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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(45) 8.12~8.17

 国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトしたパラスポーツ・ピックアップ・シリーズ。「もうひとつのワールドカップ」と呼ばれる「知的障害者サッカーのワールドカップ」が12日に開幕し、日本代表の健闘ぶりが届きました。また、この時期は合宿を実施する競技も多いのですが、練習を一般公開することも多いので、お近くの方はこの機会にぜひ、パラスポーツの面白さをご体験ください。さらに、片足義足で健常者以上の成績を残し、ドイツ陸上選手権に優勝しながら、義足の有利性(反発力が大きすぎる)から欧州陸上選手権への出場が見送られた「ドイツの義足ジャンパー」の続報も届いています。

 

■知的障害者サッカー

・12日: 「INAS(アイナス)サッカーワールドカップ」がブラジル・サンパウロで開幕した。国際知的障害者スポーツ連盟(INAS-FID)が主催する、知的障害者対象の大会で、FIFAワールドカップと同じ年に同じ都市で開催されることから、「もうひとつのW杯」とも呼ばれている。今大会には日本を含む、8チームが出場、2組に分かれ1次リーグからスタートした。各組とも総当りリーグ戦を行い、上位2チームが決勝トーナメントへ出場する。

 

 ・1次リーグ

  A組:サウジアラビア、スウェーデン、フランス、南アフリカ

  B組:ポーランド、ドイツ、日本、ブラジル

 

 日本は12日未明の開幕戦で地元ブラジルと対戦、2-2で引き分けた。日本知的障がい者サッカー連盟(JFFID)のリポートによれば、大会は当初、9チームが参加する予定だったが、開幕直前にアルゼンチンが出場を辞退したため、試合日程が変更となり、日本が急遽、開幕戦を戦うことになったという。

 

 不利な条件のなか、前半終了間際と後半開始早々にブラジルに得点を許し、2点を追う展開となったが、試合終了間際に相次いで得点を重ね、同点に追いつく粘りを見せた。

 

・15日: 2戦目はポーランドに1-5で敗れ、日本の成績は1引き分け1敗の勝ち点1。

 

・17日: ドイツと対戦し、7-0で大勝し、日本は1次リーグを1勝1敗1引き分けの勝ち点4で現在2位。19日に行われる、ポーランド(勝ち点6)-ドイツ戦(同1)でドイツが11-0以上で大勝しなければ、日本の決勝トーナメントが決まる。

 決勝トーナメントは20日から始まり、21日、22日の順位決定戦を経て、23日に決勝戦が行われる予定。

 

■車いすバスケットボール

・12日: 日本車椅子バスケットボール協会は女子日本代表の第8次合宿を8月20日から24日まで秋田県能代市で開催することを発表した。練習試合を含む練習の模様は、会場2階の観覧席から一般見学も可能という。

 

 日 時:8月20日(水)〜24日(日)

 場 所:能代山本スポーツリゾートセンター「アリナス」

       (秋田県能代市落合字下台2-1)

 詳 細:同協会公式サイト

 

■ブラインド・サッカー

・14日: 日本ブラインドサッカー協会(JBFA)は10月のアジア・パラリンピック大会(18日~/韓国・インチョン)と11月の世界選手権(16日~/東京・渋谷区)に出場する日本代表チームの強化合宿を23日から24日にかけて、東京・八王子市で開催すると発表した。

 

 24日には、代表応援用の新しいグッズとなる、長さ約10メートルの巨大ジャージのお披露目会も予定されているという。このジャージは11月の世界選手権など日本代表戦のスタンドを盛り上げることを目的に企画され、JBFA公認・協働プロジェクトで、サッカーのサポーター団体「infinity(インフィニティ)」が主体となり、今年5月から6月にかけてクラウド・ファンディング(インターネットを介した小口募金による資金調達方法)を行って制作された。ジャージは今後、国内数都市を回ってサポーターからメッセージを書いてもらう予定だという。

 

 合宿概要

  日 時:8月23日(土) 13:00~17:00

      8月24日(日) 9:00~13:00

  会 場:クーバー・フットボールパーク八王子富士森公園
       (東京都八王子市台町2-2)

 巨大ジャージお披露目会:8月24日(日)13:00〜30分程度
  会 場:クーバー・フットボールパーク八王子富士森公園
  内 容:巨大ジャージ披露と「インフィニティ」メンバーによる日本代表へのエール

 

■ドイツ発

・12日: 国際パラリンピック委員会(IPC)は「7月のベスト選手賞」にドイツの義足ジャンパー、マルクス・レーム(26)が選ばれたと発表した。同賞は該当月ごとに予めIPCによって選ばれた5名程度の候補選手の中からファン投票によって選出される。

 

 右膝下義足のレームは7月末のドイツ選手権に義足選手として初めて走り幅跳びの決勝に進出し、8m24マークして健常者を抑えて優勝。同記録は自身のもつT44クラス(片下腿義足)の世界記録、7m95を大きく上回る大飛躍だった。その大会がIPC公認の大会ではなかったため、規定によりIPCの公認記録とはならず、世界記録は7m95のままだが、この結果が評価され、得票率33.66%でのベスト選手賞選出につながった。

 

 レームはウエイクボードの事故により、右足を切断して義足生活となり、2008年、20歳の時に本格的に陸上競技を始める。11年のIPC世界選手権(ニュージーランド・クライストチャーチ)で優勝、翌12年ロンドン・パラリンピックでも金メダルを獲得。13年の世界選手権(フランス・リヨン)では現世界記録の7m95をマークするなど好調さを持続している。

 

 レームが8m24の記録で優勝したドイツ選手権はヨーロッパ選手権(8月12日~17日/スイス・チューリッヒ)のドイツ代表選手の選考会でもあり、通常なら優勝したレームは代表選出の可能性が高かった。が、ドイツ陸上競技連盟(DLV)は「義足の有利性」を理由に、レームを代表に選ばなかったことで物議をかもした。レームは8月18日から始まるパラ陸上のヨーロッパ選手権(イギリス・スウォンジー)には、ドイツ代表として出場することが決まっている。

 

 ちなみに、「義足の有利性」について初めて国際的な議論を呼んだのは2007年。当時08年北京オリンピック出場を目指していた、南アフリカの両脚義足のスプリンター、オスカー・ピストリウスが、「バネや車輪などの人工装置は禁止であり、義足もそれに含まれる」として国際陸上競技連盟(IAAF)から主催大会への出場を拒否されたことでCASに提訴。CASは「義足が人間の脚よりも有利という十分な証拠はない」として、ピストリウスのIAAF主催大会への出場を認める裁定を下した。ピストリウスは参加標準記録を突破できず、北京オリンピックには出場がかなわなかったが、11年世界選手権(韓国テグ)出場を経て、12年ロンドンオリンピックへの出場を果たした。

 

(星野恭子/文)