女子野球を無視する日本の野球は「スポーツ組織」と言えるのか?
プロ野球は日本シリーズ後も来日メジャーチームの話題が続く。社会人野球も日本選手権でトヨタが優勝(11月11日)。高校野球も来春からのタイブレーク制(延長戦一死満塁から開始)の採用を巡る話題が騒がれ、各地の大学野球の結果もふくめ、野球の話題は11月に入っても続いている。
が、そんななかで、女子野球の話題少ない(ほとんど報道されない!)のは寂しい。
2010年に開幕した女子プロ野球は今年も熱戦を続け、11月8日と15日には今季最後のビッグマッチ、日本シリーズ女王決定戦が、埼玉のアストライアと京都のフローラの間で行われた。試合結果は、第1戦は6対0、第2戦は8対7で、いずれもフローラが勝利。2014年度の女王に輝いた(女子プロ野球ホームページはhttp://www.jwbl.jp/)。
日本の女子野球は、現在W杯4連覇中で世界一の実力を誇る。が、注目度は低く、プロ創設時の2010年と翌11年こそ1試合平均1,500~1,700人の観客を集めたが、12年以降は約1000人減って1試合平均の観客は500~700人。
とはいえ女子(硬式)野球希望者は増えているようで、10年にわずか5校だった高校女子野球部が、現在は18校に増加した。
以前一緒にテレビ出演した下村文科大臣に、甲子園大会が男子のみの大会なのはオカシイ。スポーツ大会ならば男女平等に、女子高校野球も行うべきだと進言したら、やってる女子高生が少ないから、という答えが返ってきた。
この回答は、明らかに不十分。野球に限らず女子スポーツはすべて、男女平等の大原則に則り、まず環境を男女平等に整えるべきだ。
が、我が国ではスポーツ界の「女性差別」がまだまだ随所に存在する。柔道日本選手権は、男子は日本武道館で4月29日(昭和の日)に行われるのに、女子は別の日に横浜市営体育館で行われる。女子サッカーも、W杯優勝で、ようやく環境改善に向かったという。
なかでも野球は世界的にも最悪で、男女平等を押し進めるオリンピックですら野球は男子、女子はソフトボールと、奇妙なネジレ現象が存在する。野球も男子野球と女子野球が平等に(同じ組織で!)存在し、ソフトボールも世界的に、女子ソフトボールと同時に男子ソフトボールの普及をめざす。
そのことを、野球もソフトボールも人気が高く、レベルも高い日本から全世界に向かって発信し、日本球界は、もっと女子野球(や身障者野球)の発展に力を注ぐべきだろう。が、読売新聞社が主導権を握るプロ野球も、朝日新聞社が中心の高校野球も、毎日新聞社が字句になっている社会人野球も、女子野球(や身障者野球)の発展には、援助しようとしないばかりか、まったく見向きもしない。
女子野球や身障者野球の普及活動は、男子野球の発展にもつながるはずで、それをやらない男子のみの組織では「スポーツ組織」とは言えず、日本の野球は、新聞販売の宣伝と販促のみを目指す「見世物組織」と言われても仕方ないだろう。
また、スポーツ庁を創設し、スポーツ立国を戦略として打ち立てようとするのであれば、政府も、女子スポーツ(女子野球)を無視するスポーツ組織と呼べないような組織(野球組織)には、注意を喚起し、指導を行うべきだ。実力に疑問のある女性大臣を無理矢理登用し、実力以前の問題で失敗するくらい女性の活用に積極的な政府なら、スポーツ界の女性差別にも、当然メスを入れるべきである。
(玉木正之)
PHOTO by uwdigitalcollections (Women playing baseball Uploaded by nusumareta) [CC-BY-2.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/2.0)], via Wikimedia Commons