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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(377) オリパラ一体で、東京2020大会感謝イベントが開催。「今後も、パラスポーツに興味を!」

日本オリンピック委員会(JOC)は10月12日、日本パラリンピック委員会(JPC)と初めて合同で、東京オリンピック・パラリンピックのメダリストからファンに感謝を伝えるイベント、「応援ありがとうTOKYO2020」をオンラインで開催しました。

都内の会場に両大会のメダリスト計38人が集まり、抽選で選ばれたファンと画面を通して質問に答えるなどして交流。オリンピアンを代表して、柔道金メダルの阿部一二三選手が、「皆さんの応援が大会前も大会中も力になって、頑張れました」と、パラリンピアンからも同じく柔道の銅メダリスト、瀬戸勇次郎選手が、「厳しい状況での開催でしたが、応援が力になりました。今後もパリに向けて、選手一同、頑張っていきますので、応援お願いします」と、ファンに感謝の言葉を伝えました。

東京2020大会のメダリストたちがオンラインで、「応援ありがとうTOKYO2020」でファンに感謝!(©JOC)

感謝イベントではまず、元プロテニス選手でスポーツキャスターの松岡修造さんを進行役に、オリンピアンとパラリンピアンが楽しいクロストークを展開しました。

例えば、パラ競泳男子100mバタフライ(S11)で金、同平泳ぎ(SB11)で銀と2つのメダルを獲得した木村敬一選手(東京ガス)は卓球で混合ダブルスの金を含むメダル3つを手にした伊藤美誠選手(スターツ)に、「混合ダブルス準々決勝のドイツ戦で劣勢だったときの精神状態」について質問。

すると、伊藤選手は、「難しいだろうって思っていたけど、諦めが早いタイプの水谷(隼)選手が初めて『大丈夫』って言ってくれて。初めて水谷選手に気持ちで負けている、負けたくないと思って頑張れました」と振り返ると、木村選手は、「戦う相手、間違えてる(笑)」。

さらに伊藤選手が、オリンピック前に水谷選手に対し、「『練習して』ってずっと言っていたんです。水谷選手にも調整の仕方があるけど、私が練習する方なので…」と明かすと、木村選手は、「僕は(32歳の)水谷選手に年齢が近いので、水谷選手しんどかっただろうなと思う」と率直な感想を返すと、会場も和やかムードに。

スポーツキャスター、松岡修造さんMCに、オリンピアンとパラリンピアンが軽妙なトークを展開(©JOC) 

続いて、銅メダルを獲得した車いすラグビーの池崎大輔選手(三菱商事)は、空手の男子形金メダルの喜友名諒選手(劉衛流龍鳳会)に対し、「見るからにオーラがある顔の力。気迫が凄かった」と称賛。喜友名選手は「(出身地)沖縄の遺伝子というか、両親の遺伝子に感謝したい。あとは稽古からくる自信が、全身に出る気迫にもつながっている」と返しました。

さらに、「普段から野生動物が獲物を狙う動画を見ながら、真似したりしている」と明かすと、池崎も、「ライオンやヒョウの狩りのシーンを見て『野生の勘』を磨いている」と返し、独特なトレーニング方法で意気投合していました。

イベントはさらに、ファンからの質問コーナーへ。柔道の阿部一二三選手やスポーツクライミングの野口啓代選手に加え、パラアスリートへの質問もあいつぎ、自国開催によるパラリンピックへの関心の高まりを感じさせました。

車いす陸上で2冠に輝いた佐藤友祈選手(モリサワ)も、感謝イベントに参加。「コロナ禍で、応援してくれた人に、どうお礼を伝えられるかと考えていた。オンラインだが、交流を通して(ファンとの)双方向への循環ができたかなと、うれしかった。パラリンピックのレガシーを伝えていきたい」 (©JOC)

例えば、東京大会で視覚障害者柔道を見てファンになったという13歳のファンは、「11月の視覚障害者柔道の大会を観に行こうと思っているので、観戦マナーを教えてください」と質問。瀬戸選手は、「視覚障害の競技は(競技中)静かにしなくてはならないスポーツが多いが、柔道は声を出しても大丈夫。応援が力になるので、ぜひお願いします」と笑顔で返答しました。

視覚障害者柔道の銅メダリスト、瀬戸勇次郎選手(右)と小川和紗選手がリモートで13歳のファンと交流(©JOC)

実は、両大会の選手がこうして顔を揃える公式イベントは、まだ、それほど多くありません。前回の2016年リオ大会後に合同のメダリストパレードが行われましたが、初めての実施でした。普及や注目度のより高いオリンピックと合同でのイベントは、とくにパラリンピアンにとっては、競技を広める貴重な機会にもなります。

パラ水泳で金1個を含む5個のメダルを獲得した鈴木孝幸選手は、「(同じ)水泳選手(のオリンピアン)とのつながりはあったが、他競技の選手とはつながりがなかった。今後も、オリパラが一つの祭典であることや、こうした(合同の)イベントや活動が継続してくれたら、うれしい」と歓迎し、さらにイベントでは、「パラ選手への質問もあり、パラに興味を持っている方がたくさんいると知れて、嬉しく思った」と振り返りました。

鈴木選手はさらに、「2004年アテネから出場しているが、大会を追うごとに、(パラの)競技環境や財政面の向上が感じられるが、まだオリンピックに比べ、苦労している部分はある。今後も北京(2022年冬季)、パリ(2024年夏季)と、オリンピックのあとにパラリンピックも開催されるので、これからもご支援いただけたら、嬉しく思います」と訴えました。

東京大会は自国開催ということで、パラリンピックへの興味・関心は大会前から高く、大会での選手たちの活躍により、さらに高まりました。鈴木選手だけでなく、パラ選手皆の願いは、「この盛り上がりを今後も継続させること」。そのためにも、選手たちはさらなる飛躍を誓い、次の目標に向かって新たなスタート切っています。これからもどうぞ応援ください。

感謝イベント後に東京芸術劇場で開かれた日本オリンピック委員会(JOC)主催の「オリンピックコンサート2021」に、パラリンピアンも招かれた。左から、車いすラグビー・池崎大輔選手、水泳・山口尚秀選手、同・鈴木孝幸選手、柔道・瀬戸勇次郎選手、陸上・佐藤友祈選手 (©JOC)

(文:星野恭子)