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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(49) 9.12~9.15

 国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトしたパラスポーツ・ピックアップ・シリーズ。今回は、来月に迫ったアジアパラ競技大会(韓国・仁川)日本選手団に関する最新ニュースや、2020年東京パラリンピックに向けて競技のさらなる普及に取り組むブラインドサッカーの話題などを中心にリポートしています。そして殺人罪などに問われていた南アの"ブレイド(義足)ランナー"オスカー・ピストリウス選手の最新情報も!

 

■東京発

・12日: 日本パラリンピック委員会(JPC)は10月18日に韓国・仁川(インチョン)で開幕する「2014アジアパラ競技大会」に派遣する日本選手団の最終発表を行い、総勢483名(選手292名、役員191名)となった。

 

 また、主将に車いすテニスの国枝慎吾選手が、旗手に陸上競技の高桑早生選手が決まったことも発表された。国枝主将は、「日本代表選手一同、オールジャパン体制で一致団結し、アジアの頂点めざしてがんばります」と抱負を述べた。

 

*国枝慎吾 (くにえだ・しんご)/車いすテニス

ユニクロ所属/1984年2月21日生まれ(30歳)/千葉県柏市出身

主な実績: 現・ITF(国際テニス連盟)車いすテニスランキング1位/北京2008パラリンピック・シングルス優勝、ダブルス3位/ロンドン2012パラリンピック・シングルス優勝/2014年間グランドスラム達成=全豪オープン・単複優勝、全仏オープン・シングルス優勝、ウィンブルドン・ダブルス優勝(ダブルスのみ開催)、全米オープン・単複優勝

 

*高桑早生 (たかくわ・さき)/陸上競技

慶応義塾大学在学/1992年5月26日生まれ(22歳)/埼玉県熊谷市出身

主な実績: 2014アジアランキング1位(100m、200m)/広州2010アジアパラ競技大会・100m2位/ロンドン2012パラリンピック・100m、200m7位入賞

■ブラインド・サッカー

・15日: 「関東リーグ2014」第2節の全盲クラスの3試合がしながわ中央公園(東京・品川区)で行なわれた。関東リーグの試合が品川区で行われたのは初めて。試合結果は以下の通り。

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【第2試合で同点弾を決めたAvanzare つくばの川村怜選手(左)のディフェンス】

 

  第1試合: ● 山梨キッカーズ 0―5 たまハッサーズ ○

  第2試合: △ Avanzare つくば 1―1 乃木坂ナイツ  △

  第3試合: △ 埼玉T.Wings 0―0 buen cambio yokohama △

 

 なお、今節は日本ブラインドサッカー協会(JBFA)が品川区、公益財団法人品川区スポーツ協会との共同で主催し、「ブラインドサッカーフェスタ」として開催された。JBFAによれば、同フェスタは昨年9月、2020年東京パラリンピック開催が決まり、ブラインドサッカーの会場予定地として品川区が候補に挙がったことをきっかけに企画されたという。「品川区民に親しみやすい形でブラインドサッカーを見て、体験してもらう」ことなどが主な目的で、リーグ戦の試合のほか、さまざまなアトラクションが行われた。

 

 そのひとつ、ブラインドサッカー体験プログラムには品川区少年サッカー連盟所属の小学3、4年生約200名が参加、アイマスクをつけたドリブル競争などに汗を流した。参加者からは、「面白かった。でも、思いきり走ろうと思ったけど、(仲間が)どこにいるか分からなくて難しかった」「チームメートの大きな声が嬉しかった」などの感想が聞かれた。

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【体験会で、アイマスクをしてドリブルに挑戦する少年たち】

 

 また、リーグ戦の試合を見て、初めてブラインドサッカーを見たという少年は、「見えないのに、あんなにドリブルができるなんて、すごいと思った」と話し、体験会に参加する息子の付き添いできたという主婦は、「ブラインドサッカーを見るのは今日が初めて。壁にぶつかったり、衝突したり、びっくりしました。まるで見えているような正確なパスやシュートもすごいし、戦略的に考えながらプレイしているところもすごいですね」と感心しきりだった。

 

 観客が多ければ多いほど、選手の力になる。第2試合で同点ゴールを決めた、Avanzare つくばのエース川村怜は、「これだけ大勢の人に生の試合を見てもらえるのは嬉しいし、プレイしやすかった。一つひとつのプレイに歓声が上がり、『もっとやってやるぞ』とうい気持ちになった」と振り返る。

 

 また、会場でひときわ目を引いたのが、10m四方もの巨大な青いジャージだ。ブラインドサッカーを応援する大学生サポーター団体「infinity(インフィニティ)」が11月に開催予定の世界選手権(渋谷区)など日本代表戦の応援ツールとして作成したもの。今後は多くの人からジャージに応援メッセージを書いてもらうため、全国各地を回る予定だという。第1番目となった品川会場では子どもたちを含め、多くの人がメッセージを書き込んでいた。

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【開会式でお披露目された巨大なブルージャージ。今後は各地を巡り、多くのサポーターから応援メッセージを集めるほか、ブラインドサッカーの地域への普及に貢献することも期待されている】

 

 ジャージの胸にある日の丸の周囲は選手がサインをする。2000年シドニー・パラリンピックの自転車競技で金メダルを獲得し、ブラインドサッカー転向後の現在、日本代表強化選手でもある乃木坂ナイツの葭原滋男は、金色のマジックでサインを書き込んだ。「日の丸は魂を感じるし、『やらなければ』という気持ちが湧いてくる。僕のサインはタンデム自転車の形。シドニーの金(メダル)を呼び込めるように、という思いをこめている」と話した。

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【ブルージャージには選手や関係者もサインする。乃木坂ナイツの葭原滋男選手は「金」メダルへの思いも書き込んだ】

 

 ブラインドサッカーは2004年アテネ・パラリンピックから正式競技となった。日本は2年後のリオデジャネイロ大会で悲願の初出場を狙う。今年11月には渋谷区で世界選手権が行われる。

■パラ・サイクリング

・14日: 東日本大震災の被災地を自転車で巡る「ツール・ド・東北2014」が宮城県内で開かれ、最長の220kmなど4コースに全国から約2,800人が参加した。同イベントは東日本大震災の復興支援と震災の記憶を未来に残していくことを目的に昨年からスタートしたが、今年はさらに、さまざまな人に東北の現状を感じてもらい、今後より多くの人に参加機会を提供するため、新たに「ツール・ド・東北 パラサイクリングプロジェクトsupported by SUNTORY」も実施された。日本パラサイクリング連盟から所属する7選手が参加、100kmコースと60kmコースに分かれて疾走し、復興を祈った。出走選手は以下の通り。

 

■出走選手(順不同)

藤田征樹選手 2輪 100kmコース

石井雅史選手 2輪 100kmコース

石河毅也選手 2輪 100kmコース

佐藤圭一選手 2輪 100kmコース

阿部学宏選手 2輪 100kmコース

佐久間明夫選手 2輪 100kmコース

永野明選手 ハンドバイク 60kmコース

 

■ドイツ発

・12日: 国際パラリンピック委員会(IPC)は、殺人罪などに問われていた義足のスプリンター、南アフリカのオスカー・ピストリウス選手が殺人は無罪、過失殺人では有罪という判決を受け、被害者の家族や友人に向けて弔意を改めて示すとともに、「IPCはこの裁判を通してずっと、パラリンピック・ムーブメントに対するピストリウス選手の貢献と彼の私生活とを分けて考えることを強調してきた。IPCはスポーツ競技団体として、スポーツとは無関係の裁判結果についてコメントすることは適当でない」という声明を発表した。

 

*オスカー・ピストリウス

 1986年南アフリカ生まれ。先天性の障害により、生後11カ月で両膝から下を切断、義足生活に。2004年頃から本格的に陸上競技を始める。パラリンピックとともにオリンピックも目指すが、07年、「義足の有利性」を疑問視されるが、スポーツ仲裁裁判所(CAS)の裁定により一般大会への参加も認められる。08年は北京パラリンピックに初出場し、短距離種目(100m、200m、400m)で3冠。11年には一般の世界選手権(韓国・テグ)に義足選手として初出場。同大会でマークした個人400m両脚義足クラス(T43)の世界記録(45秒39)は2014年8月現在まで破られていない。12年には参加標準記録を突破し、念願のロンドン五輪に出場。1カ月後のパラリンピックにも出場し、義足の陸上競技選手として初めて五輪とパラリンピックの両大会出場を果たした。13年2月14日、自宅で恋人を射殺した容疑で裁判にかけられ、14年9月12日、殺人罪は無罪、過失殺人罪は有罪の判決を受けた。量刑の言い渡しは10月中旬頃になる予定。

 

(星野恭子/文・写真)