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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(384)約1000日に迫った2024年パリ大会のメダル種目が発表。女性、重度障害選手の参加比率が増加

12月2日に「開幕まで1000日前」を迎えた2024パリパラリンピック。約2週間前の11月19日には国際パラリンピック委員会(IPC)が同大会で実施するメダル種目と出場選手枠などを発表しました。

出場選手数は今夏に行われた東京パラリンピックと同等で、最大4,400人、実施競技数も同じ22のままで、大会規模は変わりませんが、メダル種目は、障害クラスの入れ替えや細分化などにより、539から549と10種目増えて過去最多となります。

増えたのは主に女子種目とより重度な障害クラスの種目で、その分男子の種目が一部除外されたり、参加枠数が減らされるなど、IPCが近年、目指している大会の形へと、パリ大会でさらに一歩近づくこととなりました。IPCはできるだけ男女の参加比率を同等に、また、より重い障害のある選手の参加比率を上げることを目指しています。

女子の実施種目は過去最多となる235で、東京大会に比べて8種目増えました。パリ大会の20年前にあたる2004年アテネ大会の女子のメダル種目数は183で、28%増となっています。

メダル種目増加に伴い、女子選手の出場枠は少なくとも1,859人となり、全体の約42%。加えて、ジェンダーフリー枠が339あるため、さらに割合が高まり、男子の出場数に近づく可能性もあります。今夏の東京大会より77人多く、2000年シドニー大会の女性参加者数990名からは倍増しました。

また、より重度な障害で、多くのサポートを必要する選手の種目については、例えば、重度障害を対象とするボッチャで大きな変化がありました。これまで、個人戦は4つの障害クラスごとに男女混合で実施されていましたが、4クラスともすべて男女別の競技に変更され、メダル種目数は8で、倍増します。これに、従来の団体戦3つが加わり、メダル種目数は東京大会の7からパリ大会では11に増えます。

視覚障害を対象とする柔道も大きく変わります。これまで男女・体重階級別に全盲から弱視まで障害の程度の異なる選手が一つのメダルを争っていましたが、パリ大会では全盲(J1)と弱視(J2)の2クラスに分かれ、それぞれのメダルを競う形式に変わります。

さらに、体重階級の区分も変わり、これまで男子7、女子6あった階級数がパリ大会から各4つに統合されます。それぞれJ1とJ2が行われることになり、メダル種目数は13から16へと増えることになります。

体重区分についてはまだ見直しの可能性があるようですが、もし、このまま確定すれば、選手によっては大きな影響を受け、強化プランを組み直す必要も出てきます。例えば、東京大会で銅メダルを獲得した瀬戸勇次郎選手は男子66㎏級でしたが、原案のままなら60㎏級か73㎏級への階級変更が必要となります。

他に、近年、パラリンピックに採用された新競技も軒並み、種目数が増やされました。東京大会でデビューしたバドミントンは2つ増えて16種目に、テコンドーも体重階級が増え、種目数は6から10に、選手枠が66%増となります。

2016年リオ大会からの新競技、カヌーとトライアスロンの種目数もそれぞれ9から10、8から11へと増えることになります。

逆に、規模が縮小された競技もあります。例えば、陸上では男子の種目数が3つ減ったほか、いくつかの種目が入れ替えられ、出場選手枠数も減っています。日本勢の影響としては、東京大会で佐藤友祈選手が金メダルを獲得したT52(車いす)の1500mが除外となりました。残る400mで2連覇を狙うほか、新たに100mへの参戦も予想されます。また、永田務選手が銅メダルを獲得した男子マラソンT46(上肢障害)も除外となりました。

水泳では、いくつかの個人種目、男女別のリレーが除外された一方、男女混合のミックスリレーなどが増えました。

■影響必至。団体競技で参加国枠数減へ

IPCでは、全参加人数枠を4,400と設定しているため、個人競技で参加選手枠が増えた分は団体競技で調整することになり、パリ大会から大きな変更が加えられました。

団体競技の出場枠数はすべて8カ国に統一されます。車いすラグビー(男女混合)、ブラインドサッカー(男子のみ)、シッティングバレーボール(男女)はもとから8カ国ずつですが、そのほかの競技では参加国数が減少します。

なかでも大きな影響を受けるのは、日本代表が東京大会で銀メダルを獲得した男子車いすバスケットボールで、12カ国から4カ国減となります。また、車いすバスケ女子とゴールボール男女も2カ国減となります。

競技によって多少規定は異なりますが、出場権を得るには世界選手権上位や大陸別選手権優勝などが目安となります。開催国枠がなくなる日本にとっては出場へのハードルがかなり高まったといえます。

出場権を狙う目標大会を明確にし、選手選考も含めて計画的な強化体制の構築が必要でしょう。

■「パラリンピック・ムーブメントの目標2つを達成」

IPC会長のアンドリュー・パーソンズは、今回発表された2024年パリ大会の競技概要について、「女性と(重度な障害で)よりサポートを必要とする選手の競技機会が増えることになり、パラリンピック・ムーブメントの2つの目標を達成できます。団体競技を8チームに統一することで試合形式も統一できます。予選試合数も減らすことができ、主催者側の効率性が向上するとともに、男女平等の機会提供も促進されます」とコメント。

さらに、こうしたメダル種目と参加枠数の調整にはかなり複雑な作業であり、「関わったすべての国際連盟を大きく称賛したい。ここ数年で大きな進歩を遂げることができました」と根回しや準備が必要だったことをうかがわせました。

実際、競技によって引きこもごもの変更となり、影響を受ける選手も少なくありません。あと1000日を切った今、明確になったターゲットに向けて早急な対応を期待し、ひきつづき応援していきたいと思います。

(文:星野恭子)