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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(41) 7.16~7.21

 国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトしたパラスポーツ・ピックアップ・シリーズ。今回は3月に開催されたソチ冬季パラリンピック選手の栄誉を称える表彰式を中心にリポート。パラリンピックを取り巻く環境の変化を実感するとともに、すでに「次」に向けて始動している選手たちの姿が頼もしく、今後がますます楽しみになりました。

 

■東京発

・16日午前: パラリンピック特別賞の贈呈式が都内ホテルで行なわれ、今年3月に開催されたソチ・パラリンピック大会でメダルを獲得した、狩野亮(アルペンスキー)、鈴木猛史(同)、森井大輝(同)、久保恒造(クロスカントリー/バイアスロン)の4選手に贈られた。

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【特別賞を受賞した選手たち。左から、久保恒造(クロスカントリー/バイアスロン)、森井大輝(アルペンスキー)、日本パラリンピック委員会 鳥原光憲委員長、狩野亮(アルペンスキー)、鈴木猛史(アルペンスキー)】

 

 同賞は、パラリンピック・メダリストの栄誉を称えるため、北京パラリンピック後の2009年に創設されたもので、今回から報奨金が増額され、金メダルは従来の100万円から150万円に、銀メダルは70万円から100万円に、銅メダルは50万円から70万円になった。

 

 4選手を代表して、アルペスキー男子回転座位で金、滑降で銅メダルを獲得した鈴木猛史(駿河台大学職員)が謝辞を述べた。「日本に帰ってきてからはたくさんの祝福を受け、いかに多くの方々に支えられ、戦ったのだということを改めて実感することができた。2018年のピョンチャン大会ではソチ大会以上の成績を残せるよう努力し続けたい」

 

<受賞選手コメント>

・久保恒造(バイアスロン・ショート座位 銅メダル)

 冬季競技はソチ大会が最後。現在の自分はもう完全に夏(陸上競技)にシフトして、練習も順調にこなしている。(陸上競技でも)若くて強い選手が出てきている。2020年の東京大会に向けては嬉しいこと。自分としてもうかうかしていられないという思いで、モチベーションがあがっている。

 

・森井大輝(アルペンスキー・スーパー大回転座位 銀メダル)

(ソチから)帰国後は多くの方から声をかけていただき、また、スポーツジムでの練習中にサポートしてくだる方も増えた。パラリンピックへの理解の深まりを感じる。同時に、次世代選手の発掘も急務だと思う。そのためにも、僕たちがトップレベルで頑張り、報道され、「自分もやってみたい」と思う人たちがたくさん出てくるように、これからも精進していきたい。

 

・狩野 亮(アルペンスキー滑降座位 金メダル/アルペンスキー・スーパー大回転座位 金メダル)

 ソチ大会以後、パラリンピックの認知度がすごく上がっていると感じる。僕らは普段、競技を一度見てもらえば、必ず「すごい」と感じてもらえると自負してやっているので、その点においてソチ大会はすごく大きな意味があったと思う。今後、パラリンピックの価値をもっと上げるためには、アルペンチームだけではできない。夏の競技も含め、選手みんなでバトンを渡し合う形で、盛り上げていきたい。自分自身では、ソチでは5種目中2種目で金メダルを獲れたが、残りの3種目は全く勝負にならなかった。そこを伸ばせばもっと余裕が持てるはず。まだまだやることはいっぱいある。

 

・鈴木猛史(アルペンスキー回転座位 金メダル/アルペンスキー滑降座位 銅メダル)

(公式な場での)代表スピーチは初めてだったが、こういう経験を積んで成長していかねばならないし、また、自分の口でちゃんとお礼を言いたいという気持ちがあったので、いい機会だった。ソチ大会後は小中学校での講演会が増えているが、多くの子どもたちにメダルを触ってもらい、何かを感じてもらえたらと願っているので、嬉しい。日本製のチェアスキーの優秀さが海外選手にも浸透し、用具のアドバンテージはもうない。メーカーと協力して用具も改良していきたいが、用具に頼るだけでなく、自分自身も鍛えて高めていきたい。

 

・16日夕: 文部科学省による、「ソチ冬季オリンピック及びパラリンピック競技大会並びに国際競技大会の優秀者に対する顕彰及び表彰」が同ホテルにて開催され、ソチ・パラリンピックのメダリストを含む入賞者全10名が下村博文文部科学大臣より表彰された。

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【文部科学省による顕彰・表彰を受けたパラリンピック選手と関係者】

 

 大臣は挨拶のなかで、多くの国民を感動させ勇気づけた選手たちの活躍に感謝するとともに、「文部科学省は昨年から、パラリンピック、障がい者スポーツも一本化して管轄するようになったが、近い将来、スポーツ庁を設置し、選手の皆さんが最高の環境でスポーツに挑戦できるよう、環境や施設の充実をはかっていきたい」と話した。

 

 パラリンピックの表彰選手を代表して、アルペンスキーの狩野が、「多くの皆さんから大きな声援をいただけて私たち選手は心強かった。4年後のピョンチャン大会ではここにいる選手がこれまで以上の成績を残せるよう、今まで以上に競技者の自覚をもち、厳しく精進していかねばならないと感じている」と挨拶した。

 

■車いすバスケットボール

・19日~20日: 「DMSカップ2014 第23回東日本車椅子バスケットボール選手権大会」が新潟県長岡市で開催された。12チームが出場し、宮城MAX (東北)がNO EXCUSE (東京)を69-46で下し、優勝した。その他の順位は以下の通り。

   3位:埼玉ライオンズ (関東)

   4位:ワールドBBC (東海北陸)

   5位:パラ神奈川SC (関東)

   6位:伊丹スーパーフェニックス (近畿)

   7位:COOLS (東京)

   8位:新潟WBC (開催地新潟)

   9位:三重チャリオッツ (東海北陸)

  10位:清水M・S・T (近畿)

  11位:長野WBC (甲信越)

  12位:群馬マジック (関東)

 

■ブラインドサッカー

・18日: 世界12カ国が集い、今年11月に東京で開催される「2014年IBSAブラインドサッカー世界選手権」の組み合わせ抽選会が、MIFAフットボール・パーク(東京都江東区)で行われた。大会アンバサダーの北澤豪氏による出場12カ国を3組に分ける抽選の結果、グループAに入った日本は一次予選リーグでフランス、パラグアイ、モロッコと対戦することが決まった。その他の組み合わせは下記の通り。詳しい試合スケジュールは後日、発表される。

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【抽選を行う北澤豪氏】

 

 IBSAブラインドサッカー世界選手権は1998年に始まり、2000年、2002年と開催されて以降は、4年に1度の開催となっているブラインドサッカーにおける世界最高峰の大会で、日本での開催は第6回となる今大会が初めてとなる。日本チームは2006年の第4回アルゼンチン・ブエノス大会が初出場で、前回2010年英国ヘレフォード大会では10カ国中8位になっている。

 

 組み合わせ抽選の大役を終えた北澤氏は、見ることを制限された中で行うブラインドサッカーの魅力について、「勇気がないとできないスポーツ。選手同士の衝突も多いし、壁にも激突する。そういうことを恐れなくプレイできる選手たちは本当にすごい。また、ブラジルには、僕でも『かなわないな』と思うぐらいドリブルの上手い選手もいる。世界選手権はいいチャンス。まずは試合を見てもらいたい」と話した。

 

<2014IBSAブラインドサッカー世界選手権>

日時: 2014年11月16日~24日

会場: 国立代々木競技場フットサルコート(東京都渋谷区)

グループステージ組み合わせ:

グループA: 日本(ホスト国)、フランス(欧州2位)、パラグアイ(コパアメリカ3位)、モロッコ(アフリカ)

グループB: ブラジル(コパアメリカ1位)、トルコ(欧州3位)、中国(アジア1位)、コロンビア(コパアメリカ4位)

グループC: スペイン(欧州1位)、アルゼンチン(コパアメリカ2位)、韓国(アジア3位)、ドイツ(欧州4位)

 

・21日: 日本ブラインドサッカー協会は、2014アジアパラ競技大会(10月18~24日/韓国インチョン)に派遣する日本代表選手10名(下記)を発表した。魚住稿代表監督は、「目標は、2015年のパラリンピック予選突破に向けて、日本の印象をアジアの各国に植え付けること。全試合を通じて、無失点を目指す」と抱負を話した。

 

<アジアパラ競技大会日本代表>

ゴールキーパー: 副将・佐藤大介(たまハッサーズ)、安部尚哉(Avanzareつくば)

フィールドプレイヤー: 主将・落合啓士(buen cambio yokohama)、佐々木康裕(松戸ウォーリアーズ)、加藤健人(埼玉T.Wings)、黒田智成(たまハッサーズ)、田中章仁(たまハッサーズ)、三原健朗(ラッキーストライカーズ福岡)、川村怜(Avanzareつくば)、佐々木ロベルト泉(Avanzareつくば)

 

■水泳

・20日~21日: 「2014ジャパンパラ水泳競技大会」がなみはやドーム(大阪府門真市)で開催された。同大会は国際パラリンピック委員会(IPC)公認大会で、10月に開催予定の「2014アジアパラ競技大会」(10月18日~24日/韓国インチョン)の日本代表選手選考のための参考レースでもあり、約250選手が熱戦を繰り広げた。

 

 2日間にわたる大会では多数の大会新記録に加え、2つのアジア新記録が誕生した。一つは女子400m自由形でS8クラス(肢体不自由)の鎌田美希が5分44秒32、もう一つは女子50m自由形のS10クラス(肢体不自由)の池愛里で29秒74をマークした。2選手とも、昨年のアジアユースパラ大会(2013/マレーシア)の日本代表だった。

 

(星野恭子/文と写真)