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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(54) 10.15~10.21

 国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトしたパラスポーツ・ピックアップ・シリーズ。4年に一度、アジアを舞台にしたパラスポーツの祭典、「アジア・パラ競技大会」が韓国・仁川(インチョン)で18日から開幕しました。2016年リオデジャネイロ・パラリンピック、そして2020年東京大会への道を見据え、各競技、各選手がそれぞれの目標に向かって挑んでいます。現地から熱戦の模様をリポートしています。一部競技はインターネットでのライブ放送もあります。百聞は一見にしかず!

 

■韓国発

・18日: パラスポーツのアジアでの祭典、「アジア・パラ競技大会」が韓国・仁川(インチョン)を舞台にアジア41の国と地域から約4,500人が集い、開幕した。24日までの7日間で23競技が行われる。日本からは選手285名が22競技に参加、総計120個のメダル獲得を目指す。

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【旗手の高桑早生選手(陸上競技)を先頭に入場行進する日本選手団=2014年10月18日/文鶴スタジアム(韓国・仁川)/撮影:星野恭子】

 

 “Impassible Drives Us(不可能が我々を動かす)”がスローガンの開会式は仁川市内の文鶴スタジアムで行われた。入場行進は韓国のアルファベット順に行われ、車いすテニスの世界チャンピオン国枝慎吾選手が主将を務める日本選手団は、陸上競技の高桑早生選手(慶應義塾大学)を先頭に25番目に登場した。

 

 日本のすぐあとに入場したのは選手団9名の北朝鮮チーム。アジア・パラ大会としては前身のフェスピック競技大会(⇒註)を含めて初めての参加となる同チームがスタジアムに登場すると、ひときわ大きな歓声が響き、メインスタンド前ではしばらく立ち止まり、ほぼ満員の客席に向かって手を振り、声援に応えていたのが印象的だった。

 

 開会式は華やかなライトワークや花火と音楽で演出され、「必要は発明の母であり、人間はチャレンジし、克服することに情熱を燃やす」というテーマが表現された。ただ、選手入場のアナウンスは人気DJが務めたり、Kポップ歌手のライブが盛り込まれたり、また、ナレーションのほとんどが韓国語のみで行われた。場内のスクリーンには英訳が流れたが、文字が小さく読みにくかったこともあり、開会式の演出は何となく韓国国内向きの印象が残り、実際、ライブ終了後には開会式途中で席を立つ観客も目立った。

 

 こうした演出の背景には先に行われたアジア大会(9月19日~10月4日)に比べ、韓国内での今大会の認知度はもちろん、パラリンピックという言葉さえ、あまり浸透していないという事情もあったのかもしれない。2年後には冬季パラリンピックとしては韓国で初めてとなる平昌(ピョンチャン)大会が控えており、今大会を国民向けの貴重なピーアールの機会ととらえたのではないか。平昌大会開催を控える韓国の取り組みは、2020年東京大会に向けた日本にも参考にもなるはずだ。今後にも注目したい。

 

なお、日本選手団の競技結果については、日本パラリンピック委員会(JPC)の公式サイトから確認できる。

 

⇒フェスピック大会: 日本の呼び掛けで始まった極東・南太平洋地域の身体障がい者のスポ-ツ大会で、1975年に第1回大会が大分で開催されている。パラリンピックとは異なり、対象地域の国々に対する障がい者スポ-ツの振興やスポーツを通じての社会参加を重要な目的のひとつとしていた。

 2006年マレーシアのクアラルンプールで行われた第9回フェスピック競技大会を最後に、アジア・パラリンピック委員会が主催する、「アジア・パラ競技大会」として引き継がれた。

 

 ●インターネットでのライブ放送(一部競技や試合のみ)

・19日: 一部競技を除き、この日から競技が本格的に始まった。陸上競技では午前の部からともに「アジア3冠宣言」をしている2選手が幸先のよいスタートを切った。まず、男子5000mT11クラス(全盲)の和田伸也(大阪府視覚障害者福祉協会)が16分20秒48の大会新記録で優勝した。和田の金メダルは今大会の日本選手団の第1号。1500m(20日)、800m(23日)でも金を目指す。また、T42(大腿切断など)の山本篤(スズキAC)も男子走り幅跳びで5m82cmをマークして優勝。100m、200mとの3冠に向けて“スタートダッシュ”を決めた。

 

 マラソンが専門の和田は今大会の本命種目5000mを制し、「ほぼ設定どおりに走れた。1500m、800mにもつながる」と笑顔で振り返った。

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【男子5000mT11(全盲)で金メダルを獲得した和田伸也選手(左)と今木一充ガイド=10月19日/文鶴スタジアム(韓国・仁川)/撮影:星野恭子】

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【男子走り幅跳びT42(大腿切断など)で金メダルを獲得した山本篤選手のジャンプ=10月19日/文鶴スタジアム(韓国・仁川)/撮影:星野恭子】

 

 他に、男子1500mT12(弱視)で堀越信司(NTT西日本)が15分06秒56の大会新で金メダル、女子1500mT20(知的障害)でも、豊嶋眞樹子(ファッションセンターしまむら)5分01秒30の大会新で優勝するなど、好記録に沸いた。

 

 競泳でも、男子50m自由形S11(視覚障害)は木村敬一(日大大学院)が優勝したほか、選手団最年少16歳の池愛里(東京成徳大高)が女子50m自由形S10(運動機能障害)で金メダルに輝くなど、メダル獲得を重ねた。

 

 世界ランク4位のウィルチェア(車いす)ラグビーは今大会から競技に採用されたため、大会初代王者を目指す。日本のほか、韓国、マレーシア、インドネシアが参加するなか、日本はマレーシアに54-13、インドネシアに46-10と快勝。アジア初代王者に向けて上々の発進。

 

 一方、初戦から苦しい戦いを強いられた競技もあった。ロンドン・パラリンピック金メダルのゴールボール女子は同銀メダルの中国に2-1で敗れた。前半序盤に2点を先行され、後半終了直前に1点を返した展開に、江黒監督は「中国は1勝の重みを知っている。ただ、諦めず1点を返せたのは大きい」と振り返り、次戦以降の巻き返しを誓った。

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【中国選手の強烈なボールを防ぐ日本の守備=10月19日/仙鶴国際アイスリンク/撮影:星野恭子】

 17日から先行して競技が始まった車いすバスケットボール男子では1次リーグA組の日本は初戦(17日)の韓国戦を58-59の1点差で落とす苦しいスタートだったが、18日の台湾戦は92-33で、19日のイラクに75-24とともに大勝し、通算成績を2勝1敗とした。

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【車いすバスケットボール男子は台湾戦で圧勝=10月18日/三山ワールド体育館/撮影:星野恭子】

 

・20日: アジアパラ大会3日目。陸上競技では朝から小雨が降る肌寒いコンディションのなか、T11(全盲)の和田伸也も男子1500mで4分20秒45をマークして優勝、今大会2つ目の金メダルを獲得した。

 

 競泳の男子100m自由形S11(視覚障害)は木村敬一(東京ガス)が1分3秒20で金メダルに輝き、前日の50mに続く2冠。女子100m自由形S10(運動機能障害)では、日本選手団最年少の17歳、池愛里(東京成徳大高)が銀メダルなど、メダルラッシュがつづく。

 

 車いすバスケットボール男子では1次リーグA組の日本がアラブ首長国連邦(UAE)に88-27で圧勝し、通算3勝1敗の同組2位で準決勝(22日)進出を決めた。

 

●日本選手団の結果詳細

【リンク先: http://www.jsad.or.jp/news/detail/20141020_000388.html 】

 

・21日: アジアパラ大会4日目。陸上競技ではT42(大腿切断など)の山本篤が男子100mで12秒81のアジア新記録をマークして、目標の3冠に王手をかけた。冷たい雨の降るコンディションのなか、今大会本命だった100mでスタートでは出遅れるも落ち着いて加速し、ラスト20mで先頭に立つ快走を演じた山本は日の丸を掲げて笑顔でガッツポーズ。だが、「まだ、(3冠まで)あと一つある。ほっとできるのは200mで勝ってから」とすぐに表情を引き締めた。

 

 同じく3冠を目指すT11(全盲)の和田伸也も男子800m予選を1位で通過、決勝(23日)に進出し、王手。日本選手団旗手の高桑早生は、同女子100mT44/47(下腿切断などと上肢切断など、足と腕の障がい者の混合)で銅メダルに終わり、「金メダルを目指し、4年間努力してきたが、銅メダルで悔しい。この経験を、リオ、そして東京につなげたい」と涙を浮かべながらも前を向いた。

 

 車いすテニスの男子ダブルスでは日本選手団主将の国枝慎吾(ユニクロ)、真田卓(埼玉トヨペット)組が決勝に進出した。車いすバスケットボールはこの日から女子のリーグ戦が始まり、日本は初戦でイランに95―14で快勝した。

 

 視覚障害者5人制サッカーは、前日に3-0とタイに快勝した日本がアジア強豪の中国と対戦、持ち味の守備力を存分に生かし、0-0で引き分けた。主将の落合啓士(ブラックロック・ジャパン)は中国のボール保持率が高く攻め込まれるシーンも多かったが、「作戦通り。持たれているのでなく、「持たせている」という感覚。しっかり守れた」と話し、2度のペナルティーキックをセーブし、ピンチを救ったゴールキーパーの安部尚哉は、「練習してきた通り、落ち着いて対応できた」と振り返った。22日には体格で勝るイランとの一番を迎える。

 

 ウィルチェア(車いす)ラグビーは、世界ランク4位の日本が韓国を60-32で圧倒し、4チームのリーグ戦をトップ通過。アジア初代王者の称号に王手をかけた。この日も21得点を挙げたエースの池崎大輔は、「今大会には若手の育成という目的もある。『世界』を経験してもらえるいい機会。選手交代を重ねながら試合を進め、いい手応えを感じている」と話し、今大会でのアジア制覇はもちろん、パラリンピックの2016年リオデジャネイロ大会、そして2020年東京大会をも見据えた強化も含めたチームの姿勢を口にした。決勝(22日)で再び韓国と対戦する。

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【韓国選手の投げたボールのカットを狙う池端大輔選手=10月21日/仙鶴体育館/撮影:星野恭子】

 

日本選手団の結果詳細

 

 大会は24日まで熱戦が繰り広げられる。

 

■東京発

・15日: パナソニックは国際パラリンピック委員会(IPC)と1業種につき1社に限られる「ワールドワイドパートナー」としてスポンサー契約を結んだと発表した。パラリンピックのロゴマークや称号を使い、自社製品の広告宣伝を世界中で行えるというもので、同契約を結んだ日本企業はパナソニックが初めてになる。契約期間は東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までの6年2カ月。

 

(星野恭子/文・写真)