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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(369) 車いす陸上のエース佐藤友祈選手、東京パラの目標は、「2種目世界新で、金メダル!」

東京パラリンピックの陸上競技トラック種目(T52/車いす)で2冠を狙う日本代表の佐藤友祈選手(モリサワ)が7月29日、オンライン取材に応じ、開幕まで1カ月を切った大舞台に向けた仕上がりなどを語りました。

リオパラリンピックで銀メダルを獲得した400mと1500mに出場予定で、目標はリオ越えの「2冠」、プラス「自身がもつ世界記録の更新」を掲げています。取材は長野県内での合宿を終えたばかりのタイミングでしたが、「とても調子がよく、ともに自己ベストは十分更新できる状態。必ず目標達成します」と力強く宣言しました。

東京パラリンピックで2種目金メダルが期待される車いす(T52)の佐藤友祈選手

今年2月に、実業団選手からプロ選手に転向したこともあって競技に専念でき、体のケアも含めて、「やるべきことが着実にこなせていることが、自信につながっている」と話します。

高校卒業後の2010年、突然発症した脊髄炎の影響で下半身と、左肩から手先までまひが残りましたが、2012年にテレビでロンドンパラリンピックを観戦し、「僕も出たい」と強く思います。すぐに行動に移すと、持ち前の運動センスで徐々に頭角を現し、2015年の世界選手権に初出場し、400mで金、1500mで銅を獲得し、リオパラリンピックにも初出場。念願をかなえましたが、2種目で銀に終わった悔しさをバネにさらに強化。T52クラスの4種目(400m~5000m)の世界記録を塗り替え、17年、19年の世界選手権では連続二冠に輝きました。

世界王者として迎える東京パラでは、まだ手にしていない「パラリンピックでの金メダル」だけを見据えています。

左手にまひがあるため、スタートは少し出遅れるものの、ひとたびトップスピードに乗ると持続力には定評があります。中盤から終盤にかけての推進力はグイグイと力強く、他の追随を許しません。

ただし、1500mはスタートからオープンレーンでのレースとなるため、先行されて集団の中に入ってしまうと、抜け出せなくなる危険があります。そのため、最初から先頭に立ち、自力で走りきる戦略で、スタートダッシュとスタミナの強化を進めてきたといいます。

400mはセパレートレーンですが、距離が短い分、スタートでの漕ぎ方のミスが最後まで響く恐れがあり、落ち着いてしっかり漕げるよう、「ミスをゼロにする練習」を重ねているといいます。

「世界新で2冠」は大きなプレッシャーかと周囲は思ってしまいますが、「このプレッシャーは僕だけのもの。今、このプレッシャーを感じられることが幸せだと思えている」と、メンタルの強さも佐藤選手の真骨頂です。

開催中の東京オリンピックも練習の合間にテレビ観戦し、刺激を得ているといいます。「メダルラッシュをパラリンピックにもつなげたい。メダルを獲得すれば、パラにも注目してもらえると思う」と、モチベーションを高めているそうです。

東京パラの陸上競技は開幕から3日目の8月27日から競技がスタートし、佐藤選手が出場予定の400m男子T52は予選が同日午前、決勝は同夜。そして、同1500mは予選が28日夜、決勝が29日夜に予定されています。佐藤選手の活躍は日本チームにも勢いを与えることでしょう。ぜひ、ご注目ください。

(文・写真:星野恭子)