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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(347) ジェンダー平等へ、パラスポーツ界も反応

東京2020組織委員会は2月18日、橋本聖子新会長の就任とともにリスタートを切りましたが、会長交代の発端となったのが森喜朗前会長の女性蔑視と指摘された発言であり、以来、「ジェンダー平等問題」は大きく注目されています。

パラリンピックは障害の有無をはじめ、ジェンダーの違いなど多様性の尊重を理念のひとつとし、強く打ち出しています。森前会長の辞任から橋本新会長就任までの期間にジェンダー平等問題に対する、パラスポーツ界で見られた主な動きについてまとめておきたいと思います。

まず、日本障がい者スポーツ協会・日本パラリンピック委員会の鳥原光憲会長は2月12日、森前会長の辞任に際し、「森会長は、招致段階からオリンピック・パラリンピックを一体のものと位置づけ、大会成功に向けて大変大きな役割を果たしてこられただけに、今回の事態は誠に残念なこと」とした上で、同協会は、「障がいの有無や性別、国籍の違いなど多様性を尊重し、誰もが個性を発揮して活躍できる共生社会の実現を目指して活動」しており、組織委が早急に新体制を固め、引き続き万全な大会準備が進むよう望んでいるとコメントを発表。その後、橋本新会長就任にあたっては、「オリンピック・パラリンピックに精通し、国内外の活動において経験・人脈の豊富な橋本新会長は、まさに最良の人選」と歓迎するコメントを寄せています。

▼日本障がい者スポーツ協会・日本パラリンピック委員会 (2021年2月12日発表)
「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 森会長の辞任表明についての日本パラリンピック委員会(JPC)会長コメント」
https://www.jsad.or.jp/paralympic/news/%E7%B5%84%E7%B9%94%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A%E4%BC%9A%E9%95%B7%E8%BE%9E%E4%BB%BB%E8%A1%A8%E6%98%8E%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%AEJPC%E4%BC%9A%E9%95%B7%E3%82%B3%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88.pdf

▼日本障がい者スポーツ協会・日本パラリンピック委員会 (2021年2月18日発表)
「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 新会長決定についての日本パラリンピック委員会(JPC)会長コメント」
https://www.jsad.or.jp/paralympic/news/%E7%B5%84%E7%B9%94%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A%E3%80%80%E6%96%B0%E4%BC%9A%E9%95%B7%E6%B1%BA%E5%AE%9A%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%AEJPC%E4%BC%9A%E9%95%B7%E3%82%B3%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88.pdf

国際パラリンピック委員会でもアンドリュー・パーソンズ会長が18日、橋本新会長就任を受け、「歓迎する」旨のコメントを発表。その中で、ジェンダー問題について特に、「橋本新会長は7回のオリンピック代表選手であり、元東京大会担当大臣でもあるため大会の環境を熟知しており、組織委に政治的人脈とアスリートとしての強い視点をもたらしてくれるでしょう。元男女共同参画(女性活躍)担当大臣でもある橋本新会長には性別だけでなく、セクシュアリティや人種、そして重要な障害者などの多様性と包括(ダイバーシティ&インクルージョン)という目標を推進するためのプラットフォームとして東京大会を活用していただくことを期待している」とコメントしました。

▼国際パラリンピック委員会(IPC) (2021年2月18日発表)
IPC welcome new Tokyo 2020 President Seiko Hashimoto
https://www.paralympic.org/news/ipc-welcome-new-tokyo-2020-president-seiko-hashimoto

パラスポーツ競技団体の中にも、「ジェンダー平等」について、いち早くコメントを発表した団体がありました。その一つ、日本車いすバスケットボール連盟は12日、「ジェンダー平等の推進・強化に関する緊急声明」として、「性差別には断固反対」の姿勢を示し、さらに、「組織の在り方を今一度見直すとともに、ジェンダー平等に向けた取り組みを一層推進していくことを明確にするべく、下記事項について周知したい」として、次の3項目を明示しました。

・問題の核心をきちんと認識します
・ジェンダー平等の実現にむけてより一層努力します
・多様性を尊重し、対話する姿勢を尊重していきます

▼日本車いすバスケットボール連盟 (2021年2月12日発表)
「ジェンダー平等の推進・強化に関する緊急声明」 
https://jwbf.gr.jp/news/479

また、日本車いすラグビー連盟も14日、 「ダイバーシティ社会における当連盟としての活動宣言」を発表しました。パラリンピック競技で唯一「ラグビー」という名前がつく競技団体であり、車いすラグビーをはじめラグビー界やスポーツ界の発展に対する森前会長の尽力に感謝を示した上で、「女性蔑視」と問題になった発言については、「当連盟が目指す姿と異なる発言」と指摘。そして、車いすラグビーは、「競技特性として、様々な障がいのある選手が所属していることに加え、男女混合チームで戦う、ダイバーシティを体現している競技の1つであると自負している」とし、次の4点の活動宣言を行っています。

1.当連盟は車いすラグビーというスポーツ競技を通じて、ダイバーシティを体現します。
2.連盟の運営に関してもジェンダー、障害の有無などにとらわれずに、ダイバーシティの実現に向け努力します。
3.今後決まっていく組織委員会の新体制に対して協力体制を取り、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて尽力します。
4.来る東京パラリンピックにおいて、金メダルを目指して戦うことによって、改めてダイバーシティの力を体現してまいります。

▼日本車いすラグビー連盟 (2021年2月14日発表)
 「ダイバーシティ社会における当連盟としての活動宣言」
https://jwrf.jp/topics/label_notice/%e3%83%80%e3%82%a4%e3%83%90%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%86%e3%82%a3%e7%a4%be%e4%bc%9a%e3%81%ab%e3%81%8a%e3%81%91%e3%82%8b%e6%97%a5%e6%9c%ac%e8%bb%8a%e3%81%84%e3%81%99%e3%83%a9%e3%82%b0%e3%83%93%e3%83%bc.php

今夏に延期された東京パラリンピックの開幕まで、2月24日であと半年。いぜんとして新型コロナウイルスの影響はつづいていますが、パラリンピックの理念もしっかり実現できるような大会の開催に向けて、橋本新会長のリーダーシップに期待したいと思います。

(文:星野恭子)