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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(395) 北京パラリンピックが閉幕。「大事なのは平和への希望」

46の国と地域から約560人のパラアスリートが参加して、3月4日から13日まで10日間にわたって行われた、世界最高峰の大会、第13回冬季パラリンピック北京大会が閉幕しました。

東京大会に続き世界的なコロナ下での開催となり、さまざまな制約のなかで戦った選手たち。さらには、直前のロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、さまざまに揺れ、世界平和を願いながらの大会となりました。あらためてスポーツがあたりまえにできる平和な環境のありがたさを実感するとともに、多様多彩な選手たちが躍動する姿に、互いの違いを認め尊重し合ったうえで、正々堂々、全力で競い合えることの尊さを思いました。

北京パラリンピックの閉会式より。聖火が消え、名残り惜しむような花火が会場を彩った(撮影:星野恭子)

今大会では6競技78種目が行われ、日本選手団は4競技に出場して、金4、銀1、銅2の計7個のメダルを獲得しました。

金メダルはアルペンスキー女子(座位)で村岡桃佳選手(トヨタ自動車)が3個と量産、クロスカントリースキー男子(立位)の川除大輝(日立ソリューションズJSC)も1個を獲得し、計4個は海外で行われた冬季パラリンピックでの日本最多を更新しました。ただし、総数7は前回平昌大会から3つ減となりました。ちなみに、国内開催を含めると、金メダルの最多獲得記録は1998年長野大会の12個です。

また、戦火に苦しむ母国を勇気づけようと、ウクライナ選手団は躍動。13日昼に行われたクロスカントリースキーのオープン10キロリレーでも金メダルに輝き、有終の美を飾りました。2走を務めたボブチンスキーは「みんながお互いを支え合い、今のウクライナのようです。きょうの勝利はウクライナの人たちのためのもの」と力強く語りました。なお、大会を通して金11個を含む計29個のメダル獲得は、同国の過去最多となります。

4日に行われた開会式で、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、平和を強く訴えるスピーチを行った、国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ会長。13日夜に行われた閉会式のスピーチでもその内容に注目が集まりました。

閉会式では直接的な言及はなかったものの、「国の違いや考え方、能力の違いはあるが、その違いはわれわれを分断するのではなく、結び付ける。一つになることで、希望が生まれる。共に生きることへの希望、調和への希望、そして大事なのは、平和への希望だ」など、世界の連帯や協力しあうことの大切さを訴えました。

その後、パラアスリートの熱戦を見守った聖火は静かに消え、集いの場は4年後へと引き継がれました。次回2026年大会はイタリアのはミラノ・コルティナダンペッツォ(イタリア)で行われ、閉会式の中で引き継ぎ式もありました。なお、夏季大会は2024年にパリで開催されます。

(文:星野恭子)