「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(303) 国際パラ委(IPC)、「IOCの決断と取り組みを全面的に支持する」
新型コロナウイルスのさらなる感染拡大を受け、国際オリンピック委員会(IOC)が3月22日に行った、「全ての人の健康と同ウイルス封じ込めに貢献するため、東京2020大会延期を含めた検討を行う」とした発表を受け、国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ会長は、「IPCは、大会延期も含めたIOCの決断と取り組みを全面的に支持する」との声明を発表しました。
同会長はその理由として、「人命は何よりも重要であり、特に現状においては人々の健康と安全が最優先事項であること。それが絶対的に正しい行動だ」とし、今後4週間にわたって世界の人々の健康状態が改善するかどうかも見ながら、大会の日程変更など複数のシナリオを検討する」としています。
また、「大会延期は、運営計画の大幅な変更となるが、IPCはいかなる局面においてもIOCを支える」と強い覚悟も示しています。
▼IPCアンドリュー・パーソンズ会長の声明 (3月22日)
▼IOCの公式発表 (3月22日):
実は、IPCはこの会長声明に先立ち20日には、新型コロナウイルスの感染拡大により憂慮されている東京パラリンピックの開催について、「決定権はIOCにある」との見解を発表していました。
この見解が発表されたのはIPCの公式サイト上で、「中止や延期の計画はあるのか?」「多くの国際大会が中止されているなか、東京大会への対応が取られていないのはなぜか?」といった質問に答える「質疑応答」形式でIPCの立場などを示しています。
例えば、「オリンピックとパラリンピックは一体化したスポーツの祭典として連携しているが、開催都市契約はIOCと東京都、日本オリンピック委員会(JOC)の3者が結んでおり、IPCは契約当事者ではないため、大会開催についての決断などはIOCが行う」と答えています。
▼Relevant FAQ on COVID-19 for the Paralympic Movement(質疑応答)
こうした段階を経た中で、IOCが大会延期の検討を表明したことから、IPCはいち早くIOC支持の姿勢を示したことになります。
さて、IOCは最新の発表のなかで、「誰の助けにもならない」と大会中止の可能性は否定し、「東京での開催に自信を持っている」ことも強調しました。4週間以内に世界の感染状況が劇的に改善しなければ、大会延期の可能性がかなり高まったといえるかと思います。
ただし、オリンピックは過去、「中止」はありますが、「延期」は史上初の事態です。ウイルスという見えない敵であり、今後の状況が見通せないという難しい状況のなか、「妥当な延期時期」を見極める判断は困難です。
さらに、例えば、東京2020大会に向けてオリンピックとパラリンピックを合わせ40以上の施設が利用予定ですが、「それらの会場を延期日程でも手当できるのか」。あるいは、利用後は一般販売される選手村などの宿泊施設や交通手段、ボランティアの確保などの課題もあります。
物理面だけでなく、選手にとっては代表選考の問題もあります。現時点での代表内定者はそのまま有効なのか、選考条件や方法、選考大会の見直しなども延期時期によっては必要になってくるでしょう。
パラリンピックでもオリンピック同様、世界ランキングや選考大会での成績による選出など競技ごとに細かい選考条件が設定されています。競技によっては国別の出場枠の配分も行われておらず、国内選考も進めにくいといった競技もあります。
このように大会延期についてもさまざまな負担があり、課題は山積みですが、IOCが「今後4週間以内に結論」と期間を区切ったこと、そして、「中止は議論にない」としたこと。そして、IPCが「IOC支持」を表明したことは大きな一歩かと思います。
もちろん、まだ難しい状況下ではあり、練習環境もままならない面もあるかと思いますが、選手には東京パラリンピック出場を目指し、強い気持ちで練習を継続してほしいですし、そんな姿を心から応援したいと思います。
もしかしたら、4週間を待たずに次の判断が下されるかもしれません。アンテナを大きく広げて先を見据えた準備もしながら、IOC発表も含めたパラスポーツにまつわる情報により一層注視していきたいと思います。
(文:星野恭子)