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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(390) 北京パラリンピック前、最後の実戦。菅平高原でアルペンスキー大会

2月1日から4日にかけて、パラアルペンスキーの国内最高峰の大会、「2022ジャパンパラアルペンスキー競技大会」が菅平高原パインビークスキー場(長野県上田市)で開催されました。男女障害クラス別にスーパー大回転(2試合)、大回転(同)、回転(1試合)が行われ、それぞれの優勝者が決定しました。開幕まで1カ月を切った北京パラリンピックの日本代表推薦内定選手たちも多数顔をそろえ、最後の実戦機会で自身の調子をたしかめていました。

パラリンピック5大会連続出場し、通算メダル5個(銀4、銅1)を獲得している森井大輝選手。6大会目となる北京大会で、悲願の金メダルを目指す

新型コロナの影響で選手たちは今季、思うような大会出場ができていません。1月の世界選手権も感染リスクを考え、回避した選手も多く、北京大会出場に必要なポイント獲得が必要な選手もいたため、例年3月に開かれる今大会も日程を前倒しして開催されました。

パラリンピックのアルペンスキーは、オリンピックと同じく個人5種目(滑降、スーパー大回転、複合、大回転、回転)が行われ、それぞれ座位(チェアスキー)、立位、視覚障害の3カテゴリーに分かれて競います。日本選手は過去のパラリンピックで、男女とも複数のメダルを獲得しています。

日本が誇る男子座位チームの3人。左から、森井大輝選手、鈴木猛史選手、狩野亮選手

男子座位で高速系を得意とし、過去2大会での金メダリスト、狩野亮選手(マルハン)はスーパー大回転1戦目で優勝、2戦目も2位に入りました。「レースでしか得られない感覚がある。自分なりに課題をもってレースに臨み、収穫のあるレースだった」と順調な調整ぶりを示しました。

また、同じく男子座位で技術系を得意とする鈴木猛史選手(KYB)は最終日の回転で優勝を果たし、「狙っていた種目で、ほっとしている」と笑顔。今季は昨年11月、海外遠征から帰国直後に新型コロナ検査で陽性反応が出たため、今大会が今季初戦となりました。無事にポイントを獲得し、北京パラへの出場資格も得て、「ここで満足せず、残り期間も練習をがんばり、北京に合わせたい」と大舞台を見据えていました。

また、男子座位日本のエース、森井大輝選手(トヨタ自動車)は大会前に新型コロナウイルスの3回目のワクチン接種を受けた影響で大会3日目から出場となりましたが、大回転(第2戦)で貫録の優勝を果たすなど、順調な調整ぶりを見せました。「今できる環境で、最大限の努力をしようというのが、今季の僕のテーマ。最終合宿で、調子を上げて北京本番に臨みたい」と力強く語りました。

北京大会で6度目のパラリンピック出場となるベテランは、「僕のキャリアで唯一獲れていないのがパラリンピックの金メダル。誰よりも思いは強い」と、目標を口にしました。

また、男子立位では全5種目を制した東海将彦選手(トレンドマイクロ)はここ数年、ケガの影響もありましたが、まずは北京出場資格ポイントを得て、ほっとした表情。今季は大会出場機会が少なく、「調子のピークを合わせることは難しい」としつつ、ほとんど動かない左足首をサポートする装具の調整も順調に進んでいる様子で、「北京までにやれることは限られているが、最後にしっかり合わせたい」と前を向いていました。

男子立位のエース、東海将彦選手。初出場だったトリノ大会で銀メダルを獲得し、ソチ大会にも出場。2大会ぶり3回目出場となる北京大会でも活躍を誓う

女子座位では田中佳子選手(Tポイント・ジャパン)も無事に、北京パラへの出場資格ポイント獲得。その後の大回転では、「思い切って滑り、練習でやっていたことを実践できた」と明るい表情。ソチ大会から2大会ぶりのパラリンピックとなる北京に向け、「残り1カ月、国内での調整で1本1本集中して高めていきたい」と決意を新たにしていました。

2006年トリノ大会から3大会連続出場し、北京大会で2大会ぶり4度目のパラリンピック出場を目指す田中佳子選手

女子立位で初のパラリンピック出場を目指す神山則子選手(テス・エンジニアリング)は左半身にまひがあり、ストックは右手一本で滑ります。本格的にパラスキーを始めてから経験はまだ浅いものの、「合宿ごとに、1レースごとに自分なりには改善できている。リミットは設けず、進化したい」と力強く語りました。

北京大会でパラリンピック初出場を目指す神山則子選手。「スキーのスピード感が好き」

なお、2018年平昌大会でメダル5個を獲得し、北京大会での活躍も期待される女子のエース、村岡桃佳選手(トヨタ自動車)は1月中旬、練習中の転倒により右ひじを負傷したため今大会は欠場しましたが、日本障害者スキー連盟によれば、リハビリを順調にこなしているそうです。早期の回復と北京大会での活躍を祈りたいと思います。

北京パラは3月4日から13日までの10日間で開催されます。パラアルペンスキー日本代表チームはこの後、国内で最終合宿を行い、決戦の地へと出発の予定です。どうぞ応援ください!

▼「2022ジャパンパラアルペンスキー競技大会」結果
https://jps-ski.com/result/game_type/para-alpine

(文・写真:星野恭子)