「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(284) 見どころ満載、“もうひとつの世界陸上”、パラ陸上世界選手権ドバイ大会、まもなく開幕!
11月も各地でパラスポーツがさまざま行われますが、今月も、<見逃せない一戦!>をピックアップしました!
<11月の見逃せない一戦!>
【ドバイ2019世界パラ陸上競技選手権大会】
開催日: 11月7日(木)~11月15日(金)
会場: アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイ
詳細: https://www.paralympic.org/dubai-2019
2年に1度開催される、パラ陸上の世界一決定戦。9回目の今年は、東京パラリンピック前年のため、同大会実施種目で4位までに入った選手には出場枠が与えられる重要な大会でもあります。122カ国・地域から、約1400選手がエントリー。熱戦が期待され、見どころも満載です!
「でも、海外開催だから、観に行けない…」と思われた方、大丈夫。今大会は、NHK 総合テレビで大会期間中(11月7日~15日)、連日生中継される予定です。放送時間は調整中のようですが、現地ドバイの時差(マイナス5時間)を考慮して、日本の深夜帯での放送見込みです。ぜひこの機会に、世界の超人アスリートたちのパフォーマンスをぜひ、ご覧ください。
▼NHK 総合テレビ放送予定
https://sports.nhk.or.jp/paralympic/article/note/20190825-schedule/
日本からは、参加派遣標準記録を突破した、全44名が出場します。身体障害クラスは39名(男子26、女子13)、知的障害男子クラスは5名(男子2、女子3)です。
9月30日~11月4日まで高松市で実施された強化合宿に参加中の「ドバイ2019世界パラ陸上選手権」日本代表選手たち(一部欠席者あり)。(撮影:越智貴雄)
日本は前回、2012年ロンドン大会では、全16個(金2、銀5、銅9)のメダルを獲得していますが、本パラ陸上競技連盟強化委員会の指宿立副委員長によれば、今大会では「複数の金メダルを含む、2桁のメダル獲得」が目標であり、もちろん、東京パラリンピック出場が内定する「4位以内」も視野に入れています。
また、ドバイは秋と言えども、日中は気温30度を超える予報です。東京パラに向けて重ねてきた「暑熱対策」の効果を試す場とも位置付けられています。「前哨戦」としても重要な大会となります。
パラ陸上は、障害に応じて細かくクラス分けがあり、競技用車いすや義足といった用具の利用なども認められている以外は、一般の陸上競技ルールに準じて行われます。実施される種目も類似していますが、今回、新たに採用される注目の種目が一つあります。
「ユニバーサル4x100mリレー」です。男女2選手ずつ(起用順は自由)に加え、第1走者(視覚障害)、第2走者(切断など)、第3走者(脳性まひ)、第4走者(車いす)と走順によって障害クラスが限定されているのが特徴で、「これぞ、パラスポーツ」といった種目です。東京パラリンピックでも採用候補にもなっています(今大会の出場国数により、大会後、採否決定予定)。
オリンピックのリレーとは異なり、バトンは使わず、前走者が次走者の体の一部に「タッチ」することでリレーします。現在、世界記録は今年5月中国がマークした47秒57。他に、アメリカやフランス、ブラジルなども強豪です。
対する日本記録は同じ今年5月に記録した48秒14(今年5月)ですが、その後、数回の合宿を経て、「タッチワーク」を磨いてタイム短縮を狙っています。選手の走力差や障害などにより難しさもありますが、そこが見どころでもあります。試合は11月14日午前に予選が行われ、決勝はその夜の予定です。
高松市での合宿でタッチワークに磨きをかける、第3走者の高松佑圭選手(ローソン)とアンカーの生馬知季選手(GROP SINCERITE WORLD-AC) (撮影:星野恭子)
東京パラリンピックに向けて弾みとしたい日本選手団の健闘に、ぜひご注目、応援ください!
<主な注目選手>
■佐藤友祈選手 (GROP SINCERITE WORLD-AC)/車いす(T52)/400m、1500m
12年ロンドン大会2冠(400m、1500m)、今大会も2種目連覇を狙う。大目標は東京パラリンピックでの世界記録更新と金メダル獲得に向けて、「ライバルのマーティン(レイモンド/アメリカ)たちが参加すると思うので、『佐藤はここまで仕上がっている』と認識させたい」
■井谷俊介 (SMBC日興証券)/右下腿義足(T64)/100m、ユニバーサル4x100mリレー
競技歴約2年で世界選手権初出場。100m走の日本・アジア記録(11秒47)を相次いで塗り替える新星。ユニバーサルリレーの第2走者としても活躍。「100mでは11秒1台で4位以内を、リレーでは金メダルを」
■兎澤朋美 (日本体育大)/左大腿義足(T63)/走り幅跳び、100m
世界選手権初代表。18年アジアパラ競技大会(インドネシア)で走幅跳3位、19年6月、ドイツの国際大会で100m(16秒41)、走幅跳(4m44)で自身の持つアジア記録、日本記録を更新するなど、急成長。走り幅跳びは現在、世界ランク3位。練習では4m70辺りまで跳べているといい、「やり切ったなというパフォーマンスをして、その先にメダルが来れば嬉しい」
(文:星野恭子)