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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(398) 「オリパラ一体」進む卓球。パラ日本代表監督に健常者代表コーチ経験者が就任!

東京2020大会で提唱された「オリパラ一体」は、オリンピックだけでなく、パラリンピックも一緒に盛り上げようという考え方です。実際にさまざまな形で進み、東京大会のレガシーの一つと言えるでしょう。たとえば、日本肢体不自由者卓球協会(JPTTA)は4月1日、この「オリパラ一体」をベースにした2022年度の新強化体制を発表しています。

新しい体制ではまず、オリンピック日本代表などを統括する日本卓球協会(JTTA)のハイパフォーマンスディレクター、宮崎義仁氏がパラ卓球のJPTTAでも同職を兼務することとなりました。宮崎氏によれば、昨年秋ごろ、JPTTAの坂井一也会長から、「2024年パリ大会に向けて、『オリパラ一体の強化』をやっていきたいと打診があり、受けたそうです。

さらに、3月末日の任期満了に伴ってパラのナショナルチーム監督を退任した新井卓将氏に代わり、健常者卓球での指導経験が豊富な2名が新監督に就任しました。一人は車いすクラスを担当する野中直広氏(58)で、2013年からJTTAの女子ホープス(育成クラス)ナショナルチームのコーチを務め、2018年、19年は同監督として東アジアを制覇したほか、女子代表アドバイザーや同ジュニアコーチなども歴任してきました。

野中新監督は、「パラ卓球との関わりは初めてになるが、選手を理解し、身体も理解したうえで、どこまで追い込み、技量を伸ばせるかを考えていきたい。新人発掘にも取り組み、これから卓球を始める子も対象に幅広く行っていきたい」と意気込みを語りました。

もう一人は、森薗美咲氏(29)で立位クラスの監督に就任しました。自身も日本代表として2009年、13年の世界卓球選手権で活躍したほか、長く日本トップ選手として活躍後、21年から女子ジュニア・ホープスナショナルチームのコーチ経験もあります。森薗氏自身、まだ現役選手としても活動しています。

「不安もあったが、宮崎さんから『パラ卓球の普及や発展、世界で活躍する選手の指導を』というお話をいただき、自分の経験を生かせればと引き受けた。第一線は退いているが、現役選手をやりながらの指導は選手と同じ目線からアドバイスができるのではないかと思う」と森薗新監督は力を込めました。

宮崎氏は、指導経験豊富な野中氏について、「車いすに乗っての指導も必要かと思うが、よい技術指導ができると思う」。また、世界で活躍した選手経験もある森薗氏には、「選手個々の特徴を一目でつかみ、『こうすれば伸びる』などを指導してほしい」と期待を寄せました。

宮崎氏はまた、「(パラ卓球をよく知る前監督の)新井氏を強化アドバイザーとして指導を仰ぎながらやっていきたい」と話し、今後の強化策としていくつかポイントを挙げています。

一つは、「合宿でのオリパラの交流」です。両チームのナショナルトレーニングセンター(東京・北区)での合宿の日程が重なったときに、4つある卓球台のうち1台をパラ卓球が使い、オリパラ選手が並んで練習を行うことなどから始めるそうです。「今までは一切なかったので、まずは数時間でも触れ合える時間を設け、楽しい雰囲気でオリの選手にパラを理解してもらう時間を作っていきたい」と話しました。

また、オリの選手強化のノウハウをパラに生かせる分野として「対戦相手の研究やビデオ分析の方法」を挙げました。オリでは4,5名のデータ分析班が常駐していることから、映像の撮り方や分析、それを技術に生かすポイントなどを合宿等でレチャーしていくと言います。

他に、監督やコーチが選手の母体に出向く「出張コーチ」も検討しているそうです。肢体不自由のパラ選手は移動の難しさや仕事の問題もあり、合宿に参加しにくい選手もいるのが現状です。そこで、監督自らが各選手の母体を訪ね、パラ卓球の指導について試行錯誤している母体との連携も高めながら強化を図っていきたい考えです。

課題である「新人発掘」についても、事前告知もしっかり行いながら各地で開き、卓球未経験者にまで対象を広げ、実施していきたいと話しました。

前代表監督の新井氏は、「日本代表といっても育成レベルの選手も多かったので、ジュニアの指導経験豊富な野中さんや、選手としても活動している森薗さんに指導いただくことで、パラ選手のモチベーションも高まり、強化につながるだろう。組織としてもパラは成長過程なので、情報戦略など協力いただけることで補強され、今まで手が届かなかったところに手を広げられる」と期待を口にしました。

パラリンピアンの岩渕幸洋選手(協和キリン)も、オリの選手との交流も計画されている新体制について、「同じ場所で練習させていただけることで、見て学べる部分があるし、吸収していきたい。強化への期待感は大きい」と話しました。

なお、パラリンピックの卓球は車いす、立位に加え、知的障害クラスもあります。こちらは現在、日本知的障がい者卓球連盟が統括していますが、宮崎氏は24年パリ大会後の組織統合も見据えながら、まずは肢体不自由者卓球の強化から始めたいと話しました。

「アフター2020」に「オリパラ一体」の新たな一歩を踏み出したパラ卓球。今後のさらなる活躍を、どうぞ応援ください。

(文:星野恭子)