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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(368) 多彩なプレースタイルや戦略性に富んだ試合展開に注目! パラ卓球日本代表選手が会見

開幕まで1カ月を切った東京パラリンピックに向けて、パラ卓球の日本代表に決まった選手がオンラインで会見を開き、大会に向けた意気込みなどを語りました。

パラ卓球は肢体不自由と知的障害が対象で、肢体不自由は障害の種類と程度によって、車いす(クラス1~5)と立位(6~10)に(各障害のクラスは数字が小さいほど障害が重い)、そして知的障害(クラス11)の11クラスに分かれて競います。試合は男女別クラス別で戦うシングルス戦とクラス混合の団体(ダブルス)戦があります。

ルールは一般の卓球とほぼ同じですが、障害を考慮し、一部変更されているルールもあります。義足や杖を使ったり、ラケットを口でくわえたり、サーブトスをラケットや足先に乗せて行ったり、多様多彩なプレースタイルも見どころです。車いすの選手が相手ネット際にボールを落とす、右手に障害のある選手の右サイドを狙うなど、対戦相手を研究した攻撃も重要な戦術で、見どころでもあります。

日本代表には肢体不自由クラスに6人、知的障害クラスに5人の計11人が決定しています。そのうち肢体不自由クラスの6人が7月19日に会見に臨みました。

パラ卓球で、東京パラリンピック日本代表に内定した岩渕幸洋選手(クラス9)。開会式では選手団旗手も務める (提供:日本パラリンピック委員会)

リオ大会につづき2大会連続出場となる岩渕幸洋選手(クラス9)は先天性の両下肢機能障害により両足首の可動域が狭く、特に左足には装具をつけてプレーします。実業団チームの協和キリンで健常の選手と力を磨いてきました。障害の特性上、左右への素早い動きが難しいことから、プレースタイルは卓球台に近い位置に立つ、前陣速攻型で、相手から左右に振られる前にボールをさばきます。

岩渕選手の大会での目標は「金メダル以上」。見る人も楽しめるパフォーマンスで世界トップとなり、パラ卓球の魅力やパラスポーツのすばらしさをより強く広く伝えたいと話します。開会式では日本選手団の旗手も務める予定です。

皆見信博選手(クラス2)は2004年アテネ大会以来、3度目の出場となるベテランです。小学校2年生のとき交通事故により車いす生活となりました。海外選手に比べると小柄なため、「持てる機能を使って頭脳と感覚を大事に戦いたい」と話します。強みは「グリップチェンジ」といい、打球をはじかず、ラケットに乗せて打つなど多様なラケット操作で相手を翻弄します。

「最年長で、車いすでは1名だけ。経験をすべて生かして万全の準備をし、金メダルを強く意識しながら大会に臨みたい」と意気込みます。

ほかの4人は初出場です。八木克勝選手(クラス7)は最近では珍しいという「粒高ラバー」のラケットの使い手で、特徴ある回転ボールなどでチャンスをつくり、攻撃に生かします。

先天性両橈骨欠損症で腕から先が短いという障害がありますが、「健脚と粘り強さ」を武器に「コートを縦横無尽に駆け回り、その先に個人と団体でメダル獲得をめざしたい」と力強く語りました。

井上全悠選手(クラス7)は生後8カ月の交通事故により下肢にまひなどが残りましたが、リハビリで始めた卓球で才能が開花しました。フォアバックとバックハンドのドライブを得意とし、粘り強いラリーに持ち込み、ミスの少ない安定したプレーで、相手のミスを誘うプレーが持ち味です。攻撃力にも磨きをかけ、緩急をつけたプレーで「元気が与えられるプレーを見せたい」と意気込みます。

団体戦では約4年、ペアを組んでいる八木選手とメダル獲得を目指します。

女子代表は2人。竹内望選手(クラス10)は出産時の事故で首から右手先までまひがありますが、攻撃的な卓球が身上です。特にサービスで相手を崩し、帰ってきたボールを打ち返す、「3球目の攻撃で得点」するスタイルが持ち味です。

卓球への道を開いてくれた恩師を約1年前に亡くした悲しみを乗り越え、恩師への感謝の思いも力に、初めての大舞台に向かいます。

友野有理選手(クラス8)は小学校5年生のとき卓球の試合中に若年性脳梗塞で倒れ、利き手の右手にまひが残りました。懸命のリハビリでラケットを左手に持ち替え、大好きな卓球の舞台に戻ってきました。

「30種類くらい持っている」という多彩なサーブで相手を翻弄し、粘り強いラリーで得点を重ねるスタイルが持ち味。初の大舞台では、「代表になれなかった仲間の思いも一緒に」戦いたいと話します。竹内選手と組む団体戦でも上位を目指します。

パラ卓球はパラリンピックでは陸上、水泳についで参加人数が多く、個人戦と団体戦もあるため、大会は長丁場。8月25日から9月3日までの10日間、東京体育館で競技が行われます。クラスそれぞれの特徴もあり、見ごたえ十分。ぜひ、応援ください。

(文:星野恭子)