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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(365)開幕まで50日。東京パラリンピック日本選手団、史上最多の221選手が発表に

東京パラリンピックの開幕まで、7月5日で「50日前」となりました。この日に先駆け、日本パラリンピック委員会(JPC)は7月2日に都内で会見を開き、東京パラリンピック競技大会の日本代表選手団の第一次発表分として、実施22競技のうち20競技の選手221名の選手を発表しました。監督や役員などを合わせた選手団総数は384名で、史上最多の選手団となります。

残る2競技の代表選手や招待枠などで追加される選手は7月中をめどに随時、JPCの大会特設サイト(下記)で発表される予定です。選手総数は約250名、選手団は約450名となる見込みです。第一次発表分の選手団の名簿も掲載されています。

▼東京2020パラリンピック競技大会特設サイト
https://www.jsad.or.jp/paralympic/

最年長は視覚障害マラソン女子で66歳の西島美保子選手、最年少は水泳女子で14歳の山田美幸選手と幅広い年齢層となりました。また、女子選手が占める割合も第一次発表分で41%と過去最高です。この史上最多・最大の選手団をまとめる選手団団長はJPCの河合純一委員長で、自らも全盲のスイマーとして1992年から2012年までパラリンピック6大会に出場し、金5個を含む全21個のメダルを獲得しているレジェンドです。

東京パラリンピック日本選手団を率いる河合純一団長(提供:日本パラリンピック委員会)

河合団長は会見で、「年齢、出場経験、性別、障害、そして出場競技など、多様性に満ちた日本代表選手団。ホスト国の代表選手団の責任をひしひしと感じる」と話し、さらに史上初めて「延期」されるなど前例のない形で迎えるパラリンピックについて、日本代表選手団が目指していくべき3つの方向性についても説明しました。

1つは「感染症対策の徹底」で、検査体制や健康管理、厳格な行動管理をしっかりと行い、「選手やスタッフだけの安心・安全でなく、日本国民の皆さんの安心・安全を守るために、我々スポーツ関係者としてルールを守ることをしっかり貫きたい」。2つ目は、「感謝」を挙げ、「医療関係者をはじめ、多くの人が今の社会を支えてくださる現状がある。そのおかげで、大会の準備が進んでいることも十分に理解している。心から敬意を表するとともに、パフォーマンスを通じて、感謝の思いをお届けしたい」。そして、3つ目として、「最高のパフォーマンスの発揮」を、選手団の究極の目標に挙げました。「選手は自らのパフォーマンスを通じて、役員・スタッフは選手のサポートに全力で取り組むこと。万全の準備なくして、最高のパフォーマンス発揮はありえない」と、自らをも鼓舞するように力強く宣言。

さらに、「経験、実績ともに十分な国枝主将、浦田副主将を中心として、チームスローガン『こえろ、みんなで』のもと、一丸となって大会に向かっていきたい。『人間の可能性の祭典』というパラリンピック。オリンピックからのバトンを引き継ぎ、東京2020大会のゴールテープを切るのは我々パラリンピックの日本選手団。9月5日の閉会式まで全力で駆け抜けていきます。皆さまからの熱い声援が、選手たちの大きな支えになります。どうか日本代表選手団に向けての温かいご声援をお願いします」と意気込みを語りました。

会見ではさらに、代表選手の中から車いすテニスの国枝慎吾選手が主将に、ゴールボールの浦田理恵選手が副主将に就任することも発表されました。国枝選手は2004年からパラリンピックに4大会連続で出場し、金メダル3個、銅メダル2個を獲得、浦田選手も2008年から3大会連続出場し、2012年ロンドン大会で日本の団体競技として初の金メダルに輝いたときのチーム主将も務めていました。ともに実績も知名度も高く、今大会で金メダル獲得も期待されている二人です。強いリーダーシップと自らの高いパフォーマンスで、日本選手団を率いてくれることでしょう。

▼国枝選手の就任コメント
この度は、東京パラリンピック日本代表選手団の主将の重責を担わせて頂くことを、大変光栄に感じています。ホーム開催として今回のパラリンピックに参加できる日本選手は、おそらく全員が人生で一度きりのとても貴重な経験となることと思います。また、東京パラリンピックは、障がい者スポーツの枠にとらわれず、純粋にスポ ーツとしての魅力を伝えられる最高の舞台でもあります。一人一人の選手が、この世界最高峰の場で全力を尽くすべく準備をしてきたと思いますし、また、そのパフォーマンスが、日本の皆さまの障がい者スポーツに抱くイメージを、いい意味で上回ってくれると思います。今回の東京パラリンピックは新型コロナウイルスの影響により 1 年延期となり、その開催に至るために、様々な意見があることは選手も承知しています。それでも、選手としては、開催のためにご尽力いただいた皆様への感謝の気持ちを忘れず、また、コロナ禍により様々な制約があることを理解し、順守して、試合に臨んでいく所存です。そして大会が成功するよう、選手一同頑張りますので応援宜しくお願い致します。

日本選手団主将に就任した、車いすテニスの国枝慎吾選手 (提供:日本パラリンピック委員会)

▼浦田選手の就任コメント
東京2020 パラリンピック競技大会の日本 代表 選手団副主将という大役に任命いただき、とても光栄に思います。 日本 においては初の副主将の配置ということもあり、主将国枝選手と協力し、責任と誇りを胸に選手団の模範として誠心誠意努めて参ります。今大会の開催に際しましては、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い一年延期になる等、大変苦境を強いられる状況のなか、多大なるご尽力を賜りました全ての皆様方に心より感謝申し上げます。ゴールボールは音と気配を頼りに視覚を遮断し、見えない静寂な世界のなか鈴の入ったボールをチームで守り、得点を競う競技です。見えない世界で戦うには視覚以外の感覚を研ぎ澄ますこと、そして何より私たち選手は言葉で仲間と絆を高めあうことが必須です。自らの限界を超えようと挑戦を続けるパラアスリートの姿を見ていただき、多くの皆様方に希望と感動、笑顔と感謝の想いを届けられる大会といたします。

日本選手団副主将を務める、ゴールボールの浦田理恵選手 (提供:日本パラリンピック委員会)

また、開会式の旗手として、卓球の岩渕幸洋選手が選出されました。岩渕選手はリオ大会につづき、2大会連続でパラリンピック代表となり、メダル獲得も期待される若手選手の一人です。なお、今後さらに、女子の旗手1名も選出される予定です。

▼岩渕選手のコメント
この度、東京2020 パラリンピック競技大会の日本代表選手団旗手を務めさせて頂くこととなり、 大変光栄に存じます。この大役をしっかり果たせるよう、さらに自身の競技力向上に努めて参りたいと思います。今大会は、母国開催というだけでなく大会期間も一年延期となり、今までにない特別な大会になるのではないかと感じています。まずは、スポーツに向き合える環境を作って頂いた周りのたくさんの方のサポートに感謝をして臨みたいと思います。そして、パラリンピックの素晴らしさを発信出来る選手を目指して「金メダル以上」という目標のもと、今できる最高の準備をしていきます。地元東京の皆さんに喜んでもらえるよう闘志あふれるプレーに、ご期待ください。ご声援よろしくお願いします。

日本選手団の旗手の一人に決まった、卓球の岩渕幸洋選手 (提供:日本パラリンピック委員会)

会見ではさらに、井田朋宏副団長(総務統括)、櫻井誠一副団長(競技担当)に加え、新たに3人目の副団長として、マセソン美季さんが就任(渉外担当)することも発表されました。マセソンさんは長野冬季パラリンピックの金メダリストでもあり、国際パラリンピック委員会(IPC)の教育委員なども務めています。女子選手比率も高い選手団にとって、選手経験もあるマセソンさんは心強い存在となることでしょう。

大会については依然として、「観客の上限」や「無観客開催」などが議論されています。この点についてメディアに問われ、JPCの高橋秀文副委員長は、「せっかくの機会なので、多くの方に会場でパラ競技のすばらしさを感じてほしいとは思うが、コロナ禍の今は理想的なことを言っていられる状況なのかという思いもある。安心・安全な大会が大前提。JPCとしては、どんな結論になろうとも、選手が最高のパフォーマンスを発揮できる場を用意していただけることに感謝して、精一杯できることをやっていきたい」と話し、河合団長も、「決められた状況の中で、選手たちに最高のパフォーマンスを発揮してもらえるように粛々と準備することに尽きると思っている」と話しました。

東京パラリンピックは8月24日に開会式が行われ、9月5日まで12日間にわたって、22競技539種目が21会場で競われます。

(文:星野恭子)