「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(371) 史上最大の日本代表選手団、いよいよ東京パラリンピックへ!「超えろ、みんなで」
8月24日に開幕する東京2020パラリンピックに出場する日本代表選手団の結団式が17日、東京都内のホテルで行われました。今大会には、全22競技に史上最多となる254人の代表選手が派遣されます(8月22日現在)。1964年東京大会の53選手やこれまでの最多だった2004年アテネ大会の163選手を大幅に上回ります。
東京2020パラリンピック日本代表選手団の結団式が8月17日、東京都内で行われた (提供:日本パラリンピック委員会)
新型コロナウイルス感染症対策のため、登壇者以外はオンラインで参加した異例の結団式となりましたが、選手団団長を務める、日本パラリンピック委員会の河合純一委員長はまず、「大会を開催していただけることに対して衷心より感謝いたします」と、医療従事者やエッセンシャルワーカーなど多くの献身的な尽力に謝意を表し、「最高のパフォーマンスを発揮することが私たちの使命」と覚悟を語りました。
その上で、史上最大の日本選手団の陣容について、「年齢は10代から60代まで、63%が初出場の選手で、夏冬合わせて8回出場の選手もいる。女性の割合も42%を超えるなど、『多様性と調和』を象徴する選手団になりました。(選手の)皆さんが大会を通じて、勇気や強い意志、インスピレーション、公平といった、パラリンピックの価値を世界中に発信してくれることを願っています」と、リモートで見守る選手たちにエールを送りました。
選手団主将を務める、車いすテニスの国枝慎吾選手(ユニクロ)は、「(東京)オリンピックでは日本代表選手団の全力でチャレンジし、ベストを尽くす姿を目の当たりにして、心震える場面が何度もありました。日本の未来を担う子どもたちに、将来の夢を感じさせてくれました。そして、東京パラリンピックに出場する私たちも、勇気と覚悟を持って、全力で戦い抜くことをここに誓います」と力強く決意を表明。さらに主将として、「言葉よりも、自分のプレーで選手団を勢いづかせたい」と、意気込みを語りました。
団旗を背に、決意表明した、車いすテニスの国枝慎吾主将(中央)と、後列左から、旗手を務める卓球の岩渕幸洋選手、トライアスロンの谷真海選手、ゴールボールの浦田理恵副主将 (提供:日本パラリンピック委員会)
結団式に続いて記者会見も行われ、難しい状況の中で行われる特別な舞台について登壇者たちはそれぞれの思いを語りました。
いまだ収束しないコロナ感染状況を受けて、今大会は全会場で無観客開催となるものの、子どもたちに観戦機会を提供する「学校連携プログラム」は希望制で実施されます。河合団長は、同プログラムの実施について、新型コロナ感染対策の徹底が必要と強調したうえで、「子どもたちにこそ、生で観ていただく意義があると思っています。テレビやネット観戦も素晴らしいことだが、会場でみることで、選手の息づかいや音などカメラの外側を、子どもたちは五感を使って自分で見つけることができると思います」と、その意義を語りました。
2大会ぶりの金メダル獲得を目指す国枝選手は、「大会の中止も議論されてきた中、来週には開会式を迎えられるのは奇跡的なこと。そのことに感謝しなければならない」と、医療従事者や開催に尽力した関係者らに感謝の思いを口にしました。無観客での開催については、「一人でも多くの方に車いすテニス、パラスポーツのファンになってもらいたいという気持ちが強くあります。そのためには、選手が観る方の想像を一歩、二歩超えること、これが一番だと思う。試合の翌日に、学校で『あの選手、すごかったね!』とパラリンピックが話題になるようなプレーをしたい」と力を込めました。
記者会見に臨んだ、登壇者たち。左から、河合純一選手団団長、ゴールボールの浦田理恵副主将、車いすテニスの国枝慎吾主将と、旗手を務める卓球の岩渕幸洋選手、トライアスロンの谷真海選手 (提供:日本パラリンピック委員会)
副主将を務める、ゴールボールの浦田理恵選手(総合メディカル)も、ロンドン大会以来の金メダル奪還を目指します。
「東京開催が決まり、パラスポーツをいろんな人たちに知ってもらう機会が増えた。結果を出すことで与える影響力が大きいことと実感しています。今大会も目標の金メダルを獲得することで、『見えなくてもあんなことができるんだね。自分もやってみようかな』という一歩になれたら嬉しい」と笑顔の中に強い決意をのぞかせました。
開会式で旗手を務める、卓球の岩渕幸洋選手(協和キリン)は、東京パラの目標に、「金メダル以上」を掲げています。以前から、「パラスポーツ普及」活動にも熱心で、結果を出すことが普及に大きくつながるという思いからの目標です。「やはり、東京パラリンピックでしっかり結果を出して、多くの人に知ってもらうことが大事。そこで観ている人が驚くようなパフォーマンスをして、パラスポーツの発展に貢献していきたい」と、決意を新たにしていました。
トライアスロンの谷真海選手(サントリーホールディングス)は、「(1年延期など)いろいろありましたが、開催国の選手として夢の舞台に参加できることをうれしく思う」と話しました。東京大会の招致プレゼンでは、「スポーツの力」を訴え、開催決定に大きな貢献をした谷選手。この1年のさまざまな逆風の中で、「その価値を見失いそうに思うときもあった。でも、(東京)オリンピックで、スポーツの力を証明していただき、次は私たち、パラリンピアンが受け継ぐ番。パラにはパラにしかない価値があると信じている。言葉でなく、プレーで多くの人に伝われば」と意気込みました。
会の最後には、オリンピックで副主将を務めた卓球の石川佳純選手(全農)やフェンシング男子エペ団体金メダルの見延和靖選手(ネクサス)など、オリンピアンからの応援メッセージも流され、「オリパラ一体」の「バトン」がたしかにパラリンピアンに渡されました。
日本代表選手団のスローガンは、「超えろ、みんなで」。新型コロナウイルス感染拡大前の昨年2月初旬に発表されたものですが、大会1年延期を経ての今、改めて心に響くスローガンだなと感じます。
母国開催という、おそらく一生に一度の特別な舞台である一方で、コロナ下で賛否両論ある難しい異例な中でのパラリンピックでもあります。1年延期が決まって以降、選手たちは練習環境が大きく制約を受けたり、あるいは不安に苛まれたり、社会情勢から心を痛めたり、葛藤したり・・・・・・。
それでも、選手たちは「自分のやるべきこと」に真摯に立ち向かい、準備をしてきました。その成果を発揮する夢の舞台は、8月24日から9月5日までの13日間。22競技539種目が1都3県にわたる21会場で競われます。
無観客開催でもあり、メインのNHKでは地上波、BS、ラジオなどで過去最長の放送時間が計画されているほか、民放各局でも初めて、一部の競技で生中継を行うことが発表されています。「できないをできる変える」パラアスリートの力強い姿を応援していただけたら、うれしいです。
(文:星野恭子)