星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(50) 9.19~9.22
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトしたパラスポーツ・ピックアップ・シリーズ。昨年9月から連載がスタートし、今回で配信50号を迎えました。ありがとうございます。記念すべき50号は、同じく記念すべき設立25周年を迎えた国際パラリンピック委員会(IPC)のニュースから。
四半世紀の間に大きく成長したIPCのもと、パラリンピック大会を頂点にしたパラスポーツも大きな広がりを見せています。とはいえ、まだ課題も多く、矛盾を感じる部分も少なくありません。私は報道する立場のひとりとして、これからも広い視野でアンテナを広げ、IPCの動向やパラスポーツの魅力、醍醐味をお届けしていきたいと思います。
■ドイツ発
・22日: 国際パラリンピック委員会(IPC)が設立からちょうど25周年の節目を迎えた。IPCは1989年9月22日、42カ国から約200人が参加したドイツ・デュッセルドルフでの会議で、障がい者スポーツ団体の国際連合(International Confederation of Sports Organisations for the Disabled)として設立された。初代会長にはカナダ人のロバート・ステッドワード氏が就任した。
1999年には「国際パラリンピック委員会」と名称をかえ、ドイツのボンに本部を移した。当時、専任スタッフはわずかに1名だったが、15年後の現在、スタッフは70名となり、参加国数は161か国。合計200以上の国や競技団体を統括する中枢本部として機能している。
2001年に初代会長から引き継いだイギリス人のフィリップ・クレイヴァン会長は25周年に寄せて「パラリンピック大会は今や、オリンピック、サッカーのワールドカップにつづく、世界第3位のスポーツイベントに成長している。我々IPCはこれまでに達成した数々の業績を誇らしく思う。だが、我々の使命を果たすためにはまだこの先も多くのことを成し遂げねばならない」と述べた。
現会長はまた、IPCの成功は各国のパラリンピック委員会(NPC)や国際競技団体のスタッフをはじめ、ボランティアや観客、メディアやスポンサーなど多くの人のおかげと感謝した。さらに、2000年に締結した国際オリンピック委員会(IOC)との協力協定の重要性にも言及。以降、オリンピック大会と同一都市でのパラリンピック開催を保証した合意をはじめ、IOCとの協力関係は財政的保証や商標保護などで大きな力になったと強調した。
25周年を記念して、10月3日から5日にはベルリンで記念パーティが開催されるとともに、パラリンピック・ムーブメントの今後について議論する大規模な戦略会議も開かれる予定だ。クレイヴァン会長は言う。「25周年を祝うことも大切だが、我々の進むべき方向性など、これからの25年について考えることがより重要だ」
IPCはまた、25周年記念として公式サイト上で「パラリンピック・ムーブメント25年間で最高の瞬間コンテスト」を行っていたが、2012年ロンドン・パラリンピックが他の候補を圧倒し、第1位に選ばれたと発表した。同大会は20競技に164カ国から4200人を超える選手が参加する史上最大規模で開催され、史上最多の270万枚を記録した入場チケット販売数などさまざまな記録が生まれ、大成功を収めた。
【2012ロンドン・パラリンピック閉会式で、スクリーンに映し出されたパラリンピックの大会シンボル(中央)=2012年9月8日/オリンピックスタジアム(ロンドン五輪公園)/撮影:星野恭子】
「最高の瞬間コンテスト」は、一般公募によってノミネートされた数々の「最高の瞬間」の中から、IPC理事たちの投票によってトップ25を選ぶというもので、8月29日の第25位の瞬間を皮切りに、カウントダウン方式で順次、発表されていた。
なお、第2位には「オリンピック大会と同一都市でのパラリンピック開催を保証した2001年の合意」が、第3位には「1992年のバルセロナ・パラリンピック大会」が選ばれた。「最高の瞬間トップ25」について詳しい内容はIPCの25周年特設サイトで確認できる。
■ボッチャ
・19日: 「2014ボッチャ世界選手権」が北京で開幕した。日本からは、BC1クラス(⇒註)の木谷隆行、中村拓海、BC2の杉村英孝、廣瀬隆喜、海沼理佐、BC3クラスの奈良淳平、加藤啓太、松永楓の計8名の選手が個人戦と団体戦に出場する。競技は27日まで行われる。
ボッチャは、重度脳性麻痺者、もしくは同程度の四肢重度機能障がい者のために考案されたスポーツで、1984年のニューヨーク大会からパラリンピックの正式競技になっている。ジャックボール(目標球)と呼ばれる白いボールに、赤と青の各6球ずつのボールを投げたり、転がしたり、他のボールに当てたりして、いかに近づけるかを競う。競技は障害の程度によりBC1~4のクラス(⇒註)に分かれて行われるが、男女の区別はない。
⇒BC1クラス: 車いす操作不可で四肢や体幹に麻痺がある脳性麻痺者か、下肢で車いす操作可能な脳性麻痺者(競技は足けりで行う)。
BC2クラス: 上肢で車いす操作可能な脳性麻痺者。
BC3クラス: ひとりでは投球不可のため、介助者とランプ(勾配具)を使って競技する者(脳性麻痺以外の障害も含む)。ただし、介助者はコートからは常に背を向けていなければならず、選手の口頭での指示に従いランプや車いすを動かすことしかできない。
BC4クラス: BC1、2と同等の機能障害がある脳性麻痺以外の重度四肢麻痺者(頚髄損傷、筋ジストロフィーなど)。
・22日: 競技はBC1/2クラスの団体戦からスタート。全16チームが4グループに分かれ、総当たり戦の予選リーグが行われ、グループBの日本はドイツに3-4で敗れたものの、香港に5-1、ギリシャに9-1で勝利。2勝1敗でグループ2位となり、決勝トーナメント進出を決めた。
日本のほか、決勝トーナメントに進出した国は、タイ(グループA1位)、スペイン(同2位)、ドイツ(グループB1位)、中国(グループC1位)、カナダ(同2位)、スロバキア(グループD1位)、ブラジル(グループD2位)。
■車いすバスケットボール
・20日~21日: 「2014西日本車椅子バスケットボール交流大会」が兵庫県立西播磨総合リハビリテーションセンターで開催され、男子7チーム、女子3チームが出場した。
北海道から九州・福岡まで全国から16チームが参加して、第25回日本選抜車椅子バスケットボール選手権大会が群馬県高崎市の浜川体育館で開催された。決勝戦で富山車椅子バスケットボールクラブ(WBC)が東京ファィターズを54-26で下し、優勝。富山WBCは同時に、来年5月に東京体育館で開催される「内閣総理大臣杯争奪第43回日本車椅子バスケットボール選手権大会」の出場権を獲得した第1号チームにもなった。最優秀選手賞と得点王は富山WBCの宮島徹也が獲得した。
<大会結果>
優 勝: 富山県WBC
準優勝: 東京ファイターズ
3位: 森本文化風呂商会
4位: 群馬マジック
また、兵庫県たつの市の県立西播磨総合リハビリテーションセンターでは、男子7チーム、女子3チームが参加して「2014西日本車椅子バスケットボール交流大会」も開催された。
<参加チーム>
男子:Jamaney石川/Greeen、鳥取アローズ/神戸ZERO's/和歌山県選抜/
名古屋WBC/薩摩ぼっけもん
女子:Brilliant Cats/カクテル/パッション
■ウィルチェア(車いす)ラグビー
・21日~22日: 「第16回日本選手権大会 予選リーグAラウンド2高知大会」が高知県安芸郡の中芸広域体育館で開催された。全5チームが総当たり10試合を戦い、6月に行われたラウンド1横浜大会の結果と合わせ、Okinawa Hurricanesが6勝2敗で優勝した。Hurricanesは、得失点差で2位となったFreedom(6勝2敗)と3位に入ったBLITZ(4勝4敗)とともに、12月19日(~21日)に千葉ポートアリーナで行われる「第16回日本選手権大会」の出場権を獲得した。
また、得失点差で同4位となったRIZE(4勝4敗)と5位の横濱義塾(4勝4敗)は、予選リーグBで4位に入ったBLASTとプレーオフ(日程は未定)を戦い、日本選手権出場の残り2枠を争うことになる。
(星野恭子/文・写真)