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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(53) 10.6~10.13

 国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトしたパラスポーツ・ピックアップ・シリーズ。今号はいよいよ18日に開幕する「アジアパラ競技大会」の選手団結団式のほか、ウィルチェアラグビーの国際親善試合の様子などをリポートしています。アジアパラ大会については、テレビでの中継放送はほとんどなく残念ですが、インターネットでのライブ中継は予定されているようです。

 また、私自身も韓国・インチョンに飛び、次号で現地リポートをお届けする予定です。どうぞお楽しみに。

 

■東京発

・13日: 韓国・インチョンで18日に開幕する「インチョン2014アジアパラ競技大会」に出場する日本代表選手団の結団式が千葉県成田市内のホテルで行われ、主将を務める車いすテニスの国枝慎吾(ユニクロ)、旗手を務める陸上競技の高桑早生(慶応大)ら、14日に成田空港から出発する選手団約100名が出席した。なお、日本選手団は史上最多の選手285名、役員・スタッフ191名の計476名。

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【アジアパラ競技大会での健闘を誓ってガッツポーズ。左から、旗手の高桑早生選手、大槻洋也団長、主将の国枝慎吾選手】

 

 アジアパラ大会としては4度目の出場となる国枝は決意表明のなかで、「日本代表の誇りを胸に、フェアプレイ精神のもと、この台風に負けないような旋風をインチョンの地で巻き起こしてきたい」と話し、選手たちには「2016年のリオ、そして2020年の東京でのパラリンピックに向けて、まずはこのアジアパラ大会をがんばろう」と呼びかけた。

 

 また、旗手を務める高桑は、鳥原光憲日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会会長から大槻洋也日本選手団団長の手を経て、団旗を受け取った。高桑は「旗手に選ばれ、大変光栄に思うとともに、選手団の先頭に立って歩くことには非常に責任感を感じている。私個人としては、アジアパラは2回目ですが、前回は非常に悔しい思いをしたので、今回はさらに成長した姿を多くの人に見ていただけるよう精一杯がんばり、胸を張って帰ってこられるような結果を残してきたい」と意気込んだ。

 

 大槻団長は、「いままでにない大選手団になる。競技では最高のパフォーマンスを見せることとともに、各国選手団との交流を深めることも役目。プレイにも国際交流にも選手団としての誇りをもって参加してほしい」と呼びかけた。また、メダル獲得数の目標は「メダル3種合計で120個」と話した。ちなみに、前回広州大会では日本は103個のメダルを獲得している。

 

 大会は18日に開会式が行われ、24日までの7日間で全23競技が行われる(日本は22競技にエントリー)。アジア41カ国から選手4500人、役員1500人の計約6000人が集う予定になっている。インターネットでのライブ放送も予定されている。

■ウィルチェア(車いす)ラグビー

・12日: 世界ランク2位のカナダ代表を招き、10日に開幕した国際親善試合、「2014ジャパンパラウィルチェアーラグビー競技大会」の決勝戦が行われ、カナダ代表Aが接戦の末、56-54で日本代表Aを下し、金メダルを獲得した。また、3位決定戦では日本代表Bがカナダ代表Bを52-45で退け、銅メダルを獲得した。

 

「ベスト・オールスター・チーム」賞には、M.ビレツキー(カナダA)、P.ダジャネース(カナダB)、池崎大輔(日本A)、Z.マデル(カナダA)の4選手が選ばれた。

 

 優勝したカナダAのキャプテン、Z.マデルは、「優勝できてうれしい。日本は大会を通してとてもいいプレイをしていたが、決勝戦では私たちもとてもいい試合ができ、本当に楽しかった。日本とは以前も戦ったことがあるが、とても強いチームだ。ラグビーをすごく楽しんでいるし、だから試合も面白くなるのだと思う。来年もまた、この大会に戻ってきたいと思う」とコメントした。

 

 一方、日本Aのキャプテン、官野一彦は僅差での準優勝という結果にも、「内容は不満」と語り、2年後に迫るリオ・パラリンピックへの課題を口にした。「カナダは勝ちグセがある。つまり、ミスをしないし、大事な場面で力を発揮できる。日本も爆発力はあるが、競った試合でそれが維持できるかというと、まだそのレベルではない。最近は公費での支援をいただき、海外遠征にも行かせてもらっているなかで、当たり前に勝っていけるようになれば延びていくと思う。勝つこと、そしてメダル獲得をチームでしっかり意識していくことが大事」と話した。

 

 なお、ジャパンパラ競技大会は日本パラリンピック委員会(IPC)と競技団体が主催する国内最高峰の大会で、ウィルチェアラグビーとしては今回が初開催となる。日本代表の強化を目的に、原則として海外チームとの対戦形式で行われ、来年も開催される予定。ウィルチェアラグビーの普及も目指しており、今大会でも3日間を通して現役選手による会場内での解説放送やウィルチェアラグビー体験会なども行われ、観客からも好評だった。

 

 日本代表は18日に開幕するインチョン・アジアパラ競技大会に出場し、韓国、マレーシア、インドネシアとアジアの王座をかけて対戦する予定。

■ドイツ発

・7日: 国際パラリンピック委員会(IPC)は、2016リオ・パラリンピック大会でデビューするパラトライアスロンの実施カテゴリーについて最終決定を発表した。パラトラアスロンでは現在、障害の内容や程度に応じて男女別にそれぞれ計5つのカテゴリーが実施されているが、リオ大会では男女合わせて全6つに絞られることになり、男子がPT1(座位=車いす)、2(立位)、4(立位)、女子がPT2、4、5(視覚障害)に決まった。

 

 今回の発表では各カテゴリーが選択された詳細な理由などはなかったが、さまざまなパターンが検討され、最終的に男女の実施数を合わせるため、一部のカテゴリーを男女で分けるという措置がとられたようだ。

 

 パラリンピックは選手間の公平を期すため障害別にクラスを細かく分けて実施する競技が多いため、授与されるメダル数が多すぎるといった指摘が以前からあった。また、年々、参加国が増え、大会の実施規模も大きくなっているため参加選手数の上限も検討課題とされてきた。そこで、例えば、全盲と弱視クラスが統合されるなど、実施種目やクラスの見直しが大会ごとに行われており、今回のパラトライアスロンでの実施種目の絞り込みもその一例だ。

 

 こうした種目の絞り込みや入れ替えはオリンピックなどでも行われるが、パラリピックの場合はより頻繁であり、また、元々競技人口が少ないので、大会直前になってエントリー数が少ないために競技不成立というケースも少なくない。「自分の種目は実施されるのか」といった不安は日々、つきまとい、また努力が報われない結果になることもある。

 

 今回のパラトライアスロンの実施カテゴリー決定を受け、日本のパラトライアスロン強化指定選手のひとりで、実施が決まったPT4の古畑俊男選手がコメントを寄せてくれた。

 

●古畑俊男選手のコメント

「今回の決定に関しては、絞ったIPC側にも苦悩があったことは推測できる。そういう意味では、決定に関して、細かな詳細を求めても選手側に納得のいく説明は帰ってこないだろう。これがパラトライアスロンに限らず、パラリンピック競技全体に係る難しさであり、選手にとっては酷なところだと思う。これらを踏まえても、リオデジャネイロ・パラリンピック出場に向けて頑張ってきた選手の心境を想うと、やはりやり切れない気持ちは残る。しかし、これで全て終わりではない。カテゴリーに関する件は、その時々のパラトライアスロンを取巻く環境で変更が予想される。まして、私たち選手には(2020年の)東京という大舞台が控えている。今後もそこに向かって、それぞれの選手は準備していく必要があると思う。(男子PT4の実施決定については)リオ出場のチャンスが与えられただけでも喜ぶべきだろう。ただ、当初想定していた乗り越えるべき『山』が高くなってしまった。このことをしっかり受け止めて、頂上に向かって登っていかなければならないと、あらためて覚悟しております」

 

 まだ同日、IPCはさらに、ベルリンで理事会を開き、2020年東京大会で実施する16競技を決定したと発表した。今回初めてパラリンピック競技に採用されたバドミントンのほか、陸上、アーチェリー、ボッチャ、馬術、ゴールボール、パワーリフティング、ボート、射撃、シッティング・バレーボール、水泳、卓球、トライアスロン、車いすバスケットボール、ウィルチェア(車いす)ラグビー、車いすテニスの実施が決まった。

 

 なお、東京大会では最大23競技が行われる予定で、最終的な実施競技は来年2月までに確定する。今回、決定が保留された、カヌー、サイクリング、5人制(視覚障害者)サッカー、7人制(知的障害者)サッカー、柔道、テコンドー、ヨット、車いすフェンシングの9競技は今後、IPCに対して改めて採用を訴えていくことになる。

 

■ブラジル発

・6日: リオデジャネイロ五輪パラリンピックの組織委員会は、現在募集中の大会ボランティアへの応募がすでに180カ国から10万人を超えたと発表した。応募者数トップ5の国は、ブラジル、ロシア、中国、アメリカ、メキシコの5カ国。同組織委員会は、五輪、パラリンピックを通して7万人のボランティアが必要としており、応募は11月15日まで受け付けている。応募条件には2016年2月時点で18歳以上であること、大会期間中少なくとも10日間参加できることなどがある。募集内容や申込みはこちらから。

 

(星野恭子/文・写真)