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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(366) 東京パラリンピックの馬術日本代表の4選手が意気込み!

8月24日に開幕予定の東京パラリンピックの馬術日本代表に決まった4選手が7月7日、都内で記者会見を行い、大会に向けての意気込みなどを語りました。

パラリンピックの馬術は選手と馬がペアを組み、長方形のアリーナ内でステップを踏んだり、図形を描いたりなど人馬一体となって演技を行う馬場馬術で競います。フィギュアスケートのように演技の正確性や芸術性、人と馬の同調性などが評価される、パラリンピック唯一の採点競技です。

オリンピック同様に男女混合ですが、選手は障がいの内容や程度によって5つのクラス(グレードI~V)に分かれて競います。数字が小さいほど障がいの程度は重く、クラスごとに求められる技術レベルも異なり、障がいを補うために鞭の使用や馬具の改造なども認められています。選手はそれぞれの障がいと向き合い創意工夫しながら、生き物として意思をもつ馬との約束事を作り上げることで、いかに「コンビ」での演技を実行できるかが見どころとなります。

東京パラの日本代表は4人。国際大会での成績など選考基準によって決定しました。グレードIIの宮路満英選手(リファイン・エクインアカデミー)は63歳で、2度目のパラリンピック代表になります。約15年前に日本競馬協会(JRA)の調教助手時代に脳卒中を発症し、リハビリ中にパラ馬術と出会い、再び馬の世界に戻ります。今も右半身まひなどが残りますが、2016年リオデジャネイロパラリンピックに続く大舞台への切符をつかみました。

高次脳機能障がいもあるため、妻の裕美子さんが「コマンダー」として馬場の外からサポートし、演技順などを声で伝えます。「嫁には感謝しかない」と話し、リオ出場時に比べて練習量も経験も増えた東京大会では、「リオよりいい成績を目指したい。まずは6位以内と思っているけど、3位以内にいきたい」と目標を語りました。

「第4回全日本パラ馬術大会」(2020年11月27日~29日)で演技する宮路満英選手。右手にまひがあるため、左手一本で手綱を引く。会場は東京パラの会場にもなるJRA(日本中央競馬会)馬事公苑(東京都世田谷区) (撮影:星野恭子)

宮路選手以外の3人はいずれも20代でパラリンピック初出場となります。宮路選手と同じ、グレードIIの吉越奏詞選手(アスール乗馬クラブ)は代表選手最年少の20歳。脳性まひのため右半身などに障がいがありますが、幼いころにリハビリとして乗馬を始め、競技として取り組むようになりました。「スムーズな移行やリズムよく歩くところや、馬も一緒に気持ちよく走ってくれるところなどを見てほしい」と力強く語りました。

グレードIIIの稲葉将選手(静岡乗馬クラブ)は脳性まひによる両下肢まひの障がいのある26歳。吉越選手同様、リハビリのため小6で乗馬をはじめ、東京パラ出場を目標に、約4年前の大学時代に本格的に競技をはじめています。パラ馬術の普及活動にも熱心で、SNSなどでの情報発信も続けています。夢見てきた大舞台では、「見た人に何かを感じてもらえるような演技をして、(多くの支えに対して)恩返しになれば」と覚悟を口にしていました。

最後に、グレードIVの高嶋活士選手(ドレッサージュ・ステーブル・テルイ)は元JRA騎手の28歳。2013年にレース中の落馬事故で右半身にまひが残り、利き手を左に変えて手綱を握ります。競馬から馬術へと活躍の舞台も変わりましたが、「馬の魅力に引き付けられて、今がある。(東京パラのスコアは)70%以上(*)を出したいし、入賞できればと思う」と意気込みました。

「第4回全日本パラ馬術大会」(2020年11月27日~29日)で演技する高嶋活士選手。JRAの騎手経験があり、「(アクシデントなどで)馬が多少暴れても動じない点が強み」と話す。(撮影:星野恭子)

バックグランドも競技歴も異なる4選手ですが、「馬が大好き」なところが共通点。チームリーダー的な役割を担うという稲葉選手は、「チームはいい雰囲気。それぞれがベストパフォーマンスで、東京パラに望めれば」と抱負を語ります。イギリスなどヨーロッパ諸国が強豪の馬術ですが、個性豊かな4選手は地元開催のパラリンピックで、日本人初のメダル獲得を目指します。

(* 採点は演技の運動項目ごとに10点満点で採点され、合計得点を満点で割った得点率で表す)

(文:星野恭子)