「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(314) コロナ禍でも創意工夫で戦力強化。ボッチャ日本代表の挑戦
新型コロナウイルス感染拡大を受け、パラスポーツ界も対応に迫られ、さまざまな工夫や取り組みが生まれていることをお伝えしてきました。今回は、日本ボッチャ協会(JBOA)と所属選手たちの前向きな挑戦をお届けします。JBOAは国内のパラスポーツ団体の中でもかなり早期にコロナ対策に入り、また急速に普及した「テレワーク」も活用し、強化につなげています。
「地上のカーリング」とも言われるボッチャはパラスポーツ特有の球技で、赤、または青のボールを投げたり転がしたりして、「ジャック」と呼ばれる白いボールにいかに近づけるかを競います。手や足に重いまひのある選手を対象とし、程度によって4つのクラスに分かれて競い、東京パラリンピックでは個人戦とペア、または3人1組のチーム戦など全10種目が行われる予定です。日本代表は2016年リオ大会で、チーム戦で初の銀メダルを獲得。東京パラではチーム戦での金をはじめ、「全種目メダル獲得」を目指し、強化を図っています。
そんななか、新型コロナウイルス感染拡大が発生。JBOAはいち早く2月上旬から日本代表の活動を休止しました。合宿や予定された大会も中止し、選手には体調維持を第一に外出は控え、基本的には自宅待機が指示されました。というのも、ボッチャの選手には脳性まひや筋ジストロフィーなどで四肢や体幹に重度な障害があり、肺など呼吸器系に疾患を抱える選手もいます。もしウイルスに感染すれば重症化する可能性も高く、事態を深刻なものと受け止めた対応だったと言えます。
3月下旬には東京パラの1年延期も決まりましたが、ボッチャ日本代表はあくまでもプラス思考です。村上光輝監督は大会延期について、「準備期間が延びて、いろいろとやれることが多くなった」「来年ならウイルス感染への不安もなくなる」と前向きにとらえ、選手たちにも「焦らず、今できることをしよう」と呼びかけたと言います。
選手たちは自宅や地元の練習拠点で個人的な調整を続けていますが、JBOAでは早くから、LINEやビデオ通話システムを使って選手とのコミュニケーションを密に取っています。練習メニューの確認や報告などを行ったり、選手同士でアドバイスを送りあったりして、チームの結束を高めています。選手の体調管理にも配慮して、代表トレーナーがオンライン等でヒアリングし、必要に応じてアドバイスなども行っているそうです。
また、ボッチャの練習には大きく分けて、ボールを正確に投げたり転がしたりする「技術面」と、ボールをどう投げ、ゲームを作っていくかという「戦術面」のち密さを強化する2つの側面があります。技術面については、選手は自宅などの床にボッチャのコートを模したラインを引いたり、「的」を工夫して作り日々、コントロール力を磨いています。また、戦術面はビデオ会議システムを使い、チームで意見交換しながら高めているそうです。
さらに、素晴らしいのは、ボッチャ日本代表はこうした練習風景などをフェイスブックのチームページで公開し、ファンサービスにもつなげている点です。【おうち de ボッチャ】と題し、強化指定選手たちがそれぞれ、「練習チャンレジ編」「リモート対決編」といった動画を随時、アップしています。また、ボッチャは誰でも気軽に挑戦できるスポーツとして、ここ最近人気上昇中ですが、「ボールの手作り方法」「遊び方」なども村上監督が動画で紹介しています。
こうした動画はフェイスブック利用者なら自由にアクセスして閲覧できます。「こんな練習方法もあるんだ」と参考にもなりますし、的にピタリ、ピタリと寄せる選手たちの技術力の高さには驚かされます。もしチャンスがあれば、ボッチャ日本代表、「火ノ玉ジャパン」のフェイスブックページをぜひご覧いただきたいです。ボッチャの楽しさや奥深さがきっと感じられると思います。
▼火ノ玉ジャパン(ボッチャ日本代表チーム)のフェイスブックページ
なんと、ボッチャ日本代表は先週末の6月13日から14日には、「リモート強化合宿」まで実施したそうです。自宅などにいる選手たちをオンラインでつなぎ、画面を通した合同筋トレや小型のコートを使って実戦感覚を養う「テーブルボッチャ」、戦術会議などを行ったようです。そうした様子もフェイスブックで公開しています。
このように、コロナ禍の逆境をものともせず、創意工夫とオンラインを駆使して個人技やチーム力を高めているボッチャ日本代表。今後、大会が再開されたとき、より強く進化した選手たちに会えること、今からとても楽しみです。
(文:星野恭子)