「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(372) 東京パラリンピック、“暑くて熱い戦い”は9月5日まで!
8月24日に開幕した東京パラリンピックは前半戦を終えました。世界的にコロナ禍という大変な状況にまだあるなか、スポーツを通して笑顔や勇気を届けたいと、世界各地から出場している4000人を越える選手たちが躍動しています。陸上競技や水泳などの個人競技ではすでに、世界新や大会新、あるいは自己ベストをマークした選手も大勢出ています。
また、チーム競技もさまざま、熱戦が続いています。コロナ禍で国際大会は約2年ぶりといった競技がほとんどのため、世界の勢力図に変化が見られる競技も少なくありません。
たとえば、車いす同士の激しいぶつかり合いが魅力の車いすラグビーは8月29日に決勝戦と3位決定戦が行われましたが、上位陣は世界ランキングとは少し異なる結果となりました。ランキング4位のイギリスが同2位のアメリカを下し、初優勝を果たした一方、同1位で、大会3連覇を狙ったオーストラリアが4位に終わりました。ちなみに、2019年世界選手権覇者で初の金メダルを狙った日本は前回リオ大会と同じ銅メダル。3年後のパリで、悲願の金に再挑戦します。
その他、日本の前半戦からいくつか話題をピックアップしてみます。まずは陸上競技から。出場選手は1000人以上、競われる金メダルは167種目と、大会最多の花形競技ですが、日本はすでに金メダル2個、銀メダル1個、銅メダル3個を獲得しています。
リオ大会銀メダリストで車いすレースのエース、佐藤友祈選手が公言通り、400mと1500mで二冠に輝いています。残念ながら、自身のもつ「世界記録更新」は未達に終わりましたが、それでも2種目とも大会新。「世界記録を更新して二冠」の目標は、「(2024年)パリで実現します!」と力強くコメントし、自身2度目のパラリンピックを終えました。
車いすのトラック種目で二冠達成の佐藤友祈選手「ようやく東京の舞台でパラリンピックのタイトルを奪い取ることができました」(写真:吉村もと)
団体競技では開催国枠で初出場を果たした競技がいくつかあります。たとえば、視覚障害のある選手が目隠し(アイシェード)して行うパラスポーツ独自の球技、ゴールボールでは男子が初出場しています。5カ国ずつ2組に分かれて行われているグループリーグを3勝1敗と大健闘し、見事グループAの1位で31日に行われる準々決勝進出を決めました。
「静寂の中の格闘技」とも」呼ばれる視覚障害者の球技、ゴールボール。男子日本代表は初出場ながら、大健闘。 (写真:吉村もと)
また、8月28日、29日にお台場で行われたトライアスロンでは日本に新しい歴史が刻まれました。PTS4(運動機能障害)男子の宇田秀生選手が銀メダル、PTVI(視覚障害)男子の米岡聡選手が目の代わりとなる椿浩平ガイドとともに戦って銅メダルを、あいついで獲得。ともに初出場での快挙だったほか、同競技は2016年リオデジャネイロ大会から採用されたばかりで、宇田選手の銀メダルは日本勢初のメダル。さらに、これまでオリンピックでのメダル獲得はなく、日本トライアスロン界にとっても快挙となったのです。
さらに、トライアスロンからもう一つ。女子ではアイススレッジレース(冬)と陸上競技(夏)を合わせて8大会連続出場となる土田和歌子選手が3競技目のトライアスロンに初出場しました。最終順位は9位でしたが、笑顔でフィニッシュ。「自身への挑戦と周囲への感謝の思いで走りました」と、清々しい表情でレースを振り返りました。
なんと、土田選手は1週間後の最終日に行われる、車いすマラソンにも出場を決めており、「1大会での二刀流」に挑みます。パラリンピックでは初めてではありませんが、やはり珍しい挑戦で、とくに各競技のレベルが上がっている近年では、相当なチャレンジです。土田選手は46歳のレジェンド。マラソンでの出場は負傷欠場した北京大会をはさみ、6大会連続となります。「生半可で(な挑戦)はないが、これまでやってきたすべてを発揮して準備したいです」と意気込みを語りました。
写真はトライアスロンのバイクパートを競技中の土田和歌子選手。車いすクラスでは、手で漕ぐハンドサイクルを使用する (撮影:吉村もと)
車いすマラソンは9月5日の午前6時30分から男子、40分に女子がスタートします。その後、男女視覚障害と男子上肢障害のマラソンが50分にスタートします。コースは国立競技場発着で、東京タワーや浅草など東京都内の名所を巡ります。
東京パラリンピックの熱戦は9月5日夜の閉会式まで続きます。後半戦にもぜひ、ご期待と応援をお願いします!
(文:星野恭子)