「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(397) 車いすラグビー日本代表が意気込み。「22年の最終ゴールは世界選手権連覇」
昨夏の東京パラリンピックで銅メダルを獲得した車いすラグビー日本代表ですが、東京大会1年延期の影響により休む間もなく、次のパリ大会出場にもつながる世界選手権(デンマーク)を10月に控えています。東京大会で逃した悲願のパラリンピック金メダルをパリ大会でつかみ取るために、東京パラ以降も精力的に毎月の合宿を重ねるなか、東京パラにつづけて日本代表の指揮を執るケビン・オアーヘッドコーチ(HC)と代表候補選手たちが3月21日、オンラインで会見を行い、東京パラ以降の現状や今季の目標などについて語りました。
前回2018年の世界選手権(オーストラリア)で初制覇している日本は今年、前回王者として連覇に期待がかかります。オアーHCは会見でまず、銅メダルに終わった東京パラを、「ホームゲームでプレッシャーがあったかもしれないが、全体的に質の高いプレーはできた」と振り返りました。そこから1年後に迎える世界選手権について、「厳しい準備になるが、今年の最終ゴールは世界選手権連覇が目標」と掲げ、そのためには、「チーム全体で一貫性のある質の高いプレーが必要」と話しました。また、金メダルには、ライン(選手の組み合わせ)のバリエーションを増やすことも必要であり、若手選手発掘も課題に挙げました。
東京パラからHCを続投する理由について指揮官は、「金メダルがまだ獲れず、自分の役割が完了できていないこと。それに、自分のコーチングスタイルが日本チームにフィットしていると感じているし、チームの一員として温かく迎え入れてもらい心地よく感じていること」と話し、「パリでの金獲得に向け、選手がベストなパフォーマンスができるようしっかりサポートをつづけていきたい」と意気込みました。
また、池透暢キャプテンは連覇を目指す世界選手権について、「結果は置いておき、1試合ごとに成長して、その先を見据えて頑張りたい」と話し、エースの池崎大輔選手は「今までやってきたことをしっかりコート上で出す、それだけ。正直、一番難しいことだが、チーム一丸、ベンチもスタッフも一緒になってやれば、結果はついてくると思う。世界選手権連覇でも、(金を逃した東京)パラの悔しさは晴らせないが、ディフェンディングチャンピオンとして、日本の強さを示したい」と力を込めました。
選手権連覇、さらには悲願の金に向けて、指揮官からも、ベテラン選手たちからも挙がったのが、「若手の進化」です。なかでも名前が挙がったのが、次の二人です。
一人はハイポインターとして得点力が期待される橋本勝也選手(クラス3.5)です。東京パラに初出場後、「もっと上を目指したい。世界と戦える選手になりたいと思った」と強く思い、東京パラ後は有酸素運動を取り入れるなどトレーニングメニューを見直し、肉体改造と技術向上に取り組み、手ごたえも感じていると言います。自身2度目の出場となる世界選手権に向けては、「進化している部分を見せなければいけないし、今の練習内容によって自分自身に期待できる部分もある。世界選手権まであと数カ月、チームメートとコミュニケーションをとりながら、数少ない合宿で精度を上げていきたい」と目標を口にしました。
もう一人、ミドルポインターの新戦力として期待されるのが、白川楓也選手(クラス2.5)です。東京パラ代表を逃した悔しさから、「もっとうまくなりたい」と昨年12月、故郷の北海道から高知に移住し、池キャプテンとともに練習するなど練習環境から変化させて挑戦しています。元は器械体操の選手で長いリーチを生かしたパスワークでも期待されています。「世界選手権の代表入りを目指して頑張りたい」と意気込みます。
このように、車いすラグビー日本代表は、東京パラで活躍した選手たちもほとんどが代表候補選手として高いレベルを保ったまま、さらに新たに加わった選手たちとともに、日本代表12名の枠入りを目指し、切磋琢磨を続けています。
このあと、6月にカナダで開催予定の国際大会(カナダカップ)に出場を予定しています。コロナ禍の影響で、2019年9月のアジアオセアニア選手権以来、約2年9か月ぶりの海外遠征となります。10月の世界選手権に向けて、新生日本代表がどんな戦いを見せてくれるか、今から楽しみです。ぜひ、応援ください!
(文:星野恭子)