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「朝日新聞問題」の元凶は、甲子園!?

 原発の吉田調書や慰安婦に関する「報道」などで、朝日新聞社が大揺れに揺れている。

 

 が、この問題の元凶に甲子園での夏の高校野球大会がある、と断じても、けっして牽強付会とは言えないだろう。

 

 御存知のように、夏の甲子園大会(全国高等学校野球選手権大会)は、朝日新聞社と高等学校野球連盟の主催(共催)で、日本国内の超人気スポーツ・イベントとして多くのファンの人気を集めている。

 しかし、真夏の炎天下で行われる大会は高校球児の健康を害する可能性もあり、とりわけ投手の投球数の多さや連投などの登板数過多による肩、肘の故障など、多くの問題点が指摘され、じっさいに高校卒業後野球ができなくなった投手も存在していることは、衆知の事実である。

 

 そこで、そういった問題を検証する原稿を書いてほしいとの依頼があった。依頼してきたのは朝日新聞社出版が発行している月刊誌『ジャーナリズム』である。

 そこで小生は、朝日新聞社と高校野球の関係だけでなく、プロ野球の読売ジャイアンツを所有し、箱根駅伝を主催している読売新聞社なども含め、メディアがスポーツを主催したり所有したりすることの弊害について、少々長い原稿(約8000字)を書いた。

 

 が、この原稿は、編集長の判断で、ボツになってしまった。

 理由は、「ソチ冬季五輪が始まろうとしている今、テーマが違う」というものだった。

 

 そこで、「だったら夏まで、掲載は待ちます」といったが担当編集者は、それも無理だと言って平謝りに謝るばかり。要するに、内容的に無理。朝日系の出版社の刊行物で、朝日新聞社主催のスポーツ・イベントは批判できない、というわけなのだ。

 

 たかがスポーツ……と言うべきではない。

 今やスポーツは、世界経済のなかでもけっして小さくない動きを示し、国際政治でも重要な地位を占めるに至っている。

 

 そんなスポーツが健全に発展するためには、ジャーナリズムの批判精神が必要だが、我が国のスポーツの多くはメディアと癒着することによって、健全な発展が妨げられている。

 メディアが、スポーツの主催社や球団の所有者になることによって、ジャーナリズムすなわち批判精神が機能しなくなり、日本の多くのスポーツでは自由な言論が封殺されているのだ。

 

 このスポーツに対するマスメディアの姿勢は、長年過ちを認めなかった朝日新聞の「慰安婦問題」に対する報道姿勢などと、重なり合うことが多い。そして朝日新聞社の新入社員となった記者の多くは、まず高校野球の取材を担当させられるという。つまり自社主催の批判などできない記事を、まず書かされるのだ。

 

 現在「朝日新聞問題」は、テレビ朝日のワイドショウなどでも取りあげられるようになった。

 が、はたして、同様に高校野球問題を取りあげることができるようになる日はおとずれるだろうか?

 また、日本テレビや読売新聞で、巨人やプロ野球の問題を自由に語れる日は来るのだろうか?

 その日が来ないかぎり、日本のスポーツの健全な発展も、日本のジャーナリズムの健全な発展も、期待できないのではないだろうか?

 

(玉木正之)

※写真はイメージです。