「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(331)車いすカーリング日本代表、新選考方式で22年北京パラ出場に挑戦!
新型コロナウイルス感染拡大は長期化の様相を呈していますが、冬季のパラスポーツも少しずつ活動を本格化させています。10月16日には日本車いすカーリング協会が今季のシーズンインを前に、オンラインによる記者会見を実施し、2022年北京冬季パラリンピックに向けた強化方針などを発表しました。
車いすカーリングは下肢障害のある人を対象とした競技ですが、健常者のカーリングと全く同じ競技エリア(カーリングシート)やストーンを使い、競技の進め方や戦略の考え方も基本的には同じです。ただし、車いすに乗り、静止した状態から手、またはデリバリースティックと呼ばれる用具にストーンを引っかけるようにして押し出す点とストーンの滑りを助けるスウィーピングが禁止されている点が大きな特徴です。より繊細な投球テクニックが必要と言えるかもしれません。
試合はオリンピックと同じく1チーム4人による対戦式ですが、チームは男女混合で編成しなければなりません。公式戦は1試合8エンドで、各チーム38分の持ち時間の中で、より多くのポイントを取ったチームが勝ちとなります。
男女混合で競技する車いすカーリングの様子。近年、ストーンの投球にはデリバリースティックの使用が主流で、世界的に約8~9割の選手が使用しているという (提供:日本車いすカーリング協会)
パラリンピックには2006年トリノ大会から正式競技となり、日本は2010年バンクーバー大会で初出場を果たしたものの、その後2大会連続で出場を逃しており、2022年北京大会で3大会ぶりの出場を目指し強化を進めています。
北京大会への出場権は、毎年開催される世界選手権の直近3大会(19年、20年、21年)での成績による獲得ポイントの上位12チーム(予定)に与えられます。ただし、日本代表は19年と20年の選手権出場を逃しているため、21年大会(3月/北京)で上位に入ることが必須条件です。さらにその前に、21年大会の予選にあたる、「ディビジョンB世界選手権」(1月/フィンランド)で3位以内に入り、本戦(3月の世界選手権)への出場権を得なければなりません。なかなか厳しく、大変な道のりです。
とはいえ、会見に参加した同協会の浪岡正行強化委員長は、「本戦で優勝、あるいは上位進出を目指して頑張れば、北京出場も全く不可能ではない。可能性が少しでもあるなら、協会が一丸となって(強化を)推し進めていきます」と意気込みを話しました。
そして、発表されたのが代表選手選考方法の方針転換です。これまでは、その年の日本選手権で優勝した「クラブチーム」をそのまま世界選手権に派遣することを基本としていましたが、今季から方針転換し、公募による全候補選手の中から代表にふさわしい選手を選抜し代表チームとして編成する方式としたことが説明されました。
同委員長によれば、現在、国内の選手登録数は約50人で、北海道や関東近郊を中心に10のクラブチームが活動しています。しかし、チームによって練習環境には差があり、「チーム単位」では十分な力を発揮できない選手も見られ、また、2年連続で世界選手権本戦への出場も逃していることから、個々の選手の能力重視で選考する選抜チーム方式に変えることにしたそうです。
オンラインで会見した日本車いすカーリング協会の浪岡正行強化委員長(提供:日本車いすカーリング協会)
過去、チーム事情から混成チームを派遣したこともあったそうですが、最初から全選手を選抜する方式は初めてと言います。同委員長は、「これまで他チームの選手と交流や勝負、研究したりして実力を磨く環境になかった」とし、選抜方式は、「常に一緒に練習できないため、チーム作りに時間がかかるデメリットはあるが、能力の高い選手を集めることができ、将来性のある選手を選べるなどのメリットがある」と説明しました。
新方式については昨年末までに全登録選手に通知され、うち男女9人が公募に応じています。実はすでに代表選考会も9月に実施されましたが、コロナ禍により練習環境に影響が出たり、また今年5月に予定されていた日本選手権が中止になるなど実戦不足もあったなど、「候補選手たちは思ったようなパフォーマンスを発揮できず、十分に考慮した日本代表を選ぶに至らなかった」と明かした委員長。
そこでもう一度、11月1日から3日間、盛岡市で9人による選考合宿を実施し、代表5人を決めることが発表されました。コロナ自粛期間中から、協会所属の2名のトレーナーによるウエブセミナー形式での週2回のトレーニングも継続してきたといい、「11月の選考会では実力をしっかりと発揮し成果を出してくれるでしょう」と期待を寄せていました。
会見ではまた、今季から採用された新種目「ミックスダブルス」も紹介されました。1チーム男女2名で競うペア戦で、2026年のイタリアのミラノ・コルティナダンペッツォ冬季パラリンピックでの正式種目化を目指しています。
持田靖夫専務理事は、現行の1チーム4名編成に比べ、「男女1名ずつなので参加のハードルが下がると期待している。競技人口が増え、切磋琢磨のなかで競技レベルも上がれば」と言い、同協会として指導者養成にも取り組んでいると話していました。
さて、10月20日には、北京冬季パラリンピック開幕まで500日の節目を迎えます。冬季競技のパラアスリートたちの活動にも注目していきたいと思います。
(文:星野恭子)