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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(48) 9.4~9.7

 国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトしたパラスポーツ・ピックアップ・シリーズ。今回は、車いすテニスの快挙のニュースから。錦織圭選手の活躍で話題になった全米オープンでしたが、その大会での車椅子テニス部門での日本人選手の活躍はさらに凄く、国枝慎吾選手と上地結衣選手がともに単複優勝を成し遂げ、それぞれシングルスとダブルスでの年間グランドスラムも達成しました。その他の競技も、来月に迫った韓国インチョンで開催予定の「アジアパラ競技大会」に向け、最終調整に入っているようです。来週19日に韓国インチョンで開幕する「アジア大会」とともに、“もうひとつのアジア大会”にも、ご声援よろしくお願いします。

 

■車いすテニス

・4日~7日: グランドスラム(世界4大大会)のひとつ、全米オープンの車いすテニスの部が開催され、国枝慎吾と上地結衣の両選手が単複優勝の快挙を達成した。同オープンのシングルスでは3年ぶり5度目の優勝を果たした国枝選手は、シングルスでの年間グランドスラム(⇒註)も達成した。

 

 国枝選手は、2006年に初めて世界ランキング1位に輝いて以降、パラリンピックのシングルス連覇(2008年北京、2012年ロンドン)など、長きにわたって世界トップクラスの力を維持している絶対王者だ。

 

 上地選手は、全米オープン初出場で初制覇。同時に、ダブルスでの年間グランドスラムも成し遂げた。年間グランドスラム達成は自身初。今年1月の全豪オープンのダブルスで、グランドスラム大会初優勝を果たし、5月のジャパンオープンでシングルス優勝により自身初の世界ランキング1位に輝く。一度、2位に後退するも、6月の全仏オープンで単複制覇を果たして世界ランク1位を奪還した。国枝選手とともに、世界の車いすテニス界のけん引を期待される若き女王だ。

 

⇒車いすテニスの世界4大大会: 国際テニス連盟(ITF)が定めた、全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン選手権(ダブルスのみ開催)、全米オープンの4大会。「グランドスラム」とも呼ばれ、同一年内に全大会を制覇することを、「年間グランドスラム」という。

 

<決勝戦>

男子シングルス:国枝慎吾 7-6(0)、6-4 G.フェルナンデス(アルゼンチン)

  同ダブルス:国枝/S.ウデ組 6-2、2-6、7-6(4) G.リード(英国)/M.シェファース(オランダ)

女子シングルス:上地結衣 6-3、6-3 A.ファン・クート(オランダ)

  同ダブルス:上地/J.ホワイリー(英国)組 6-4、3-6、6-3 J.グリフィオエン(オランダ)/ファン・クート組

(⇒編集部註) 7-6(0)といった( )内の数字は、タイブレークでの敗者の獲得ポイントを示す。

 

■陸上競技

・6日: パラ陸上としては国内最高峰の大会、「IPC(国際パラリンピック委員会)公認2014ジャパラパラ陸上競技大会」が山口市の維新百年記念公園陸上競技場で開幕した。大会には全国から243人がエントリー。この日は蒸し暑い曇天で、途中、強い雨に見舞われるあいにくの天候だったが、日本新記録8個、大会新記録16個、同タイ記録1個が誕生した。

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【激しい雨の中、力走する、T12クラス(弱視)の堀越信司選手は5000mで自己記録を1秒11更新し、15分15秒19の大会新記録をマーク】

 

<選手コメント>

・和田伸也: T11クラス(全盲)800mで2分08秒27の日本新記録で優勝。今年7月に谷口真大に塗り替えられた日本記録を2秒11更新した。

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【ロンドン・パラリンピックのT11クラス(全盲)5000mの銅メダリスト、和田伸也選手(右)と中田崇志ガイドの力走 】

「まだ調子が上がりきっていなくて、1周目は苦しんだが、2周目に調子があがってよかった。(6月の)日本選手権で踵を痛めてから、治療を重ねてきて、(10月のアジアパラ競技大会に向けて)なんとか間に合うメドが着いたと思う。今日のレースでは、アジア大会で出場する1500mと5000mに向けてスピードを強化してきたので、2分10秒は切りたいと思っていたが、8秒台前半と大きく切れてよかった」

 

・7日: ジャパンパラ大会の2日目は、一転、青空が広がる晴天となり、午後は気温30度を超える気象条件のなか、日本新記録16個、大会記録27個が誕生し、閉幕した。

 

<選手コメント>

・加藤由希子選手: 女子T46クラス(片上肢障害など)砲丸投げで、自身のもつ日本記録を26cm更新する、11m66の日本新記録で金メダルを獲得。

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【左前腕に義手を付け、力投する加藤選手。現在、仙台大学陸上競技部に所属し、全日本インカレも目指す。】

「(日本記録更新は)全然嬉しくない。今日の目標を(2000年にドイツ選手が出した11m93の)世界記録更新に置いていたので、記録を出せなかったのは今回の反省。晴れて気温が高く気象条件も整い、記録への期待はあったが、自分の力で体を動かすことができなかった。今回は悔しい思いをしたので、(初出場となる)アジアパラ大会までの1カ月、もう1回調整しなおして、アジアでは金メダルと世界新記録で帰ってこられるよう頑張りたい」

 

・山本篤選手: 男子T42クラス(片大腿切断など)100mで、自身のもつ日本記録を0秒12更新する12秒61の日本新記録で優勝。

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【表彰式で穏やかな表情を見せる山本篤選手】

「タイムは狙っていたので、よかった。アップのときは身体的には重いなと思ったが、今日は風がよく、コンディションも抜群だったので、あとは『自分がしっかり走るしかない。絶対出る』と思ってスタートに立った。(記録が)ジャンプアップして嬉しい。でも、当面の目標は12秒50。そこまでいけば、(パラリンピックでの)メダルも見えてくるかなと思うから。(2016年)のリオで、100mでもメダルを意識していきたい」

 

・中西麻耶選手: 男子T44クラス(片下腿切断など)走り幅跳びで、5m27の日本新記録で優勝。これまでの記録は2013年に佐藤真海が出した5m02で、中西は25cm更新した。

 

「(今大会は)リオから東京に向けての道のりが、いい感じで見えてきた大会かなと思えた。(これまでも)記録は出るだろうと思って、ずっとやってきたが、(今日は1本目から)手ごたえがものすごくあった。でも、踏み切りのタイミングが自分の理想とするものが高く、それがまだできていないと思う自分もいる。助走は安定してきているので、あとは踏み切りの部分だけ。ストライドが伸びて助走は良くなってきたが、最後に踏み切る一瞬だけ体幹を締めて板に乗るというか、押すというか、そういう切り替えの動作をしっかり意識したい」

 

■視覚障害柔道

・4日~6日: 36カ国が参加して、IBSA(国際ブラインドスポーツ協会)柔道世界選手権大会が米国コロラド州の米国オリンピック・トレーニングセンターで開催された。日本からは男子が7階級(⇒註)に計13名、女子は5階級に6名が出場。

 

 個人戦では、男子60kg級でロンドン・パラリンピック5位入賞の平井孝明が銅メダル、同100kg超級でロンドンの金メダリスト、正木健人が銅メダルを獲得した。女子は63kg級の米田真由美の5位入賞が最高だった。

 

 男子団体戦には6カ国が参加。日本はベネズエラとともに銅メダルに輝いた。1回戦でブラジルに1勝4敗で敗れたが、順位決定戦でトルコに3勝2敗で勝利し、銅メダルに輝いた。ブラジルが金メダル、ロシアが銀メダル、ベネズエラがもう一つの銅メダルを獲得した。

 

⇒階級: 今大会では、男子が60kg級、66kg級、73kg級、81kg級、90kg級、100kg級、100kg超級の7階級、女子が48kg級、52kg級、57kg級、63kg級、70kg級の5階級が実施された。

 

■ブラインド・サッカー

・4日~6日:  ブラインド・サッカー日本代表はパリで行われた4国対抗国際親善大会に出場し、アルゼンチンに0-1、フランスに0-0、スペインに0-3で、最終成績は1分け2敗の4位に終わった。

 

 アルゼンチンは昨年のコパ・アメリカ2位、スペイン、フランスは欧州選手権の1位、2位という強豪国で、両国とも11月の世界選手権(東京・国立代々木競技場フットサルコート)に出場する予定になっている。

 

<今大会の試合結果>

 対 アルゼンチン 0-1 ●

 対 フランス 0-0 △

 対 スペイン 0-3 ●

 

 日本ブラインドサッカー協会のリリースによれば、魚住稿監督は今回の遠征について以下のようにコメントしている。

 「強豪3カ国と戦えたのは大きい経験。アジアパラ競技大会(10月/韓国インチョン)と世界選手権(11月/東京・渋谷区)に向けて、実戦ができたのも日本の環境を考えると大きい。スペイン戦では失点してしまったが、自分たちの守備の堅さがある程度確認できたのは収穫。ただ、自信を持っているところでも、一つのミスで点を取られてしまうのもわかった。漢字一文字で言うと『忍』。自分たちが耐え忍ぶ戦い、その中で忍びのような動きで点を取る。強いチーム相手にも見通しが立った」

 

■ウィルチェア(車いす)ラグビー

・6日~7日: 第16回日本選手権大会(12月/千葉市)の予選リーグBのラウンド2兵庫大会が神戸市で開催された。7月に行われたラウンド1北海道大会と合わせて総合成績上位に入った、北海道Big Dippers、AXE、HEATの3チームが日本選手権の出場権を獲得した。4位のBLASTは予選リーグAの4位と5位のチームで開催されるプレーオフで残り2枠の出場権を争うことになる。

 

<大会1日目>

 AXE 61-44 BLAST

 北海道 Big Dippers 50-36 HEAT

 HEAT 38-51 AXE

 北海道 Big Dippers 57-41 BLAST

<同2日目>

 AXE 48-50 北海道 Big Dippers

 BLAST 51-54 HEAT

 

<予選リーグB 総合成績>

 優勝 北海道 Big Dippers (6勝0敗)

 2位 AXE (4勝2敗)

 3位 HEAT (2勝4敗)

 4位 BLAST (0勝6敗)

 

■ゴールボール

・6~7日: 「2014ゴールボール日本選手権 女子予選会」が国立障害者リハビリテーションセンター(埼玉・所沢市)で行われ、全国から7チームが参加したなか、九州なでしこチームが優勝した。2位は武蔵フューチャーズ、3位はMIX、4位はチーム付属となり、以上4チームが11月に開催予定の日本選手権(東京・青梅市)への出場権を獲得した。

 

<結果>

 優勝: 九州なでしこ

 2位: 武蔵フューチャーズ

 3位: MIX

 4位: チーム付属

 

(星野恭子/文・写真)