星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(56) 11.1~10.3
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトしたパラスポーツ・ピックアップ・シリーズ。今号は文化の日の3連休に世界各地で行われたイベントを中心に、まもなく日本国内で開催が予定されている国際大会のいくつかをご紹介しています。ふだんは見る機会の少ないパラスポーツの、世界最高峰の戦いを間近で見られる、またとないチャンスです。見て、聞いて、声援して、パラスポーツをぜひ体感してください!
また、来る11月8日(土)は、1964年東京パラリンピックの開会式からちょうど50年目の日。東京での2回目のパラリンピックが、もうあと6年後に迫っています。
■長崎発
・1日~3日: 国内最大の障害者スポーツの祭典、「第14回全国障害者スポーツ大会」が長崎県を舞台に開催された。「長崎がんばらんば大会」を愛称とした今大会には47都道府県と政令指定都市から、約5,500人の選手団が参加し、3日間で個人6競技、団体7競技、さらにオープン2競技が行われた。
全国障害者スポーツ大会(全スポ)は、2000年まで別々に開催されていた「全国身体障害者スポーツ大会」と「全国知的障害者スポーツ大会」が統合され、2001年に第1回大会が宮城県で開催された。以降、オリンピック終了後に開催されるパラリンピックのように、「全国国民体育大会(国体)」終了後に同じ開催地で開かれている。なお、第14回となった今大会は、障害者スポーツの管轄の移管に伴い、主催団体としても厚生労働省から文部科学省になった初めての大会となった。
大会の目的は、障がいのある人々の社会参加の推進や障害のある人に対する国民の理解を深めることにある。全国障害者スポーツ大会競技規則など国内だけのローカルルールに準じて行われ、誰もが参加しやすい種目の工夫などがなされている。今大会にも、パラリンピアンや先月24日に閉幕したばかりの仁川アジアパラ競技大会の日本代表選手などから、全スポで初めて競技会に参加する人までさまざまな選手が出場。それぞれが思い思いの目標に向かって、日頃の練習の成果を競った。
競技結果は、大会公式サイトで確認できる。
なお、次回、第15回大会は2015年10月24日から26日に、和歌山県での開催が決まっている。
■ブラインドサッカー
・2日: 「東北・北信越リーグ2014」の第2節が新潟聖籠スポーツセンターで開催され、3チームの総当たり戦3試合が行われた。新潟フェニックスファイヤーズが、F.C.長野RAINBOWに3-0、コルジャ仙台FCに4-0で勝利し、2勝をあげ、コルジャ仙台FCとF.C.長野RAINBOWは0-0で引き分けた。
また、今回は特別企画として、「関東リーグ2014」に参戦中の3チーム(Avanzareつくば、buen cambio yokohama、乃木坂ナイツ)との交流戦(6試合)やブラインドサッカー体験会も行われなども行われた。
なお、11月9日(日)には仙台市で、日本代表とブラジル代表の国際親善試合が行われる。これは、16日に東京・渋谷区で開幕する「ブラインドサッカー世界選手権」を前に、パラリリンピック3連覇中の世界王者、ブラジル代表は前回2010年世界選手権でも優勝し、連覇を目指して早めに来日し直前合宿を宮城県内で行うため、その一環で親善試合の開催が実現した。
自国開催の世界選手権でベスト4を目標に掲げる日本代表は、先月のアジアパラ競技大会(韓国・仁川)で銀メダルを獲得した勢いで、本番前に世界トップレベルと対戦する貴重な機会となる。観戦は入場無料で、小学生対象のブラインドサッカー体験会も予定されている。また、日本代表応援用巨大ジャージも掲示され、来場者はメッセージを書き込むことができる。世界レベルのプレイを間近に見るチャンスだ。
<国際親善試合>
日時:11月9日(日) ※小雨決行。荒天の場合は中止
会場:スポパーク松森 (宮城県仙台市泉区松森字城前122-1)
10時20分~ 選手ウォーミングアップ
11時30分~ オープニングセレモニー
11時50分~13時30分 キックオフ 【日本代表 対 ブラジル代表】
<IBSAブラインドサッカー世界選手権2014>
4年に一度の世界最高峰の大会。日本をはじめ、ブラジル、アルゼンチン、中国など、世界トップクラスの12チームが東京渋谷区に集結! 4チームずつ3組の予選リーグを経て、世界の頂点を争う。
日時:11月16日(土)~24日(月・祝)
日本代表の予選リーグの日程
11月16日(日)13:30 vsパラグアイ(大会開幕戦)
11月18日(火)19:30 vsモロッコ
11月19日(水)19:30 vsフランス
試合カードや時間帯で価格は大人500円~2,500円まで、高校生以下は無料~2,000円まで。
●ネット中継チャンネル (全試合生中継予定)
■陸上競技
・2日: 米国ニューヨークで「ニューヨークシティ・マラソン(NYCM)」が強風の吹き荒れる厳しいコンディションで行われ、車いすの部は安全のためにコースが約5km短縮されるという異例の状況で実施された。男子では、副島正純が1時間30分57秒で4位、洞ノ上浩太が同タイムの5位に入った。山本浩之は9位(1時間33分52秒)だった。優勝はオーストラリアのカート・ファーンリーで1時間30分55秒。
女子は土田和歌子が1時間44分04秒で3位に入った。優勝は1時間42分16秒をマークした、地元アメリカのタチアナ・マクファデンが優勝。2年連続で車いすマラソンのグランドスラム(⇒註)という快挙も達成した。マクファデンは終盤、強風にあおられ転倒するアクシデントに見舞われたが、後続に追いつかれることなく逃げ切った。2位はデンマークのマニュエラ・シャーで1時間43分02秒。
⇒車いすマラソンのグランドスラム: 同一年度内に世界4大マラソン(ロンドン、ボストン、シカゴ、ニューヨーク)の全レースで優勝すること。
なお、今週末9日(日)には大分市で「第34回大分国際車いすマラソン大会」が開催される。男子はNYCMで健闘した日本勢3選手に加え、現世界ランク1位のマルセル・フグ(スイス)、世界記録保持者のハインツ・フライ(スイス)などが世界トップクラスの選手が多数出場。また、女子はNYCMで上位3選手が再び顔を合わせることになっている。世界トップレベルの迫力あるレースを間近で体感できる貴重な機会だ。
なお、当日はインターネットによるライブ中継も行われる(9日午前10時50分頃から)。
<第34回大分国際車いすマラソン大会>
日時:11月9日(日)
会場:大分県庁前をスタートし、大分市営陸上競技場をフィニッシュ地点とする大分市内特設コース。
フルマラソン(42.195km)とハーフマラソン(21.095km)が行われる。
11時00分:フルマラソンスタート(大分県庁前)
11時03分:ハーフマラソンスタート(大分県庁前)
14時20分~:閉会式・表彰(大分市営陸上競技場)
■パラサイクリング
・3日: 手でクランクを漕いで進むハンドバイクのレース、「第4回テレウスカップ」が下総運動公園(千葉県成田市)で開催された。今大会には、2011年の初開催から実施されている、車いすの前部に駆動輪などを取りつける、ハンドバイク・アダプタータイプ部門と、一体型のハンドバイク・レースタイプ部門に加え、新たにロードバイク(自転車)部門も実施された。各部門とも、実走タイムに障がいクラスごとに決められた係数を掛けた「換算タイム」によって順位が決定された。各部門の優勝者は下記の通り。
アダプタータイプ部門(7.5km=1.5kmx5周回)
佐藤遼太郎(福島)/19分22秒898
レースタイプ部門(15.0km=1.5kmx10周回)
木村潤平(東京)/28分22秒139
ロードバイク部門(15.0km=1.5kmx10周回)
山田高(千葉)/28分52秒155
なお、全選手の結果は大会サイトで公開されている。
エントリーした36選手の中には、パラサイクリングのパラリンピアンや世界選手権の日本代表選手、先月開催されたアジアパラ競技大会(韓国・仁川)のメダリスト、奥村直彦選手なども含まれていた。そうした実績のある選手にはローカルルールでハンディが与えられ、できるだけ公平な中で競技が行われるよう工夫されていた。
【参考写真:仁川アジアパラ競技大会で、レース直前に愛車(レースタイプ)を調整中の奥村直彦選手=2014年10月22日/韓国・仁川市内パラサイクリング特設会場】
ハンドバイクは、道路交通法上は自転車扱いとなり、公道上を走ることは合法だが、飲酒運転などは違法となる乗り物。パラリンピックでは2004年のアテネ大会で男子の公開種目として採用され、08年北京大会よりパラサイクリング競技の男女正式種目なった。また、マラソン大会でも車いす部門などと並んで実施されている大会もあり、例えば、2日に行われたニューヨークシティ・マラソンでも男女合わせて約70選手が出場している。
(星野恭子/文・写真)