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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(52)10.1~10.5

 国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトしたパラスポーツ・ピックアップ・シリーズ。

 今回も、パラスポーツの世界的な普及・発展を大きくリードしてきた国際パラリンピック委員会の設立25周年記念イベントの話題から、障害者ゴルフ選手権の結果速報など、盛りだくさんの内容です。

 また来月、東京・渋谷で開催されるブラインドサッカー世界選手権の観戦チケットの概要も発表になりました。日本代表をはじめ、各大陸予選を経たブラジルやドイツなどサッカー強豪国から全12チームが日本に集結。世界トップレベルの「足ワザ」を目の当たりにするチャンスです!

 

■ブラインド・サッカー

・3日: 日本ブラインドサッカー協会(JBFA)は、11月に開催される「IBSA(国際ブラインドスポーツ協会)ブラインドサッカー世界選手権2014」(東京・渋谷区)をJBFA主催大会としては初めて有料制で実施することとし、チケット販売についての詳細を発表した。会場には仮設スタンドが設置され、1試合につき約1300席が一般に発売される。価格は自由・指定席の別や試合時間帯、対戦カードなどで異なり、500円から2500円まで。一部、高校生以下は入場無料となる試合もある。一般発売は10月10日午前10時から、今大会のチケット販売専用サイトで受け付けが開始される。

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<参考>「2014日本選手権」でシュート放つ、たまハッサーズチームの黒田智成選手(右)。日本代表のエースとして、世界選手権での活躍も期待されている=2014年6月29日/味の素スタジアム(東京・調布市)/撮影:星野恭子

 

 JBFAは有料制に踏み切った理由として、ファンの利便性を考え、交通アクセスのよい東京・渋谷区の代々木フットサルコートを会場にしたこと、大会期間が11月16日から24日と長く、人件費を含めた必要経費を考慮したことなどを挙げている。

 

 チケット有料制の一方で、JBFAは今大会の大きな特徴として、障害の有無に関わらず試合が楽しめるようなバリアフリー環境の提供にこだわる。例えば、車いす用スタンドの設置や、視覚障害者などに向けた音声ガイドシステムによる実況中継やパンフレットの文字や写真を拡大して見られるタブレット端末の貸し出しなどのほか、視覚障害者の手引きや車いすのサポート、英語など言語通訳サービスなどを担う「リレーションクルー」と呼ばれるスタッフも会場に常駐させる予定だという。バリアフリー環境の詳しい内容や説明はJBFA公式サイトまで。

 

 なお、ブラインドサッカー世界選手権は1998年にブラジルで初めて行われ、2002年からは4年に1度の開催となり、今大会が6回目となる。日本で初開催となる今大会には日本のほか、地区予選を勝ち抜いた11カ国が来日する。日本は11月16日の開幕戦でパラグアイと対戦するほか、モロッコ(18日)、フランス(19日)との予選リーグを経て決勝トーナメント進出を目指す。大会概要やチケット販売などについては、大会公式サイトで確認できる。

 

・4日: 「関東リーグ2014」第4節の全盲クラスの2試合が慶応大学日吉キャンパス(神奈川県)で行われ、buen cambio yokohamaが山梨キッカーズを7-0で下し、Avanzareつくばとたまハッサーズは1-1で引き分けた。

■ドイツ発

・2日: 国際パラリンピック委員会(IPC)は、9月度の「アスリート・オブ・マンス(月間優秀選手)」のノミネート選手を発表、日本から車いすテニスの上地結衣がダブルスのパートナー、J.ホワイリー(イギリス)とペアで名を連ねた。2人は今年度の四大大会(グランドスラム)のすべてでペアを組み、ダブルスを全制覇する「年間グランスラム」の快挙を達成。その最終戦が9月に行われた全米オープンで、今回のノミネートはその活躍が評価された。上地は全米オープンでシングルスも制し、シングルスでもグランドスラム2勝を挙げている。

 

 上地ペアに加え、ノミネートされた5選手のなかから、9月度の最優秀選手が一般投票によって選ばれる。投票は、IPCの公式サイトで、10日12時(中央ヨーロッパ夏時間/日本時間10日19時)まで受け付けている。

 

 上地ペア以外のノミネート選手は以下の通り。

 

・L.Y.ウィン(香港/ボッチャ)

「2014ボッチャ世界選手権」で金メダル2つを獲得。2004年のアテネ・パラリンピックでの2冠以来、10年ぶりに世界タイトルを奪還した。

 

・J.ウィットモア (アメリカ/サイクリング)

「2014ロード世界選手権」で2冠に輝き、今年度、ロード種目とトラック種目を合わせたタイトル獲得数を6つに伸ばした。

 

・E.A.サンチェス(メキシコ/柔道)

「2014柔道世界選手権」の男子81kg級で、パラリンピック金メダリストのO.コシノフ(ウクライナ)を下す金星を挙げ、優勝した。

 

・R.ブラウン(アメリカ/陸上競技)

ベルリンで行われたダイヤモンド・シリーズの一戦で、男子200mのT44クラス(片ひざ下切断など)で、21秒62の世界新記録を樹立した。

 

・G.リツコヴァ(ロシア/車いすダンス競技)

「2014IPC車いすダンス競技大陸カップ」で、V.オシポフペアと組んだペアの部と個人の部を制覇し、2冠を達成した。

 

・3日~5日: 国際パラリンピック委員会(IPC)は、1989年9月22日に設立されたIPCの創立25周年を記念する祝賀イベントをベルリンで開催した。IPC会員など長年パラリンピック・ムーブメントに携わってきた260以上の個人や団体が招待され、記念の夕食会や戦略会議などに出席した。

 

 現IPC会長のフィリップ・クレイヴン氏は、来場者に対して長年の貢献への感謝を表すとともに、「これまでの25年間、我々が成し遂げたことを振り返ることは大切だが、この先、我々はどう進んでいくのか、耳を傾け、よく考え、意見を交わすことが極めて重要だ。我々はともに短期間で多くの成功を収めてきたが、それに満足し立ち止まってはいけない。スポーツ界は常に進化している。我々は今後も皆で協力しあい多くのチャンスをいかして、直面するチャレンジを克服し、道をリードしていかねばならない」と呼びかけた。

 

 また、パン・ギムン国連事務総長やトーマス・バッハIOC会長、バラク・オバマ米国大統領など各界のリーダーからも多数、祝賀メッセージが届いた。日本の安倍晋三首相も、2020年の東京パラリンピックが日本にとって後世へのレガシー(遺産)を遺してくれることを期待するといったメッセージを寄せたという。

■障害者ゴルフ

・1日~3日: 障害者ゴルフとしては初めての大規模な国際大会、「第1回世界障害者ゴルフ選手権大会」がワンウェイゴルフクラブ(茨城県土浦市)で開催された。競技は団体戦と個人戦が3日間競技で行われた。

 

 4人で1チームを組む団体戦には世界10カ国が出場。最終ラウンドでスウェーデンとアメリカが3日間のチームトータル719で並んだが、追加ホールでの決勝戦を行い、スウェーデンが初代王者に輝いた。日本は小林茂、小山田雅人、南健司、浅野芳夫の4選手が組み、トータル741で第5位だった。3位にはトータル739でオーストラリア、4位には同740でデンマークが入った。

 

 個人戦には団体戦にチームを派遣できなかった国からの選手を含めた45選手で競われた。団体戦も制したスウェーデンのJ.カマースタッドがトータル226で優勝。S.ルーク(オーストラリア)が2位に、K.ボンツ(アメリカ)が3位。日本選手の最高位は小林茂で、トータル235の4位だった。

 

 レディースの部は3人が出場。デンマークのM.W.リンガードがトータル239で優勝。村田貞代は同276で2位だった。

 

 障害者ゴルフは現在、パラリンピックの正式種目となることを目指して世界的な認知・普及を高める活動を展開中で、今大会もその一環として企画、開催された。

 

 今大会でも公開競技として車いすの部も行われ、6選手が出場、トータル210(*)で、野島弘が優勝した。野島は元アルペンスキーのチェアスキー日本代表選手で冬季パラリンピックにも1998年長野大会と2006年トリノ大会の2回、出場経験があり、現在もコーチとして後進の指導にも当たっている。

 

*:3日間競技だったが、1日目は1ラウンド、2日目と最終日は各ハーフラウンドで行われた。

 

■障害者スキー

・3日: 日本障害者スキー連盟は、障害者やパラリンピックアスリートを取り巻く環境のさらなる整備をめざし、財政基盤の確立、統治の確立と組織の強化、2018年冬季パラリンピック平昌大会を喫緊の課題として強化を図るため、組織の平成26年度の新役員体制を発表した。

 

 新会長には国際オリンピック委員会(IOC)名誉委員で元IOC副会長の猪谷千春氏が就任する。理事には現役選手でパラリンピアンの三澤拓(キッセイ薬品工業)や新田佳浩(日立ソリューションズ)、オリンピアンの為末大氏などから、経営やマーケティングのプロや学識者など幅広い分野から専門家が選出されている。

 

■車いすバスケットボール

・5日: 「第37回車椅子バスケットボール秋季大会」がひらつかアリーナ(神奈川県平塚市)で開催された。Aブロックでは6チーム中(横浜ドリーマー、SAGAMI FORCE、T-ROCKETS、静岡県WBC、豊橋フェローズ、La Vitz)で横浜ドリーマーが、Bブロックでは6チーム中(GRACE・女子、山梨ペンギンズ、クラブ東海、Team ZERO、ELFIN・女子、湘南スポーツクラブ)、クラブ東海が優勝した。

 

 また、この大会の特徴のひとつ、健常者だけの大学生サークルが、車いすで参加するCブロックではSPREAD(埼玉県立大学)が、SEROWS(信州大学)、ROOTS(茨城県立医療大学)との総当たり戦を制し、優勝した。

 

(星野恭子/文・写真)