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下りのパットはテークバック2倍!(僕のマグノリアレーン第8回)

「マスターズに出る!」そう宣言したジャーナリスト・上杉隆と、それをサポートするティーチングプロ・中井学。はるか遠くのマグノリアレーンをめざし、差し当たっての今週は、東京湾アクアラインを横断して、鶴舞CCにやってきた――。

※マグノリアレーンとは……ゴルフの祭典「マスターズトーナメント」が開催されるオーガスタナショナルGCへの進入路。ここを通り抜け、マスターズに出場するのがすべての男性ゴルファーの夢なのだ。

ガラスのグリーンを攻略する 「パットはセベになれ!」作戦

上杉 今週は、気分を替えてラウンドレッスンでも、とのことでしたが――。

中井 飛距離アップのレッスンもひと段落しましたからね。息抜きも兼ねて、今週はラウンドしながらテーマを決めるというのはどうかな、と思いまして。鶴舞カントリーはアップダウンがあって、グリーンのコンディションもいいですから、“仮想オーガスタ”にはもってこいです。

上杉 う~ん、でも、決定的に足りないものがあるような。

中井 なんですか?

上杉 パトロン。やはりパトロンがいないとオーガスタの雰囲気が出ませんから。

中井 それは無理です。

上杉 知っています。さ、早くラウンドにいきましょう!

――6ホール経過――

上杉 いや~、中井プロ。

中井 どうしたんですか、上杉さん。

上杉 本当にグリーンが難しいですね、このコース。オーガスタとまではいきませんが、グリーンの傾斜が強くて、かつ速い。ちなみに今から私は10メートルの下りのロングパットに挑むわけですが、2パットで収められる気がしていません。

中井 まあ、ゴルフはボールが停止するまでは何が起こるかわかりませんから、とりあえず打ってみてください。

上杉 (打つも、カップを通り過ぎて大オーバーで、結局3パット)あれ~。、おかしいな~。2打ではなく1打で入れるつもりだったのに。ダメだ。セベ・バレステロスばりに強気に攻めたのが裏目に出ました。これがオーガスタのグリーンだったら、3パット、いやもしかして4パット、5パットもありえるかもしれない。

中井 それはまずいですね。よし、では今週は「下りのパット」をレッスンしましょう。オーガスタでは今のような下りのラインを確実に2パットで収めなければ、スコアになりませんからね。ズバリ、「パットはセベになれ!」作戦です。

上杉 あの~、中井プロ。先週は「ロブショットはセベになれ」、今週は「パットはセベになれ」って「セベになれ」ばかりじゃないですか! たしかに私は広尾のセベリアーノと呼ばれた男ですが、セベになろうと思ってなれたら苦労しません。

中井 まあ、いいじゃないですか。アントニオ猪木さんもこう言っています。「バカになれ」と……。

上杉 何を言っているのかさっぱりわかりません。で、セベになれとはいったいどういうことなんですか。

中井 伝説のゴルファー、オールド・トム・モリスが言うように、パットはやはりネバーアップネバーイン。届かなければ入りません。だから、セベのように強気に攻めるのが最大のコツなのは間違いありません。

上杉 お言葉ですが、中井プロ。たった今セベのように強気に攻めてスリーパットしたんですけど。

中井 ポイントはそこです。セベのパットの特徴は、小さいテークバックでパチンと打つ、いわゆる「タップ式」です。上杉さんのパットも、セベに憧れていただけあってその打ち方に近い。ただ、セベのパットにはもうひとつの大きな特徴があります。そこも、真似してもらいたいんです。

思い描いたボールスピードに合わせて パターのヘッドを動かす

上杉 もうひとつの特徴……わかった! セベといえば「ピンアンサー」。私は今、オデッセイの「ホワイトホット」を愛用していますが、パターを「アンサー」に替えればいいわけですね。なんだ、簡単じゃないですか。

中井 違います。「ホワイトホット」もいいパターなので、どうぞ末永く愛用してください。……もうひとつの特徴、それは、セベがラインによって振り方やタッチの出し方を微妙に変えている、という点です。下りのパットを成功させる秘訣はここにあります。具体的にいえば、下りのときのみ、テークバックのやり方を変えていただきたいんです。

上杉 急にレッスンプロみたいになってきましたね。で、どう変えるんですか。

中井 急にではなくはじめからレッスンプロです。どう変えるかですが、簡単です。テークバックを2倍にしてください。

上杉 だから中井プロ、何度言ったらわかるんですか。たった今、大オーバーしたのに、テークバックを2倍にしたらさらにオーバーするに決まってるじゃないですか。もしこれがオーガスタの13番ホールだったら、グリーンを出てクリークまで入ってしまいます。

中井 まあ、だまされたと思ってやってみてください。今日は特別に許可を得ていますから、今打ったのと同じラインから打ってみてください。

上杉 しょうがないですね……(と、打つ)。あ、OKに寄った。あれ。うーん、たしかに寄ったけど、今のはさっき打ったのと同じラインからですからね。

中井 では、距離を変えて打ってみましょう。その際、振り幅はあくまで「ふだんの2倍」のイメージです。

上杉 あれ、また寄った。どういうことですか、これ。

中井 小さいテークバックのタップ式だと、かえって強くボールをヒットできますよね? それの逆です。テークバックを大きくすることで、ボールを強くヒットできなくする。繊細さが求められる下りのパットでは、この方法でタッチを出すのがおすすめなんです。

上杉 なるほど~。でも、どれくらい転がるか、まるっきり分からないときはどうしたらいいんですか。

中井 「どれくらい転がるか」を予測するには、球が転がるスピードをイメージするのがいちばんの方法です。そして、思い描いたボールスピードに合わせてパターヘッドを動かす。パットの場合は、ヘッドをストロークするスピードが、ほぼイコール、ボールの転がるスピードになりますから。

上杉 (突如、大股でグリーンを歩きだし、肩をいからせて次のホールへ向かう)

中井 あれ、どうしたんですか、上杉さん。

上杉 どうって決まってるじゃないですか。私は今、身も心もセベになりきっているんですよ。ああ、目を閉じれば故郷・ペドレーニャのどこまでも広がる青い海が見えるようです。

中井 上杉さんの故郷は東京・新宿。海といってもせいぜい東京湾だと思うんですけど……。

上杉 いや、スペインの風が見える。そしてその風はオーガスタのマグノリアの並木を揺らしている。待ってろ、セベ! 逃げても無駄だぞ!

中井 はいはい。上杉さん、早くグリーンを開けてください。後ろの組が待っていますよ。

今回のレッスンの効果は覿面! レッスンラウンドの残りホールで、セベになりきった上杉氏のパットが劇的に復調したのもご報告しておきます。というわけで、また来週。 目指せ、マスターズ!

<GDアプリ> 「僕のマグノリアレーン」は ゴルフダイジェスト・アプリに掲載されています http://www.golfdigest.co.jp/digest/gdapp/default.asp

 

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