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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(330) 「大事なのは、歩みを止めないこと」―ブラインドサッカー全国大会、全試合無料生配信で開催中!

「〜ブラインドサッカーを未来へつなごう〜アクサ×KPMGブラインドサッカー2020カップ」が10月4日に開幕しました。この大会はコロナ禍を受けて新設された日本ブラインドサッカー協会(JBFA)主催の全国大会で、「密」を避けるため、2020年10月から21年2月という長期間にわたって全8会場による分散開催で行われます。

大会形式は、1stラウンドに15チームが参加し、10月から11月にかけて全国5会場で全13試合を行います。各会場の1位と、2位チームの得失点差で上位となった全8チームが21年1月から2月に2会場に分かれて行われる準決勝ラウンドに進出し、さらに各会場の上位2チームが決勝ラウンドに進み、決勝と3位決定戦を戦います。

8カ月ぶりとなるブラインドサッカーの全国大会「アクサ×KPMG 2020カップ」が10月4日に開幕! 感染症対策で、大会は来年2月までの長期間分散で開催(©日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

同カップは約8カ月ぶりとなるブラインドサッカーの全国大会ですが、残念ながら感染防止対策のため、大会は無観客で行われます。しかし、代わりに全25試合がオンライン上で無料生配信されることが決定。全国各地から試合が観戦でき、ブラサカファンも観戦初心者も画面を通して選手たちの気迫あるプレーに触れることができます。日本代表選手たちもそれぞれ、所属チームでプレー予定です。

同カップの大会名称には、「コロナ禍により先が見通しづらい社会情勢においても、試合機会を創出することでブラインドサッカーの未来につながる大会にしたい」という思いも込められているそうです。JBFAでは例年、クラブチームを対象に「アクサ ブレイブカップ(日本選手権)」と「KPMGカップ(クラブチーム選手権)」の2つの全国大会を開催していますが、今季はコロナ禍で中止されました。それでも、活動自粛期間を経て最大限の感染防止対策を行いながら少しずつ活動を再開している全国に26あるクラブチームに試合機会の創出をと検討が重ねられ、同カップ戦の開催決定に至ったそうです。

開幕を前に10月2日にはオンラインで各地をつなぎ、開会式も行われました。参加した日本障がい者サッカー連盟(JIFF)の北澤豪会長は、「大事なのは歩みを止めないこと。大会をやめてしまうことで成長が止まるということを考えると、進めていくことが今回の素晴らしい行動だなと思う」と語り、全試合のオンライン生配信についても「たくさんのファンを獲得できる機会になる。そういったチャレンジの年にしていくことで、ファンやサポーターや関係者も来年増えていくかもしれない。自信を持ってがんばっていきましょう」と期待を寄せました。

また、埼玉T.Wings所属で、日本代表でもある加藤健人選手が選手宣誓を行い、「今年に入り、新型コロナウイルス感染症でブラインドサッカーができない時期もありましたが、改めてボールを蹴る楽しさや試合ができる喜びを感じることができました。今大会はブラインドサッカーを全力で楽しみ、感謝の気持ちを忘れず、オンラインで観ている方々にブラインドサッカーの魅力が伝わるよう、正々堂々とプレーすることを誓います」と大会への感謝と意気込みを示していました。

■開幕戦で、兵庫サムライスターズが2勝で準決勝ラウンドへ

こうして、10月4日、「アクサ×KPMG 2020カップ」が大阪府堺市のJ-GREEN堺で開幕し、大阪ダイバンズと兵庫サムライスターズが対戦しました。同日に同カード2試合が行われ、2連勝した兵庫が準決勝ラウンド進出を決めました。
「豪快なシュートを放つ、兵庫サムライスターズの行廣雄太選手(左)。2試合で7得点を挙げ、チームを準決勝ラウンドに導き、MVPにも輝いた(©日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)」

第1試合では前半10分に兵庫の行廣雄太選手が先制点を挙げ、さらに3点を追加して4-0とリードして折り返します。後半18分に大阪の高橋裕人選手が1点を返すも、そのまま終了し、兵庫が4-1で初戦をものにしました。

第2試合は接戦となりました。大阪が前半14分、高橋選手のシュートで先制しましたが、兵庫の行廣選手が後半3分に同点弾を、さらに同17分に逆転弾を決めます。同19分、大阪が高橋選手の再同点ゴールで追いつくも、試合終了間際に兵庫の行廣選手がハットトリックを決め、3-2でタイムアップ。2試合で計7得点と大活躍の行廣選手が、1stラウンド堺会場のMVPに輝きました。
 惜しくもチームは敗れたが、高橋裕人選手(大阪ダイバンズ)も2試合で3得点と健闘(©日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

試合後、兵庫の原口淳主将がヒーローインタビューに登壇、「昨年11月以来、1年ぶりの試合。直前にケガ人が出た中ではあるが、2試合を戦い抜けたことを嬉しく思う」と喜びを語るとともに、「今回ケガで出場できず悔しい思いをしたメンバーもいるので、準決勝ラウンドでは試合に出る喜びを感じながら、皆で一丸となって戦いたい」と一早く駒を進めた次ラウンドへの意気込みを語りました。

なお、報道陣も現場取材は最小人数に制限され、私もオンラインでの生配信映像を見ながら画面越しの取材となりました。それでも、久しぶりの実戦での真剣勝負をワクワクしながら観戦しました。選手たちのプレーは「またサッカーができる!」という喜びにあふれ、躍動感いっぱいでした。
主将として兵庫サムライスターズを率いた原口淳選手(右)。大阪のエース、高橋裕人選手と競り合う(©日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

▼10月4日のハイライト映像(各約3分。音量注意)
M1 大阪ダイバンズ vs 兵庫サムライスターズ
https://youtu.be/atbbImZI5pQ

M2 兵庫サムライスターズ vs 大阪ダイバンズ
https://youtu.be/-rBNM8CuCfU

また、囲み取材の代わりに、メールで質問を送る形でしたが、それほど待たずに返信があり、「選手の声を伝えたい」という運営側の努力も感じられました。

私の質問には兵庫の原口主将が対応くださいました。まず、異例な形とはいえ、ブラインドサッカーの試合が再開されたことについて、「大会を主催したり、関わってくださっている方々はもちろん、普段の練習でもチームのサポーターの方々がやってくれているからこそ、今日を迎えられた。ブラインドサッカーに関わっているすべての人に感謝しています」と謝意を語りました。

無観客開催については、見えないなかでプレーするブラインド選手らしく、「歓声は力になる。人の気配を常に感じてプレーしているので、それがないことに寂しさはある」と残念さは見せつつも、全試合ライブ配信が実現したことに、「これまで会場に応援に来たくても来れない方々はたくさんいたと思う。そうした方々にもオンラインを活用してプレーをみていただけることは、すそ野を広げるきっかけになったと思う。ブラインドサッカーをできるだけ多くの人に見てもらいたいので良かった」と前を向いていました。

さまざまな知恵と工夫でコロナ禍に挑み、ブラインドサッカーを前に進める「アクサ×KPMG 2020カップ」。インターネットで気軽に観戦できます。迫力や臨場感は会場観戦には及ばないかもしれませんが、それでも今、ブラインドサッカーを、スポーツを観戦できるのは貴重です。この機会にぜひ!

【1stラウンド日程】
10月4日/堺会場=実施済み
・大阪ダイバンズ 1-4 兵庫サムライスターズ○
・○兵庫サムライスターズ 3-2 大阪ダイバンズ

10月17日/広島会場/観戦:https://youtu.be/RlZTZpX8yic
・10:30~A-pfeile広島BFCx岡山デビルバスターズ
・12:30~岡山デビルバスターズxラッキーストライカーズ福岡
・14:30~ラッキーストライカーズ福岡xA-pfeile広島BFC

10月18日/本庄会場/観戦:https://youtu.be/UebgZMD6mdU
・10:30~埼玉T.Wingsx乃木坂ナイツ
・12:30~乃木坂ナイツxfree bird mejirodai
・14:30~free bird mejirodaix埼玉T.Wings

10月25日/守谷会場/観戦:https://youtu.be/hLXvmub7mYM
・10:30~Derrotó Saber茨城xAvanzareつくば
・12:30~コルジャ仙台ブラインドサッカークラブxDerrotó Saber茨城
・14:30~Avanzareつくばxコルジャ仙台ブラインドサッカークラブ

11月14日/品川会場/観戦:https://youtu.be/vM4ksK4crQw
・ 9:00~パペレシアル品川xソイエ葛飾(※1)
・10:30~たまハッサーズxbuen cambio yokohama(※2)
・12:30~※1敗者x※2敗者
・14:00~※1勝者x※2勝者

【大会HP】
https://2020cup.b-soccer.jp/

【動画配信】全試合生中継
https://bit.ly/34svUhl

(文:星野恭子)