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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(361) ブラインドサッカー日本代表、ワールドグランプリで過去最高の準優勝。「悔しいより、もったいないゲーム」

5月30日から東京・品川区立天王洲公園で開催されていたブラインドサッカーの国際大会、「Santen IBSAブラインドサッカーワールドグランプリ2021 in 品川」は6月5日に決勝戦が行われました。世界ランク12位の日本と同1位のアルゼンチンが対戦し、日本は0-2で敗れましたが、過去最高順位となる準優勝を果たし、強化してきた成果を発揮し、確かな進化を示しました。なお、アルゼンチンは2年ぶり3回目の開催となった同大会で3連覇を達成しています。

「Santen IBSAブラインドサッカーワールドグランプリ2021 in 品川」の表彰式を終え、仲良く写真に収まる、準優勝の日本代表(青)と優勝したアルゼンチン代表(ストライプ)の両チーム (©JBFA/H.Wanibe)

同大会には東京パラリンピックに出場が決まっている8カ国中5カ国が顔をそろえました。総当たり形式のグループステージで日本は2戦2分けの2位で、同大会初となる決勝に進出。3勝1分けで決勝に駒を進めたアルゼンチンと唯一無得点で引き分けていたのが日本でした。

決勝ではキックオフから両チームとも集中力高いサッカーを展開していましたが、均衡が破れたのは前半9分。アルゼンチンのエース、マキシミリアーノ・アントニオ・エスピニージョ選手が左サイドをドリブルで持ち込み、カットインしてから放ったシュートがゴール右隅に決まり、日本は先制点を奪われました。日本も必死に追いかけますが、前半15分に再び、エスピニージョ選手に1点目と似たような形で追加点を決められます。日本は後半に入って何度かチャンスを作りますが、最後までゴールネットを揺らすことはできず、初優勝の快挙は逃しました。

田中章仁選手(左)のブロックを振り切り、佐藤大介ゴールキーパー(右)が守る日本ゴールにシュートを放つアルゼンチンのエース、マキシミリアーノ・アントニオ・エスピニージョ選手(中央)  (©JBFA/H.Wanibe)

高田敏志監督は2失点について、「守備のコンパクトさが、あの2回だけだったと思うが、一瞬ほころんだ瞬間をつかれた。さすがランク1位。攻撃の哲学を彼らは持っていて、それを貫いてやられた」と振り返りました。「悔しいというよりは、惜しいというか、もったいないゲームだった」とし、「攻略する方法、狙っているところは間違っていないことがわかった。また研究して、選手と一緒に練習していきたい」と意気込みました。次の国際舞台は初出場が決まっている東京パラリンピックとなる予定です。

初戦で決勝点を挙げ、快進撃の起点となった川村怜キャプテンは、「守備は(コーチらの)分析通りにコミュニケーションをとり、ポジションをとりながら、できたと思う。決勝ではバランスが崩れた一瞬をとらえられて2失点したが、相手の強度も含めて、ある程度想定内の中で試合ができた」と手ごたえを語るとともに、「もっとゴール前に進入して、最後に打ち切れるところまで精度を上げるのが、これからの課題」と前を向きました。

アルゼンチンの攻撃を激しくチェックするなど、大会MIP賞を受賞した佐々木ロベルト泉選手(中央)と、初戦で決勝点を挙げた川村怜キャプテン(右) (©JBFA/H.Wanibe)

なお、今大会は新型コロナウィルス感染拡大防止のため、無観客で開催され、全試合がYoutubeでライブ配信されました。また、海外から招へいされたアルゼンチン、スペイン、タイ、フランスの各チーム関係者には日本への出国15日前からのPCR検査を義務付けたり、大会期間中は全選手や一部関係者が外部との接触を断つ「バブル方式」で大会開催が実現しました。

厳しい行動制限が敷かれたようですが、「試合を行うために来ているので問題はない。参加できてよかった。細やかな運営に感謝している」と話したアルゼンチン監督に代表されるよう、コロナ禍で多くの国際大会が中止されている中での貴重な実戦経験を喜び、規制は当然と受け入れていました。

コロナ禍での大会運営として学ぶべきことも多いと思いますが、主催する日本ブラインドサッカー協会では、「試合はまだ終わっていない」としています。大会閉幕後2週間となる6月20日に予定されるPCR検査が終わるまで、関係者には制約ある行動が義務付けられているそうです。

「できない」と中止するのでなく、「どうしたらできるか」を考え、綿密な準備を経て実行された今大会。各国から報告が届き、「無事閉幕」と発表されることを強く願います。

2大会連続で得点王とMVP賞を受賞したアルゼンチンのエース、マキシミリアーノ・アントニオ・エスピニージョ選手  (©JBFA/H.Wanibe)

(文:星野恭子)