「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(312) ブラインドサッカー協会が相談窓口。「視覚障害者の困りごと、助けます」
新型コロナウイルスの感染拡大によって各競技団体も大きな影響を受けていますが、それぞれさまざまな工夫や活動に取り組んでいる現状も伝わってきます。今回はその中でも少し珍しい取り組みで、日本ブラインドサッカー協会(JBFA)が4月18日から行っている、「視覚障がい者ならどなたでも!おたすけ電話相談窓口」についてリポートします。
これは、コロナ禍による社会情勢の変化を受けて、さまざまな困りごとに直面する視覚障害者やその家族などを対象にした新サービスで、生活全般の悩みや相談ごとを受け付け、JBFA職員がその解決策を探り提案します。選手や競技関係者に限らず、広く一般の人も対象とし、費用もかかりません(ただし、通話料、通信料は相談者負担)。
日本ブラインドサッカー協会による、「視覚障がい者ならどなたでも!おたすけ電話相談窓口」サービスは、コロナ禍の画期的な取り組み (提供:日本ブラインドサッカー協会)
JBFAによれば、選手の強化や競技の普及といった根幹の事業が停止しているなか、視覚障害のある選手や職員の声から発想し、「できることに取り組もうと始めたサービス」だと言います。競技団体がスポーツを越えた活動に取り組むのは異例であり、画期的なことではないでしょうか。
視覚障害のある人は日ごろから手でモノに触れて情報を得たり、ヒトの腕や肩に触れて移動サポートを受けたりすることが多いです。しかし、現在は感染症対策のため、「モノやヒトとの接触がはばかられる状況」にあります。例えば、以前なら買い物の際、点字の表示に指で触れたり、弱視者なら商品に顔を近づけて確認したり、店員や周囲の人に声をかけて手助けを頼んだりしていたことも、今は感染リスクもありますし、また周囲の目も気になるなど、なかなか難しい状況です。JBFAが始めた「おたすけ窓口」は、そうした悩みに応えようというサービスです。
現在は在宅勤務中の有志職員9名が電話受付と解決策提案チームに分かれて対応しているそうです。例えば、「行き慣れた近所の店でマスクが品切れして買えない」という相談には、購入できそうなインターネット通販サイトを調べて案内するなど、相談受付後から原則72時間以内に何らかの回答を行っています。
サービス開始から1カ月以上が経過し、緊急事態宣言も全面解除となりましたが、JBFAでは少なくとも6月末まではサービスの延長を決定。「些細な相談でも、ぜひ」と、視覚障害者に呼びかけています。
これまでの相談件数は1日平均数件で、その多くは買い物関連とのことですが、相談事例の一部を紹介しましょう。
・日用品の買い物に行きにくい、難しい
・郵送物など文書の内容確認ができない
・携帯電話で読書をしたいので、準備の段取りなどを知りたい
・盲導犬のストレス発散方法を教えてほしい
・今、災害が起きた場合、どう避難したらいいか。また、どこに登録すれば連絡をもらえるか知りたい
・自宅で体を動かしたいが、全盲でも動きが分かるよう音声で説明のある動画などを紹介してほしい
・在宅勤務となったが、自宅には(拡大読書器など)障害支援ツールがなく、目の疲労感が激しくて困る
こうした困りごとをお持ちの方など、ぜひ「おたすけ窓口」サービスをご利用されてはいかがでしょうか? 相談は専用電話のほか、ウエブフォームやLINEからでも可能です。対応時間はそれぞれ少し異なるので下記のリストをご参照ください。またサービスの詳細はJBFA公式サイト(https://www.b-soccer.jp)でも確認できます。
<利用方法:視覚障がい者ならどなたでも!おたすけ電話相談窓口>
■電話:
050–3627–5015(おたすけ電話相談窓口専用回線)
対応時間:10:00〜12:30/14:00〜16:30(平日・土日 ※祝日は除く)
■ウエブフォーム
問い合わせ手順:
① 専用URL(https://bit.ly/2YUgjo1 )にアクセスする。
② ウエブフォームに必要情報を入力して送信する。
③ JBFAからメール、または電話で返答される。
対応時間:受付は24時間、メールでの返答は9:00~18:00(平日・土日 ※祝日は除く)、電話での返答は10:00〜12:30/14:00〜16:30(平日・土日 ※祝日は除く)
■LINE
問い合わせ手順
① JBFAのLINEアカウントを「友達追加」する。(※追加方法は下記リンクを参照)
② LINEのトークに直接メッセージを書き込み、送信する。
③ JBFAのLINEアカウントより、LINEで返答される。
対応時間:受付は24時間。返答は、9:00~18:00(平日・土日 ※祝日は除く)
なお、JBFAによれば、サービス利用者から、「大会が再開されたら、ブラインドサッカーをしてみたい」という声も聞かれるなど、競技普及にもつながる手ごたえを感じることもあるそうです。一方で、提案できる回答の多くは通販サイトや行政サービス、支援アプリなどの情報を案内することに留まる現状に、「もしかしたら、サイトへのアクセスが面倒で諦めてしまったかもしれない。困りごとがちゃんと解決できたか確認できない」などもどかしさも感じることもあるそうです。
それでも、こうした取り組みによって視覚障害のある人の困りごとを知り、対応・解決策を探ることは別の意義もあるように思います。コロナ禍では誰もが何らかの不便や我慢を強いられていますが、例えば、これまでの相談事例を読んで、「なるほど、そういうことに困っているんだ」と気づかされ、視覚障害をはじめ、さまざまな障害を抱える人たちの厳しい状況も改めて想像することができました。
「ウィズ・コロナ」の新たな日常に向けたガイドラインづくりも進んでいますが、障害のある人を想定した配慮など広い視野や思考も不可欠でしょう。JBFAの取り組みは、そんなことを考えるきっかけにもなりました。
(文:星野恭子)