「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(315) ブラインドサッカー日本代表が活動再開。国内初の専用ピッチも完成!
新型コロナウイルスの感染拡大を受け活動を停止していたパラスポーツ界も、緊急事態宣言解除に伴い、少しずつ活動が再開されています。
例えば、日本ブラインドサッカー協会(JBFA)は6月19日、いち早くメディア向けに「男子日本代表活動説明会」をオンラインで開き、高田敏志代表監督が約3カ月間の活動自粛と在宅トレーニング期間中の選手たちの様子や初出場となる東京パラリンピックに向けた今後の強化プランなどを語りました。
6月19日、ビデオ会議システム「Zoom」を使ってメディア会見に臨み、ブラインドサッカー男子日本代表の活動再開などについて語る高田敏志監督 (提供:日本ブラインドサッカー協会)
活動自粛中、選手たちには、「とにかく、感染しないことが最優先。サッカーのことは考えないでいい。好きなものを食べ、よく寝て、家族との時間を大切に過ごそう」と呼びかけていたそうです。その上で以前から取り入れていた体調管理サービス「One Tap Sports」で選手一人ひとりの健康状態を把握し、メンタル面も含めて専門コーチらと連携し、必要な助言などを行っていたと言います。「普段通り。その点は困らなかった」そうですが、新型コロナの感染予防策として新たに体温チェックを1日3回に増やし、行動履歴や交流者の人数、家族の健康状態といった報告項目も加えたそうです。
一方、初出場となる東京パラの前哨戦と位置づけた3月下旬の「ワールドグランプリ」(東京・品川区)の中止や、東京パラの1年延期については、開幕日から逆算して綿密に準備していたため、「最初は『どうなるんだろう』と混乱したが、(コロナ禍について)自分で変えられることはない。焦ってプランを立てても仕方がない。落ち着こう」と、選手にも自身にも言い聞かせたと明かしました。
また、選手からは、「トレーニングしたい」という要望があったと言い、コンディショニングや動き作り、屋内でもできるボールトレーニングなども織り交ぜたメニューを1回1時間、週3回続けていたそうです。その際、選手とスタッフをオンラインでつなぎ、画面を通して個別に動きの指示を与え、また、視覚障害の選手たちにも理解できるように、「説明の言語化」に工夫を凝らしたと言います。
そうして6月10日、待ちに待った合同練習が再開されました。ただし、安全第一には変わりなく、東京都や日本パラリンピック委員会などのガイドラインに沿って行われ、例えば、「電車など移動は1時間以内」「練習でもソーシャルディスタンスを保つ」など厳しい制限が設けられていました。そのため、初日の参加は川村怜主将ら4選手のみの実施でしたが、それでも再スタートできたことは大きな一歩でしょう。
さらに、会見ではもう一つ、大きな発表もありました。練習再開の舞台、「MARUI ブラサカ!パーク」は、実はこの日オープンした新施設で、なんと、JBFAのスポンサー企業のひとつ、株式会社丸井グループが東京・小金井市にある同社施設内に造った、国内初のブラインドサッカー専用ピッチだったというのです。
特徴的なサイドフェンスも常設された専用ピッチが2面あり、それぞれ人工芝の長さが異なり、実戦に即した練習が行えます。また、併設のクラブハウスはユニバーサルデザインが採用され、弱視選手にも判別しやすいカラーリングや車いすユーザーにも配慮したスロープなどが設置されています。
同パークは今後数年間、ブラインドサッカーの競技普及や日本代表の強化、次世代選手の育成の拠点として使われるそうです。公開されたときには、ぜひ取材に行きたいと思います。
高田監督は、「素晴らしい環境。初めて足を踏み入れたときの感動は一生忘れない。海外チームから日本代表の専用グラウンドがないことを不思議がられていたが、スポンサーに感謝したい」と話し、川村主将も協会を通じて「専用グラウンドが日本で初めてできたことは歴史的な第1歩。実際に利用してみて、改めて最高の環境を用意していただいたと感じました。静かな環境で練習にも集中できます」などのコメントを発表しています。
この新拠点で今後しばらくは、ケガ防止に努めながら週2回ほど体力回復中心のトレーニングを行い、7月4日、5日には強化合宿も実施予定と言います。
東京パラ延期によりこれまで綿密に積み上げてきた強化プランは大幅に軌道修正が必要になりましたが、高田監督は、「このチームが培ってきたプロセスこそが、この難しい状況と混乱の中で生きると確信している」と前を向き、改めて来年の東京パラに向け、「プラン、ビジョンを持ち、やるべきことをやって、金メダルに向けて頑張りたい」と決意を口にしていました。
このように、少しずつスポーツができる喜び、そして、応援できる喜びが戻ってきています。この喜びを謳歌し深めていくためにも、「新しい生活様式」を受けいれ、引きつづき感染防止に取り組んでいきたいと思います。みんなで、がんばりましょう!
(文:星野恭子)