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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(401) 東京パラ銀の車いすバスケ日本男子、新体制で初の国際大会へ!

昨夏の東京パラリンピックで、初の銀メダルを獲得した車いすバスケットボール男子日本代表が4月30日、千葉ポートアリーナ(千葉市)で実施中の強化合宿の様子をメディアに公開しました。

今回の合宿は5月21日にタイ・プーケットで開幕するIWBFアジアオセアニアチャンピオンシップス(AOC)に向けた攻守両面における戦略や戦術の強化を目的としています。同大会は、11月に行われる世界選手権(ドバイ)への地域予選会でもあり、2024年パリパラリンピック出場にもつながる重要な大会です。

また、日本代表チームも東京パラ後に引退した豊島英キャプテンに代わって、川原凛キャプテン(クラス1.5/ローソン)が率いる新体制となり、メンバーも東京パラ代表12人から半数が入れ替わりました。AOCはその初陣でもあります。

5月21日に開幕するアジアオセアニアチャンピオンシップス(タイ・プーケット)に臨む車いすバスケットボール男子日本代表。前列左から、川上祥平選手、岩井孝義選手、川原凛キャプテン、中列左から、竹内厚志選手、鳥海連志選手、赤石竜我選手、丸山弘毅選手、後列左から、秋田啓副キャプテン、朏秀雄選手、堀内翔太選手、高柗義伸選手、村上直弘選手

京谷和幸ヘッドコーチ(HC)は、「戦術上の大きな変化はなく、東京パラまでやってきたことを再強化している。AOCでも、(ディフェンスから速い切り替えでボールを運んで攻める)トランジションバスケを基本スタイルに、よりアグレッシブなディフェンスで、ゴールからより遠い位置でプレスをかけていきたい」と話し、「AOCでは上位5位に入り、世界選手権の出場権を取りたい」と意気込みを語りました。

京谷HCはまた、新リーダーに指名した川原キャプテンについて、世代交代の進むなか、若手の中心世代であり、幅広い世代のメンバーとのコミュニケーション能力が高く、「キャプテンに適任」と話しました。

川原キャプテンは就任を打診された時は、「自分にできるのかとびっくりしたが、今後、日本を背負っていく若い世代を代表して、自分がキャプテンとして引っ張れるなら、がんばってみようと思った」と振り返り、新体制のなかでは、「自分は若手とベテランをうまく融合させるつなぎ役。うまい具合にマッチして、強い日本をパリに向けて完成させていきたい」と意気込みを語りました。

キャプテンとして責任の重さも感じているといい、「(東京パラの銀メダル)はひとつの結果。パリでも、その次でもメダルを獲って歴史が作られると思う。責任は重い」と言い、その一歩となるAOCは、「新メンバーで臨む初戦になるので、いいことも悪いことも起こると思うが、チームとして全部受け止めて、いい大会にしたい」と力を込めました。

東京パラで大会MVPに選ばれた鳥海連志選手(2.5/WOWOW)は川原キャプテン体制となり、「彼なりにキャプテン像をイメージしたうえでチームを動かそうとしている。僕たちはそこについていこうとしている。新しいメンバーも入り、僕がチームを引っ張るという役割も担っている。(国際)大会がつづく今年は、内容よりも結果を残すことにフォーカスを置いている」と今の心境を語りました。

実戦練習中、ティルティング(車いすの片輪を浮かせて高さを出すテクニック)で激しいディフェンスを見せる鳥海連志選手(右)

東京パラでの活躍で車いすバスケへの関心や人気は高まりましたが、その後、まだ終わらないコロナ禍によって予定された国内大会があいついで中止や延期となり、観戦チャンスがないことから、「いい結果を残して持ち帰り、しっかりと見せたい思いがある」と、人気持続のためにもよい結果が必要だと意気込みます。

チームとして新たに取り組んでいるというハーフコートオフェンスについては、「少しずつ理解を深めている。(シュート精度など)少しずつよくなっているところが自分の成長」と手ごたえを口にしました。

川原キャプテンを支える副キャプテンを任されたのは秋田啓選手(3.5/あいおいニッセイ同和損害保険)です。新チームで臨むAOCには、「世界選手権出場枠の獲得と、新チームとしていろいろなチャレンジができれば」と目標を掲げ、副キャプテンとしては「東京パラも経験した一人として、新たに(代表に)入ってきた選手がコミュニケーションを取れているかなど、目を配れれば」と話しました。

実戦練習中、相手選手たちの堅い守備を交わしながら、ミドルシュートを狙う秋田啓選手(左)

村上直広選手(4.0/BNPパリバ証券)は最終選考で東京パラ代表を逃しましたが、その悔しさをポジティブにとらえ、次のステップに向けた準備に取り組んでいたと明かしました。

「スリーポイント(シュート)を狙いながら、ディフェンスを釣りだして味方にチャンスをつくる。味方にチャンスをつくりながらも、自分でいくところは行く。その緩急をつけられるように、スピードもシュート力もあげてきた」と言い、AOCではその取り組みが、「海外選手を相手にして、どこまで通用するかを見て、(11月の)世界選手権に向けて課題を見つけたい」と前を見据えていました。

AOCで初めて日の丸を背負う新メンバーの一人、川上祥平選手(2.0/奥アンツーカ)は、「12人に選ばれてうれしい。アウトサイドシュートが強み。しっかり決めていきたい」と初陣の目標を口にしました。

AOC日本代表選手は他に、東京パラにも出場した、岩井孝義選手(1.0/SMBC日興証券)、赤石竜我選手(2.5/日本体育大学)、髙柗義伸選手(4.0/日本体育大学)と、新たに加わった丸山弘毅選手(2.5/LINE)、竹内厚志選手(3.0/豊田市役所)、朏秀雄選手(4.0/PwCあらた有限責任監査法人)、堀内翔太選手(4.0/しまだ病院)です。

この12人でまずは、21日に開幕するAOC(タイ・プーケット)に臨み、上位5チームに与えられる世界選手権(11月/ドバイ)の出場権獲得を目指します。新たな歴史への一歩を踏み出した新生車いすバスケ男子日本代表に、日本から熱いエールをお願いします!

(文・写真:星野恭子)