお、同カップは2000年、女子代表の国際大会が少なかったことから、当時のスウェーデンのコーチの発案で創設された女子のみの国際大会です。過去の優勝経験国はフィンランド、デンマーク、スウェーデン、アメリカ、カナダ、ロシアで、日本は2009年から連続出場し、今回で優勝経験国に名を連ねることとなりました。
【オリオンジャパン女子】
選手: 天摩由貴主将、安室早姫、欠端瑛子、神谷歩未、萩原紀佳、高橋利恵子、小宮正江
■車いすテニス女子、国別対抗団体戦を初制覇!
歴史ある国別対抗団体戦、「2022 BNP Paribas World Team Cup(車いすテニス世界国別選手権) ポルトガル大会」が5月2日から8日までポルトガル・ヴィラモウラで開催され、日本から全4クラスにそれぞれの代表チームが出場。7日間にわたる熱戦の末、女子クラスは絶対女王のオランダを2-0下し、悲願の初優勝を果たしました。さらに、他の3クラスでも好結果を残しています。
日本女子は2019年イスラエル大会から3大会連続(*)での決勝進出ですが、19年、21年はいずれも連覇中だったオランダに敗戦。今年は東京パラリンピックのメダリスト、大谷桃子選手と上地結衣選手がシングルス戦で2連勝(勝敗決定によりダブルス戦は打ち切り)し、初めて頂点に立ちました。(*2020年大会はコロナ禍により21年に延期)
男子は準決勝でスペインに1-2で惜敗したのもの、3位決定戦でアメリカを2-0で退け、銅メダルを獲得しました。優勝はオランダです。また、クアードとジュニアはともに5位決定戦に進み、それぞれイスラエル、アルゼンチンに2-0のストレートで勝利しました。
日本車いすテニス協会によれば、この結果により、男子、女子、クアードの 3 クラスは次回大会のダイレクトエントリーが確定しました。さらなる活躍に期待です。
【女子】=優勝
選手:上地結衣、大谷桃子、田中愛美、船水梓緒里
【男子】=銅メダル
選手: 国枝慎吾、小田凱人、眞田卓、三木拓也
【クアード】=5位
選手: 菅野浩二、諸石光照、宇佐美慧、川野将太
【ジュニア】=5位
選手: 川合雄大、大内山匠、高室侑舞
他に、卓球やバドミントン、自転車など個人競技でも多くのメダル獲得のニュースが海外から届いています。「チーム・ジャパン」の活躍をこれからも、どうぞご期待ください!
(文:星野恭子)