「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(362) パラバドミントン、東京パラ日本代表内定選手が会見!
東京パラリンピックは6月15日で、開幕予定の8月24日まで70日となります。まだ開催に向けて不透明な部分も多いですが、開催の可能性がある以上、選手や関係者が今、やるべきことは練習や準備を進めること。もちろん、日本代表選手の選考も、各競技の選考基準によって徐々に決定しています。
東京パラで初めて正式競技となるパラバドミントンもその一つで、現時点で下記の3ペア(男子2名、女子4名)が日本代表に内定しています。「5月16日時点の東京パラリンピック出場ランキング」で、ダブルスの男女各6位以内、混合の4位以内のペア」という選考条件を満たした3ペアです。
・村山浩選手(WH1/SMBCグリーンサービス)/梶原大暉選手(WH2/日体大)=ランク3位
・里見紗季奈選手(WH1/NTT都市開発)/山崎悠麻選手(WH2/NTT都市開発)=ランク1位
・伊藤則子選手(SU3/中日新聞)/鈴木亜弥子選手(SU5/七十七銀行)=ランク3位
ちなみに、パラバドミントンは障害の内容と程度によって6つのクラスに分かれています。WH1とWH2は車いすクラス(WH1が障害の程度が重い)、立って競技する立位クラスとして4つあり、まずSL3とSL4が下肢障害(SL3が障害の程度が重い)で、さらにSU5は上肢障害、SS6は低身長です。
ルールは一般のバドミントンに準じますが、クラスによって使用するコートの規定が異なります。たとえば、車いすクラスのシングルスでは、一般的なコートの半面でプレーし、さらにネットぎわの一定エリアにシャトルが落ちた場合はアウトといった独自のルールが適用されています。
シングルスはクラス別に競いますが、ダブルスは組めるペアのクラスに規定があり、車いすクラス(WH1-2)はWH1同士かWH1とWH2のペア、立位クラス(SL3-SU5)はSL3とSU5のペアか、SL4同士のペアがそれぞれ出場できます。
6月9日には内定した6名のうち、4名がオンラインで会見し、東京パラへの意気ごみなどを語りました。
車いすの男子ダブルスで内定を得た、WH1の村山選手(47)とWH2の梶原選手(19)は年の差28歳ですが、2019年からペアを組んで転戦し、コンビネーションを磨いてきました。ベテランの村山選手は、「今はいい関係を築けています。二人とも肩が強いので、コート奥に返すハイクリアが最大のストロングポイント」とPR。梶原選手は中学2年時に交通事故に遭い、右足切断などで車いすになりましたが、野球経験があり、「チェアワーク(車いす操作)の速さや力強さが強み。そこを生かしながら、相手の弱点をつきたい」と意気込みました。村山選手はさらに、東京パラに向けて、「新種目なので、誰も経験したことのない未知の領域だが、パラリンピックはトップのトップしか出られない大会。日の丸をつけて戦う意味が(他の大会とは)大きく違うし、責任重大。我々の姿をご覧いただき、競技を知っていただき、少しでも皆さんに何か残るものがあればと思います」と話しました。
また、立位の女子ダブルスで内定したのは、先天性の障害による右大腿義足でSL3の伊藤選手(45)と、先天的に右腕に機能障害があり、肩までしか腕が上がらないSU5の鈴木選手のペアです。一般のダブルスではペアがポジションを入れ替えながら戦いますが、伊藤・鈴木ペアは障害の特性から主に伊藤選手が前衛の半面を、鈴木選手が残りのL字型のスペースをカバーするようなコンビネーションが見どころです。
パラバドミントン女子SU5(上肢障害)の鈴木亜弥子選手。伊藤則子選手(SL3/下肢障害)とのダブルスで東京パラリンピックの代表に内定。ダブルス(ランキング3位)とシングルス(同2位)の2種目金メダルを目指す
伊藤選手は、「鈴木選手がゲームをつくり、私が決めるべきところで決めるという形で、2019年の1年をペアとして戦ってきました。今は私がコースをついて、鈴木選手が決めるという形にも取り組んでいます」と戦略の幅の広がりを話しました。また、中学時代から健常者の中でプレーし、コースの打ち分け技術を磨いてきた鈴木選手は、女子SU5のシングルスでも2位にランクされている実力者。「コースで相手の逆をつき、ノータッチで(シャトルを)落とすところ見てほしいし、私のコートにはシャトルを落とさないという思いで、死に物狂いで拾う長いラリーから得点するところに注目してほしい」と意気込みました。
今後、バイパルタイト枠としてシングルスのランキング上位選手などにも出場権が配分されることになっており、さらに多くの日本人選手が出場する見込みです。なお、ダブルスで出場権を得た選手もシングルスに出場可能です(*)。ダブルス、シングルスともに、ランキング上位者も多く、メダル獲得の期待も高いパラバドミントン。誰が勝っても「パラリンピック初代チャンピオン」の称号が贈られます。ぜひ、ご注目ください。
(*:伊藤選手の女子SL3シングルスは東京パラリンピックでは実施されないため、ダブルスのみの出場となる)
(文・写真:星野恭子)