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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(364) パラサイクリング、東京パラ日本代表への推薦4 選手が決定!

日本パラサイクリング連盟は18日、東京パラリンピックの自転車競技(パラサイクリング)日本代表候補選手として、新たに男子の藤田征樹選手(藤建設)と川本翔大選手(大和産業)、女子の藤井美穂選手(楽天ソシオビジネス)の3人を発表しました。日本は国際自転車連合(UCI)の国・地域別ランキングから、東京パラの出場枠として男女2枠ずつを獲得しており、3月23日にすでに候補選手として発表されていた女子の杉浦佳子選手(楽天ソシオビジネス)と合わせ、これで日本代表候補4名が決まりました。

同4名は今後、同連盟から日本パラリンピック委員会(JPC)に推薦され、JPCによる審査を経て、正式に日本代表選手に決定します。藤田選手は2008年北京パラリンピックから4大会連続、川本選手は2大会連続の出場となり、藤井選手と杉浦選手は初出場となります。

なお、新型コロナウイルス禍を受けた各国の参加選手状況がまだ不透明なため、男子Bクラスの木村和平選手(楽天素子御ビジネス)とパイロットの倉林巧和さんが補欠として選考されました。参加選手の最終エントリーが終わるまで日本チームに加わり、トレーニングを継続します。同ペアは2020年のトラック世界選手権では、4km個人パシュートで8 位入賞を果たしています。

パラサイクリングとは、国際自転車連合(UCI)の規定する競技規則のもとに行われる障害のあるアスリートを対象にした自転車競技です。一般のレースとほぼ同じルールで、「トラック競技」と「ロード競技」が行われますが、大きな特徴は選手が障害の種類と使用する自転車によって大きく4つのクラスに分かれ、さらに障害の度合いにより細かく分類されて競う点です。同じクラス内では数字が小さいほど障害の程度は重くなります。

「Cクラス」は切断、機能障害、まひなどの四肢の障害を対象とし、障害の程度により「C1~C5」に分かれます。通常の二輪自転車を使います。「Tクラス」は、まひなどの重度の四肢障害を対象とし、障害の程度により「T1、T2」に分かれます。トライサイクル(三輪自転車)を使います。「Bクラス」は視覚障害を対象とし、障害の程度によるクラス分けはありません。二人乗り用タンデム自転車を使い、前に健常の選手(パイロット)、後ろに視覚障害の選手(ストーカー)が乗り、二人で協力してこぎます。「Hクラス」は下半身不随などの下肢障害を対象とし、障害の程度により「H1~H5」に分かれます。手でこぐハンドサイクルを使います。

■東京パラ代表候補選手たち

さて、東京パラリンピックの日本代表候補に決まった選手たちをご紹介しましょう。女子は初出場の2名です。まず、3月に候補選手に発表されていた杉浦選手は「C3」クラス。自転車レース中の事故で高次脳機能障害を負い、左足などにもまひが残りますが、2018年はロード競技で8戦7勝、2019年ロード世界選手権では銀メダル2個獲得など世界トップクラスの活躍を続けています。

小柄ながら脚力やスタミナがあり、上り坂を得意とする杉浦選手。3月のロード・ワールドカップでも銅メダルを獲得しています。日本代表の権丈泰巳監督は、「ロード 2 種目はメダル獲得、トラック種目は入賞が期待できる」と話し、日本のエースとしての活躍が期待されます。

東京パラの自転車競技はオリンピックと同様に、静岡県で実施されます。静岡県出身の杉浦選手は3月の候補選手決定を受けた際、「生まれ育った静岡県が会場となるレースに出られることを嬉しく思います。生きていくことも大変なご時世に、私を応援し支え、指導してくれた方々への感謝の気持ちを、この晴れ舞台で、結果を出すことで現したいです」と意気込んでいました。

藤井選手はC2クラスで、右大腿切断のため左足1本でペダルをこぎます。自転車への転向前は陸上競技に取り組んでおり、走り高跳びを片足で助走して跳び、女子大腿切断クラスの日本記録(1m39)も保持するなど高い身体能力を誇ります。20年トラック世界選手権の500mタイムトライアル6位入賞の実績があり、権丈監督も、「トラック 500mTT で入賞が期待できる」と選考理由を話しています。

藤井選手は、「この度、内定をいただくことが出来ました。私自身、初めてのパラリンピック出場となります。パラリンピックというものを知り、そこから自転車に出会い、6年程になります。1日1日を大切にして良い成績を出せるように日々精進していきたいと思います。皆様の声援が私のパワーになりますので、たくさんの応援の程、宜しくお願いいたします」

男子はパラリンピック経験者の2名です。藤田選手は両下肢下腿切断のC3クラスの選手で、義足でペダルをこぎます。パラリンピックは4大会連続出場となり、しかも北京大会で銀・銅、ロンドン大会で銅、リオ大会で銀と、過去4つのメダルを獲得しているパラサイクリングのレジェンドです。権杖監督も、「トラック の3km個人パシュート、ロードのタイムトライアルで入賞が期待できる」と、信頼を寄せます。

藤田選手は「4度目のパラリンピック代表候補に選ばれたことは、光栄であると同時にとても身の引き締まる思いです。家族や会社の方々、一緒に走ってきた仲間をはじめ、これまで支えてくださった皆さん、ご声援をくださったみなさんに心から感謝します。ベストパフォーマンスを発揮できるように、残りの時間でしっかりと準備をしていきたいと思います。皆さんに少しでも良い結果やニュースを届けられるように、そして見てくださる方の心に残るような走りができるよう、全力を尽くしたいと思います」と意気込みます。

川本選手は左大腿切断のC2クラスの選手で、右足一本でペダルをこぎます。初出場だったリオ大会では3km個人パシュート(IP)で8位入賞を果たし、2020年トラック世界選手権では1kmタイムトライアルで5 位入賞など着実に進化しています。元野球少年で身体能力が高く、オールラウンダーですが、なかでも権杖監督は、「トラック 3kmIP で入賞が期待できる」と選考理由を話しています。

川本選手は、「内定をいただけたこと、大変嬉しいです。リオパラリンピックでの経験をいかして、大会本番までさらに力をいれてトレーニングを頑張っていきたいと思います。皆様、応援宜しくお願いいたします」と、2回目の大舞台を見据えていました。

■東京パラリンピックでは

東京パラリンピックの自転車競技は、まず、トラック競技が8月26日~29日に伊豆ベロドローム(静岡県)で行われます。CクラスとBクラスを対象とした個人2種目と団体1種目が行われます。一部の種目は複数のクラスが統合して実施され、順位の決定は障害の程度を考慮して予め設定された「係数」により、計算タイムによって行われます。

つづいて、ロード競技が9月1日~4日に富士スピードウェイ(静岡県)で開催されます。全障害クラスが対象で、個人2種目と団体1種目(リレー)が行われます。トラック競技同様に、一部の種目は複数のクラスが統合されて実施されるため、順位はクラス統合係数が適用されて決定されます。

障害に応じた、さまざまな競技自転車によるスピード感が魅力のパラサイクリング。日本チームは今回も代表候補の藤田選手など、過去のパラリンピックで金メダルを含む複数のメダリストを輩出しています。自転車競技人気の高い欧州勢や中国選手たちも強豪です。ぜひご注目ください。

(文:星野恭子)