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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(43) 7.26~7.31

 国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトしたパラスポーツ・ピックアップ・シリーズ。今回の注目はドイツから届いた「義足にまつわる」ニュースと、日本パラリンピアン協会がまとめた「現場の声」の最新の報告書。多くの方に読んで、考えていただけたらと思います。

 

■ウィルチェア(車いす)ラグビー

・30日~31日: 2014IWRF(International Wheelchair Rugby Federation=国際ウィルチェア・ラグビー連盟)ウィルチェア(車椅子)・ラグビー世界選手権に臨む日本代表が2陣に分かれ、開催地のデンマーク・オーデンセに向けて成田空港を出発した。全12チームが世界王者を目指す同大会は8月4日に開幕する。

 

 1995年に初めて開催された世界選手権は今年で6回目。日本は2010年の前回大会で銅メダルを獲得しており、今大会は前回以上の成績を目標にしている。前大会覇者で、現世界ランク1位のアメリカや、2012ロンドン・パラリンピック金メダリストで、同ランク2位のオーストラリア、そして同ランク3位のカナダの他、開催国オランダ、ベルギー、フィンランド、イギリス、フランス、ドイツ、ニュージーランド、スウェーデンが出場する。

 

 予選リーグはA、Bの2プールに分かれ、Bプールの日本は8月5日から登場し、初戦はドイツと、2戦目はスウェーデンと対戦する。

 

 また、全試合はインターネットでライブ中継が行われる予定になっている。中継チャンネルはこちらから。

 

<日本チームの試合スケジュール>

8月5日(火)10:00(日本時間17:00)~ vs ドイツ

     16:15(同23:15)~ vs スウェーデン

8月6日(水)13:45(同20:45)~ vs ニュージーランド
8月7日(木)13:45(同20:45)~ sv フランス
8月8日(金)11:15(同18:15)~ vs アメリカ

8月9日(準決勝)、10日(3位決定戦・決勝)は、予選結果により決定

 

■ドイツ発

・30日: ドイツ陸上競技連盟(DLV)は、8月12日に開幕するIAAF(国際陸上競技連盟)ヨーロッパ陸上競技選手権大会(~17日/スイス・チューリッヒ)に派遣するドイツ代表選手を発表したが、7月26日のドイツ選手権(ドイツ・ウルム)の男子走り幅跳びで優勝し、初の代表入りが注目されていた右膝下義足のマークス・レーム(25)はメンバーから漏れた。「義足の有利性」がその理由だ。

 

 レームは2012年ロンドン・パラリンピックの金メダリストで、T44クラス(片下腿切断など)のIPC(国際パラリンピック委員会)世界記録(7m95)を保持する。IAAFヨーロッパ選手権の選考会も兼ねて先月26日に行われたドイツ選手権で8m24をマークし、健常者選手を抑えドイツ・チャンピオンになった。優勝選手は通常、そのままドイツ代表に選ばれるが、義足による競技の公平性などを疑問視する声が同選手権後に他の選手や関係者からあがり、DLVの判断に注目が集まっていた。

 

 報道によれば、レームを代表メンバーから外した理由としてDLVは、ドイツ選手権の競技内容を分析した結果、「助走や跳躍の踏み切りについて義足と通常の脚では『著しい違い』がみられた」「義足はバネのような効果を与えていた」ことなどを挙げたという。

 

 DLVの決定を受け、レームはスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴する可能性もあるといった報道もある。

 

 なお、レームがマークした8m24は自身の持つT44クラス(片下腿切断など)の世界記録(7m95)を29cmも超えたが、ドイツ選手権はIPCの公認大会ではないため、IPC世界新記録としては認定されない。

 

■障害者ゴルフ
・7月27日~28日:  日本障害者ゴルフ協会は9月に開催される「第1回世界障害者ゴルフ選手権」の国内最終予選を行い、小山田雅人、南健司、浅野芳夫、小林茂の4選手が日本代表に決定したと発表した。

 

 同協会によれば、障害者ゴルフは現在、パラリンピックの正式種目になることを目指しており、2016年のリオデジャネイロ大会の選考に立候補したものの落選。国際パラリンピック委員会(IPC)の助言などもあり、まずは世界選手権等の国際大会の定期開催が不可欠との判断から、今大会の開催が決まったという。

 

 大会は1チーム4人の国別対抗戦と、チームを編成できない国の代表による個人戦が行われる。8月2日時点で団体戦9カ国、個人戦6カ国の計15カ国がエントリーしている。大会は10月1日から3日間競技で行われる。


 なお、同協会では現在、選手権開催のための運営資金の確保のため、クラウドファウンディングを行っている。

<第1回世界障害者ゴルフ選手権>
日程: 9月28日(日)~10月3日(金)(*競技は10月1日~3日)

会場: ワンウェイ・ゴルフクラブ(茨城県土浦市)

詳細: 大会公式サイトまで

 

■ゴールボール

・26日~27日: 「2014日本ゴールボール選手権大会 男子第一次予選大会」が国立障害者リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)で開催された。全国から9チームが参加してリーグ戦を行い、上位に入った5チームが11月に開催される本戦、「2014日本ゴールボール選手権大会」への出場権を得た。最終順位は以下の通り。

 

優勝: スーパーモンキーズ

2位: チーム附属A

3位: 岐阜NBS

4位: チーム附属B

5位: IBK

6位: Fit's

7位: Tsukuba-tech

8位: 国リハMen'sチーム雷

9位: GALAXY

 

■ブラインドサッカー

・29日: 日本ブラインドサッカー協会(JBFA)は、視覚障害児の運動能力や運動機能の向上を目的としたスポーツキャンプ「ブラサカキッズキャンプ2014」を8月9日~10日に兵庫県南あわじ市で、9月6日~7日に茨城県神栖市でそれぞれ開催することを発表した。同キャンプは昨年7月に千葉県で初めて開催され、全国から20名の視覚障害児と家族が参加。好評につき、2年目となる今年は規模を拡大し、関西地方でも実施することにしたという。詳細や参加申し込みは、同キャンプ特設サイトまで。

 

■東京発

・30日: 日本パラリンピアンズ協会(PAJ)(⇒註)は、ハイパフォーマンス選手の育成・強化やナショナルトレーニングセンター活用に関する要望などについて、パラリンピック全競技の選手や強化関係者から意見を収集してまとめた報告書を、同協会公式サイトで公開を開始した。データはパワーポイント形式でダウンロードできるようになっている。

 

 障害者スポーツを取り巻く環境は、2020年東京パラリンピックの開催決定や、決定を受けて障害者スポーツ関連の事業が厚生労働省の管轄から文部科学省に移管されるなど、ここ数年で大きく変化している。今回発表された調査では、20年パラリンピックに向けて、設置が検討されているパラリンピアン専用の国立トレーニングセンターなどについての意見なども紹介されている。

 

⇒日本パラリンピアンズ協会(PAJ): パラリンピックに日本代表として出場経験のある選手(パラリンピアン)有志による選手会で、2003年に発足し、2010年2月12日に法人格を取得し、一般社団法人となっている。パラリンピアンズ同士がつながり、国内外のスポーツ団体や選手らと連携しながら、「Sports for Everyone」、誰もがスポーツを楽しめる社会の実現に向けて活動している。なお、パラリンピアンとはパラリンピック競技大会に出場経験のある選手や元選手の総称で、IPC(国際パラリンピック委員会)も使用している用語。

 

(星野恭子/文)