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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(359) 東京パラリンピックの水泳日本代表に、27選手が内定!

東京パラリンピックの代表選考会も兼ねた「2021ジャパンパラ水泳競技大会」が5月21日から23日まで横浜国際プールで開催されました。同大会後、日本パラ水泳連盟と日本知的障害者水泳連盟は同大会の結果を踏まえ、東京パラの水泳日本代表推薦選手選考委員会・合同会議を開き、日本代表推薦選手、全27名(男子14名、女子13名)を24日に発表しました。なお、内定選手は今後、同連盟より代表推薦選手として日本パラリンピック委員会(JPC)に推薦され、JPCによる審査を経て正式に代表選手に決定します。

内定選手には10代から50代まで、パラリンピック初出場から複数回出場のベテランまで幅広い選手がそろいました。上垣匠日本代表監督は好成績とともに、「パラリンピックの価値や魅力も発信できるチームを作っていきたい」と抱負を語りました。

■5選手が、派遣基準記録突破で内定
富田宇宙選手(日体大大学院)は大会初日、全体2レース目の男子400メートル自由形S11(視覚障がい・全盲)の予選で4分33秒26をマークして派遣基準記録をクリアしました。2019年世界選手権は銀メダルだったものの、優勝を逃したことで東京パラ内定は得られず、その悔しさがバネになりました。「(今大会で)絶対に一番に内定を獲得するという思いで臨んだ」と目を潤ませましたが、「本番まで記録の更新を目指して努力を続けたい」と誓っていました。初出場となる東京パラは初出場では金メダルを目指します。

男子200メートル自由形S4(肢体不自由)決勝で2分57秒35を出し、派遣標準記録を突破。自己ベストからは4秒遅いものの、「(今大会は)レース感を取り戻すのが目的だった。このくらい出したいと思うところはクリアできてよかった」と、5大会連続出場となるベテランらしく冷静に語りました。

また、窪田幸太選手(日体大)は男子100m背泳ぎS8(肢体不自由)の予選で1分9秒97の日本新記録をマークするとともに、派遣標準記録(1分10秒64)を突破し、東京パラへの手にしました。「目標としていた9秒台を出せてうれしい」と話し、さらに、初出場となると東京パラに向け、「出るだけで終わるのではなく結果を求めていきたい」と、さらなる進化を誓っていました。

荻原虎太郎(セントラルスポーツ)は男子100mバタフライ決勝で、1分5秒25で派遣標準記録(1分5秒87)を突破し、石浦智美選手(視覚障害・全盲S11)は50m自由形の予選で31秒20でフィニッシュし、派遣基準記録(31秒33)を突破しました。両選手ともパラリンピックは初出場となります。

■好記録、シミュレーション…それぞれの強化進む
2019年の世界選手権で優勝し、代表内定を早々に決めた3選手もそれぞれ本番に向けて順調な調整ぶりを伺わせました。

男子100m平泳ぎ(知的障がい)で代表に内定している山口尚秀選手(20=四国ガス)は大会初日の同種目予選で1分4秒00をマークし、自身の持つ世界記録を0.13秒更新しました。また、東海林大選手(三菱商事)はすでに内定していた200m個人メドレーに加え、100mバタフライなどでも派遣基準記録を突破しました。

さらに、4大会連続出場となる視覚障害クラスのエース、木村敬一選手(東京ガス)はすでに、10日間の日程で行われる東京パラリンピック本番を見据えた「シミュレーションを行っている」と話していました。大会前に2種目のタイムトライアル(4レース)を実施し、さらに大会で3種目6レースを泳ぎ、「本番の最終種目まで万全をキープできるようにしっかり準備したい」と話しました。

■東京2020 パラリンピック競技大会水泳競技日本代表推薦選手リスト(各項目50音順、敬称略)
【1】 2019年9月開催の世界パラ水泳選手権大会で優勝した選手3名。種目は優勝種目
[男子]
・木村敬一(東京ガス/視覚障害・全盲=11): 100mバタフライS11クラス
・東海林大(三菱商事/知的障害=14): 200m個人メドレーSM14
・山口尚秀(四国ガス/知的障害=14):100m平泳ぎ男子S14クラス

[女子該当者なし]

条件2. 「ジャパンパラ水泳競技大会などで派遣基準記録を突破した選手7名。種目は記録突破種目
[男子]
・荻原虎太郎(セントラルスポーツ/肢体不自由=8):100mバタフライS8
・窪田幸太(日本体育大学/肢体不自由=8 ):100m背泳ぎS8
・鈴木孝幸(GOLDWIN/肢体不自由=4): 50m自由形S4 と200m自由形S4、150m 個人メドレー SM4
・富田宇宙(日体大大学院/視覚障害・全盲=11): 400m自由形S11、100m バタフライ S11

[女子]
・石浦智美選手(伊藤忠丸紅鉄鋼/視覚障害=11): 50m自由形S11
・辻内彩野選手(三菱商事/視覚障害=11): 50m自由形S13(*)
・山田美幸選手(WS新潟/肢体不自由=2): 50m 背泳ぎS2、100m背泳 S2(*)
(*コロナ禍特例基準により、第37 回日本パラ水泳競技大会の記録を採用)

【3】ジャパンパラ水泳競技大会などの記録をもとに、選考基準(東京2020 参加標準記録順位(通称MQS ランキング)にもとづいて選考された選手13名 (種目は選考対象種目)

[男子]
・齋藤元希 (国士舘大学PST/視覚障害=13):100m背泳ぎS13
・中村智太郎 (HISAKA/肢体不自由=6):100m 平泳ぎ SB6
・日向楓 (宮前ドルフィン/肢体不自由=5): 50m バタフライ S5
・山田拓朗 (NTTドコモ/肢体不自由=9): 男子4×100mメドレーリレー34 ポイント

[女子]
・井上舞美 (イトマン大津/知的障害=14): 混合4×100mリレーS14(*)
・小野智華子 (あいおいニッセイ/視覚障害=11): 100m背泳ぎS11
・木下萌実 (宮前ドルフィン/知的障害=14): 100mバタフライS14
・小池さくら (大東文化大学/肢体不自由=7): 400m自由形S7(*)
・芹澤美希香選手 (宮前ドルフィン/知的障害=14) 100m平泳ぎ SB14
・成田真由美 (横浜サクラ/肢体不自由=9): 混合4×50mリレー20ポイント
・西田杏 (三菱商事/肢体不自由=7): 50m バタフライS7
・福井香澄 (滋賀友泳会/知的障害=14): 混合4×100mリレーS14
・由井真緒里 (上武大学/肢体不自由=5): 混合4×50mリレー20ポイント
(*コロナ禍特例基準により、第37 回日本パラ水泳競技大会の記録を採用)

【4】ジャパンパラ水泳競技大会などの記録をもとに、選考基準(MQS ランキング及び参加要件)にもとづいて保留扱いの選手4名。2021年6月30日までに国際クラス分けを受検し、東京パラリンピック出場資格を満たすことで推薦選手に決定する。

[男子]
久保大樹 (KBSクボタ/肢体不自由): 男子4×100mリレー34 ポイント
長野凌生 (野村不動産パートナーズ/視覚障害): 混合4×100mリレー49 ポイント
南井瑛翔 (近畿大学/肢体不自由): 男子4×100mメドレーリレー34 ポイント

[女子]
宇津木美都 (大阪体育大学/肢体不自由): 100m 平泳ぎ SB8

(文:星野恭子)